表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断界の英雄  作者: 明太子
天断来臨
78/99

ズレる世界

爆煙が空間に残っている。

視界が白く濁る。


それでも止まらない。

響が踏み込む。

「――轟砲!!」


腕を振り抜く。

その軌道に沿って、圧が走る。

空気が軋み、見えない衝撃が一直線に突き抜ける。


確かに捉えた。

――はずだった。


衝撃は、わずかに逸れる。

蝶使いの横をかすめ、そのまま背後へ抜け、壁が砕ける。

「……は?」


手応えはなく、おそらく轟砲は外れた。

目の前にいたはずなのに。

「ふざけんな……!」

響が歯を食いしばる。


その横で、蓮が一歩踏み出す。

「……見えてるなら、確かめる」

低く呟いた。


次の瞬間、地面が揺れ黒い影が広がる。

そこから、触手が伸びる。

一本、二本、三本――

一気に増える。


「逃がすかよ」

四方から、蝶使いを包み込むように一斉に伸びる。

狙いは二つある。

逃げ場を潰すこと。

そしてこの違和感の正体を確かめることだ。


だが、触手はわずかに空を切る。

届いている。

距離は合っている。

それでも――掴めなかった。

「……チッ」


蓮の表情が歪む。

だが、止めずに隙間を埋めるようにさらに数を増やしていき逃げ場を完全に塞いだ。

「これならどうだ……!」

空間ごと閉じる。


その瞬間、蝶が舞う。

視界が揺れる。

ほんの一瞬だが、触手がすり抜けた。


触手は何もない場所を締め上げる。

「……っ」


だが、完全に外したわけじゃない。

ほんのわずかにあった触れたような感覚。


蓮の目が細まる。

「……そこか」

小さく呟く。

しかし確信には至らない。


それでも――何かを掴みかけている。

今この瞬間、蝶使いにとって一番危険なのは蓮になった。


響が再び構える。

「だったら――まとめて消し飛ばす!」


大きく踏み込み、力を溜める。

「――轟砲!!」


今度は広い。

空間ごと押し潰す衝撃。

周りの蝶を巻き込みながら進む。

今回も逃げ場はない。


――それでも、わずかに逸れる。

空間を削りながら、蝶使いの横を通り過ぎた。

「……嘘でしょ」


思わず響の口から漏れる。

当たらなかった。

蝶使いの前では、範囲も速度も関係ない。

全てズレている。


翠霞が息を整える。

「距離……いえ、位置そのものが……」

言葉が続かない。


蓮が低く言う。

「見えてる位置と、実際が違う」

はっきりと言った。


響が舌打ちする。

「厄介ね……!」


それでも踏み込む。

響は止まらない。

翠霞が毒針を放ち、蓮が触手で追い込む。

三方向からの攻撃。


今回も逃げ場はない。

そう見えた。


その瞬間、また蝶が舞う。


視界が歪み、距離が狂う。

全ての攻撃がすり抜ける。

何もない空間を裂く。


「っ……!」

響が歯を食いしばる。


そしてようやく、蝶使いが一歩前に出た。

自ら距離を詰め始める。


ゆっくりと、ゆっくりと。

逃げない。

むしろ――誘っている。

「ほら、届くでしょう?」


響の目が鋭くなる。

「舐めてんじゃないわよ!!」


超至近距離で逃げ場はない。

「――轟砲!!」

ほぼ零距離で放つ。


衝撃が弾け、空間が歪む。

――届く。

確信したその瞬間、視界が揺れる。

ほんの一瞬蝶が遮る。


気づいた時には、位置がズレている。

衝撃は空を裂き、、背後へ抜ける。

「……っ!」


背後から声が聞こえた。

「惜しい」


振り向く間もなく、肩の辺りを蝶が触れる。

蝶が触れたところが抉り取られる。

「っ――!!」


響が吹き飛ばされ、地面を転がる。

彼女の息は詰まっていた。

それでも立つ。


血を拭い、笑った。

「……上等じゃない」

その目は折れていない。


翠霞が小さく息を吐く。

「このままでは……」


蓮が歯を食いしばる。

「ズレてる……でも、完全じゃねぇ」


触れた感覚。

あれは、確かにあった。


その間にも蝶は増える。

空間を埋めていき、逃げ場が減る。


蝶使いが、静かに息を吐く。

「まだ、足りないわね」


その声は変わらない。


静かで、冷たくて。

そして――愉しんでいる。


「もう少し、見せて」


蝶が舞う。

空間が歪み、距離が狂う。


届かない。

それでも止まらない。


戦いはまだ終わらないーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ