残滓
土煙が舞う砕けた地面。
その周りには動かない人形たち。
その中央で――
蒼真と灯真が立っていた。
人形使いは一歩ずつ後退する。
彼は呼吸が乱れている。
「……なぜだ……」
拳を握る。
もう一度人形を掴み、砕く。
だが――
もう何も起きない。
力が増えない。
「……なぜだ!!」
叫びが響く。
蒼真が静かに前へ出る。
「終わりだ」
灯真も並ぶ。
黒魍が背後で唸る。
人形使いが睨む。
「ふざけるな……まだ終わっていない」
地面を蹴る。
人形使いの最後の突撃。
速い。
だが蒼真のほうが速い。
そして交錯する。
一瞬の静寂。
次の瞬間、人形使いの横腹を切る。
膝をつく。
血が地面に落ちる。
動かない。
灯真が息を吐く。
「……終わったね」
だが、人形使いはまだ意識を保っていた。
顔を上げる。
視線は、どこか遠くを見ている。
「……なあ」
掠れた声。
「お前は……壊すことが正しいと思ってるのか」
蒼真は答えずに、ただ人形使いを見ている。
人形使いが弱々しく笑う。
「……あいつらも、そうだったよ」
暗い部屋に並べられた人形。
その中にもう動かない幼い人の姿。
動かない。
声もない。
ただ、そこにいるだけ。
「……動かなくなった奴らを…俺は……繋いだだけだ」
震える手で泥に触れる。
「壊すくらいなら……」
言葉が途切れる。
「雨の日に誰かが連れ出してくれたんだ……俺にとって地獄のような部屋……みんなが生きようとした証を……俺が……」
蒼真が口を開く。
「それでも」
静かな声。
「今のお前は、止める」
人形使いの視界がボヤける。
そして小さく笑った。
「……そうかよ」
その言葉を残し、人形使いの視界はまた揺らいだ。
静寂が戻り、風が吹く。
崩れた泥が静かに揺れる。
灯真が周囲を見る。
「……終わったね」
蒼真は答えない。
ただ、倒れた人形使いを見ている。
その視線の奥に、わずかな影が残っていた。




