表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断界の英雄  作者: 明太子
星喰天誅
PR
102/114

疑問

断界戦線本部の一室。

窓の外では、赤く染まった空が静かに揺れている。


天狗との戦いから数日後、部屋の中には包帯姿の隊員たちが転がっていた。


雷牙は椅子へ深く座り、蓮は机へ突っ伏している。

響は包帯の巻かれた腕を動かしながら顔をしかめ、奏はその隣で資料を眺めていた。

時夜はソファへ沈み込んだまま目を閉じている。

颯だけは窓際へ立ち、静かに外を見ていた。


「……静かすぎて逆に落ち着かねぇな」

雷牙が机へ顔を埋めたまま呟く。


颯が鼻で笑った。

「お前が騒いでないからだろ」

「怪我人に厳しくない?」

「元気そうだから問題ない」


そのやり取りを聞きながら、恒一は新しい隊服を見下ろしていた。

「……これ、本当に着んのか」

少し嫌そうな声が聞こえてくる。


響が視線を向ける。

「似合ってんじゃないの」

「慰めになってねぇよ」

恒一が即座に返した。


灯真が静かに口を開いた。

「安心して、まだ誰も似合ってるとは言ってないよ」


恒一がゆっくり振り返る。

「お前わざわざ追撃してきたのか?」


その横で、紫乃が隊服の袖を軽く引っ張った。

「……これちょっと大きい」


「そこなのかよ」

恒一が頭を抱え、小さな笑いが広がる。


その空気の中で、翠霞が小瓶を揺らしながら、ふっと口元を緩めた。

「でも、前よりはマシなんじゃない?」

恒一が視線を向ける。


翠霞は少し肩を竦めた。

「最初に会った時、すっごい怖かったし」

「……そんな顔してたか?」


「してた」

遠くから優雅が即答する。


翠霞も小さく頷いた。

「今はちゃんと喋れてるね」


恒一が少し言葉に詰まる。

その言葉を聞き、玲司がニヤついた。

「成長したなぁ恒一くん」

「うるせぇ」

迅が小さく笑う。


戦いの傷はまだ残っているが、こうして全員が同じ場所にいるだけで、少しだけ安心できるような空気があった。


その時、蒼真が松葉杖をつきながら立ち上がる。

部屋の空気が少し静まった。


蒼真は迅を見る。

「こんなときにすみません、迅さん」

迅が顔を上げた。

「少し時間いいですか」


その声に、時夜がゆっくり目を開けた。

蒼真は少し迷うように視線を落とす。

「……俺の兄ちゃんのこと、聞かせてください」


蓮が口を閉じ、雷牙も腕を組んだまま黙った。

翠霞も小瓶を握ったまま視線を落とす。

時夜だけが小さく目を細めた。


長い沈黙が続き、やがて迅が立ち上がった。

「……場所を変えるか」

時夜も無言で立ち上がる。


蒼真は二人の後ろを追っていった。

部屋の扉が閉まり、静かな空気だけが残る。


恒一が小さく息を吐いた。

「なんか……聞いちゃいけねぇ感じだったな」


奏が静かに資料を閉じる。

「壱番隊の話は、あまり表に出ないですからね」


翠霞は窓の外を見たまま呟いた。

「……まだ終わってないんですよ、多分」


その言葉を誰も否定しなかった。

夕陽だけが静かに部屋を染めていく。


場面が変わり、暗い部屋。

小さな灯りだけが机を照らしていた。


「天狗が落ちたか」

低い声が響く。


別の誰かが笑う。

「随分派手に暴れたみたいだな。おい、カナガラ!天狗はどんな感じだった?」


カナガラは机の真ん中に置いてあった煎餅を取りながら言った。

「うーん…いつもと同じ感じだったよ?まあいつもを知らないんだけどさ」


その時、カリッという静かな音が部屋の奥から反響してきた。

何か硬いものを食べるような音だった。


部屋の奥の暗闇の中に、一つの影が座っている。

姿はよく見えないが、その周囲の空気だけが異様に重

かった。


しばらく沈黙が続いたが、やがて静かな声が響いた。

「なぁ、お前ら」


その瞬間、部屋の空気が僅かに張り詰める。

「蒼真って知ってるか?」


誰も、すぐには答えなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ