廃墟からの声
「……で、結局お前は毎日訓練場にいるわけか」
食堂で向かい合って座る蒼真が呆れたように言う。
「悪いかよ!」
雷牙はぶっきらぼうに返しながら、味噌汁を口に運んだ。
「悪くはねぇけどよ。少しは休めって話だ」
颯が笑いながら割って入る。
「そうよ。せっかく怪我も治ったんだから」
翠霞も苦笑を浮かべた。
雷牙は小さく鼻を鳴らす。
「休んでる暇があるなら俺は強くなる」
「出たよ、修行馬鹿」
「お前にだけは言われたくない!!」
颯の言葉に、四人の間に笑いが起こった。
天狗との戦いを終えてから数日、失ったものは多かった。
それでも、こうして四人で笑い合える日常は確かに戻ってきていた。
はずだった。
『弐番隊は至急会議室へ集合してください』
本部内にアナウンスが響く。
四人は顔を見合わせた。
「……嫌な予感しかしねぇな」
颯が肩を竦める。
「行くぞ」
雷牙が立ち上がり、蒼真たちもそれに続いた。
会議室にはすでに迅と時夜の姿があった。
弐番隊の面々が揃うのを確認すると、迅が口を開く。
「ここ数日、各地で原因不明の機器異常が確認されている」
モニターにいくつもの地点が映し出される。
「通信障害、監視カメラの停止、電源異常。だが魔獣反応は確認されていない」
「魔獣じゃないなら、何なんだ?」
響が眉をひそめる。
「……異能者」
迅が短く答える。
重い空気が会議室を包んだ。
その瞬間だった。
突如、会議室のモニターが激しく明滅を始める。
「何だ?」
雷牙が身構える。
ノイズが走る。
誰も触れていないはずのモニターに、映像が映し出された。
薄暗い通路、崩れた看板、錆びた手すり。
そこは明らかに廃墟だった。
『――――ざ……こちら……』
「通信……?」
時夜が目を細める。
『こちら……ショッピングモール……救助……要請……』
その言葉で全員の表情が変わった。
『誰か――』
通信はそこで途切れた。
迅はすぐにモニターに表示された位置情報を確認する。
「……廃ショッピングモールか」
「待ってください」
翠霞が口を開く。
「そこって、三年前に閉鎖された施設ですよね?」
「その通りだ」
迅は頷く。
「現在も立入禁止区域に指定されている。人がいるはずはない」
会議室に緊張が走る。
迅は数秒だけ考え、静かに言った。
「……誘われてるな」
その一言に、室内の空気がさらに張り詰める。
「わざわざこちらに位置を知らせてくる時点で、何かあると思っていたが……やはりか」
迅はモニターを見据えたまま続ける。
「救助要請を装って、こちらをおびき寄せるつもりだろう」
「じゃあ、罠ってことか?」
雷牙が低く問う。
「その可能性が高い」
迅は即答した。
だが、すぐに視線を上げる。
「……だからこそ、無視はできない。相手が何を狙っているのか、確かめる必要がある」
迅は立ち上がり、隊員たちを見渡した。
「弐番隊――出動する」
その言葉と共に、静かな日常は終わりを告げた。




