怨倍撃
人形使いが一歩踏み出す。
そして、自ら人形を破壊した。
一体、また一体。
人形が何体も溶けていく。
そのたびに、人形使いの拳に黒い力が集まる。
空気が重くなる。
灯真が低く言う。
「……あれが来るよ」
蒼真が答える。
「ああ」
人形使いが拳を握る。
「あの日のように二人とも鎮めてやるよ」
そして振り抜く。
「怨倍撃!!」
その瞬間、森の中に衝撃が走り、空気が裂ける。
蒼真と灯真に人形使いの拳が直撃する。
地面が砕け、煙が上がる。
そして何秒かの静寂が訪れる。
人形使いが息を吐く。
「終わりだ」
だが――
煙の中に二つの影が立っていた。
蒼真と灯真。
至る所から血が流れている。
だが、倒れない。
人形使いの目が見開く。
「……なぜだ」
蒼真がゆっくりと前に出る。
「効いてないわけじゃない」
灯真が続く。
「ただ」
黒魍が背後に現れ、低く唸る。
「残念だけど、もう君は強くなれないよ」
人形使いの顔が歪む。
「……何を言ってる?」
「奏の技能のテーマは保存だ。泥が人形にならなかったのは奏の維持が上手く働いてくれたからだ」
「そして君が怨倍撃が撃てなくなったのは奏の保存が効いてるからだよ。奏と戦ったときに手のひらで触れられたでしょ。覚えてない?」
人形使いの額に冷や汗が流れる。
蒼真が言う。
「つまり奏が触れた時点で」
灯真が言葉を継ぐ。
「終わってたんだよ」
そしてまた何秒かの沈黙。
人形使いが拳を握り、再び人形を破壊する。
だがもう何も起きない。
力が、増えない。
「……なぜだ……!」
蒼真が刀を構える。
「終わりだ」
灯真が踏み込み、黒魍が吠える。
二人が同時に動く。
戦いは、決着へ向かうーー




