同類
「さぁ、遊ぼうぜ」
ラグナは獰猛な笑みを浮かべながら、ゆっくりと両拳を構えた。
対する雷牙は、一歩前へ出る。
かつて多くの人々で賑わっていたその場所には、今や静寂しか存在しない。
そこにいるのは、一人の技能者と一人の異能者だけだった。
「お前が救助要請を出したのか」
雷牙の問いに、ラグナは肩を竦める。
「さぁな。俺はただ、ここで待ってろって言われただけだ」
「待ってろ?」
「そうだ。強ぇ奴が来るってな」
ラグナは口元を歪める。
「そしたら本当に来た。しかもお前、電気……いや、雷使いだろ?」
雷牙の眉が僅かに動く。
「……なんで分かった」
「分かるさ!!」
ラグナの身体から、バチバチと電気が漏れ出す。
青白い雷光が周囲を照らした。
「だって、俺も同じだからな!」
間髪入れず、ラグナが地面を蹴った。
雷牙が反応するよりも早く、拳が目の前まで迫る。
速い、だが。
「ッ!」
雷牙は咄嗟に腕で受け止める。
衝撃でコンクリートの床が砕ける。
「へぇ」
ラグナは嬉しそうに笑った。
「今のを止めるか」
雷牙は距離を取る。
「お前、何者だ」
「俺の名前はラグナだ」
ラグナは笑う。
「お前は?」
「……神崎雷牙」
一瞬の静寂の後に、ラグナは腹を抱えて笑い始めた。
「ハハハハハ!雷牙!?お前最高じゃねぇか!まさか名前まで雷とはな!!」
雷牙は顔を顰める。
「何がおかしい」
「いーや、気に入ったぜ!!」
ラグナは拳を鳴らした。
「もっと楽しませてくれよ、雷牙!」
再び拳と拳がぶつかりあう。
衝撃と共に、無数の雷が弾けた。
轟音と共に天井の照明が一斉に砕け散る。
フードコートが暗闇に包まれた。
だが、二人の身体から漏れ出る雷が、戦場を青白く照らし出す。
ラグナの拳と雷牙の拳。
互いの攻撃が激しく交差する。
「いいねぇ!いいねぇ!!」
ラグナは笑う。
「その目だ!簡単には倒れねぇって顔してやがるぜ!!」
雷牙は無言のまま拳を振るう。
(次は右、右、左、電撃)
修行前なら見切れなかったはずの攻撃にも、今の雷牙は食らいついていた。
ラグナの頬を拳が掠める。
ラグナは目を見開いた。
「……へぇ、やるじゃねぇか」
直後、ラグナの膝が雷牙の腹部へと突き刺さる。
「がっ……!」
雷牙の身体が吹き飛ぶ。
机を三つ巻き込みながらようやく停止した。
「だが、まだまだだ!」
ラグナの姿が消える。
「ッ!?」
雷牙は咄嗟に振り向くが遅かった。
背後からラグナの蹴りが炸裂する。
再び雷牙は吹き飛ばされる。
「速い……!」
雷牙は立ち上がる。
ラグナは楽しそうに笑っていた。
「いいぞ、雷牙!もっとだ!もっと俺を楽しませろ!」
雷牙は雷を右腕へ集中させる。
そして、一気に距離を詰めた。
「紫電撃!」
雷を纏った拳がラグナへ迫る。
直撃ーーしたはずだった。
「……電遷!」
「……なっ」
ラグナの身体が弾ける。
身体そのものが雷へと変わり、空中へ散った。
雷牙の拳は空を切る。
「消え――」
刹那、背後から声がした。
「お前はそんなもんか?」
雷牙が振り返る。
そこには、電気となって移動したラグナが立っていた。
「もっと楽しませてくれよ、雷牙」
雷牙は目を見開く。
そして、再び拳を構えた。




