「 」
スランプってやつなんだよ
深夜、時計の針が3の文字を指し示す頃一つ、ため息をついた。
人工的な明るさで照らされた部屋の机の上、その上に置かれたノートパソコン。
開いている画面は、小説作成ページ。
数行打ってから、文字が止まってしまった。
何を書きたいのか、わからなくなってきてしまったのだ。
小説の中では、駆け落ちした男女が二人の居場所を探すために旅をする。
美しい少女は、自分より4つ年上の男性に手を引かれている。
寒い夜だ、凍てつくような風が頬を刺激していたい。それでも繋がれた手が熱い。
何か、言いたそうに口を動かすも、声は小さく、風に攫われてしまったようだ。
ここから、続かない。
彼女は何を言いたいのだろう。寒い日の夜、好きな人とふたり手をつないであてもなくただ、歩いていく。可哀想なのだろうか。うーん…
本格的に行き詰まってきた。
一息入れるために立ち上がって、暖かい紅茶を入れた。
ミルクも砂糖もたっぷり入れる。カロリーなんて気にしていられない。
小説はそこそこ体力勝負だ。頭をずっと使っているから疲れるし甘いものが欲しくなる。
そう、これは必要不可欠なエネルギーであって決して無駄を増やすためのカロリーではないのだ…!
誰に何かを言われたわけじゃなくても必死な言い訳がぐるぐると頭を巡った。
これはいけない。非常によろしくない!
頭を切り替えてスッキリしたいというのに一人だと悶々と考えてしまう。
数度の深呼吸の後に暖かい紅茶の入ったマグカップを持ってソファーに座る。
深夜の時間帯に何かいい番組はあったかな
テレビのリモコンに触れて電源のボタンを押す。
ニュース、競馬…、よくわからないドキュメンタリー…あ、アニメだ。
せっかくの気分転換、最近見なくなったアニメを見た。
軽快なオープニングと共に、可愛らしい女の子たち
多分主人公っぽい男の子。わかりやすい学園ハーレム系…なのかな?
鈍感な主人公とその主人公を振り向かせるために一生懸命な女の子たちが可愛い
応援したくなる。
クスクスと小さく笑みを浮かべる。
舞台が高校。少し前まで私も高校生だったこともあって、自然と学校あるあるに頷く。
『アニメでよくあるさ、生徒会がめっちゃ権限持つあれ、実際ないよね』
とか
『中学まで、高校の屋上って自由に入っていいもんだと思ってたんだよ…!』
とか
あぁ~、やっぱりあるよね~と自然に頷いた。
少しぬるくなった紅茶に口を付ける。
ある程度テンプレート、王道の展開が繰り広げられる。
王道に対して無難とか普通という人もいるが私は好き。
安定とは別、王道をやるというのは、普通ではないけないのだ。
分かっていても、面白いと、楽しいと、思わせるだけのモノが必要なのである。
区切りが着いたところで、CMに入った。
このアニメは、私と同じようにサイトから小説を書いて、書籍化されていたアニメらしくCMで紹介されていた。最近はこの手のアニメも増えてきているみたいだ。
喜ばしい限りだ。
何気なくテレビを見ていると。一つの小説が紹介される。
あぁ、彼のだ。
そういえば、CMでは初めて見た。
すごいな…。
私、すごい人と友達なんだ…。
なんとなく、まだ実感がわかなかったが本当にすごい。
ぼーっと、彼の小説が紹介されるCMを見ていた。
数分して、またアニメが始まった。
明るい楽しくて自由な───…。
…やっぱり、こういうのがいいのかなぁ。
私には、こういったジャンルはかけない。
書いたこともあるが、これじゃない、と自分で思ってしまった。
だから、多分ダメ。
自分が面白いと、好きだと言えるものじゃないから、かけない。
気がついたらアニメは終わっていた。
すっかり冷えてしまった紅茶を手に取って、台所へ流していく。
私の気持ちも一緒に流れないかなぁ。
マグカップを洗って、手を拭き、パソコンの前に座る。
書いていたページを全て消した。
女の子は、何も言わない。
「 」
カッコの中身は空白のまま、この話はもうなかったことになった。
わからないならしょうがない。




