第35話 王都に帰還する・4
R15作品です。
楽しみに待ってくださっていた読者の方々…長らくお待たせしました!
新作はファミ通文庫大賞に間に合いませんでしたが、その代わりにとても面白い作品になると思います。
新作は予想よりも話が壮大で色々まだネタを練ってる段階となってます。
本日からまたこちらの「第二の人生は男の娘でした」毎日連載再開となります。
誘拐犯らしき人物を追跡しながらどうすべきか考えていると、誘拐犯は街から外に出ていってしまう。
これは本当にどうすべきだろうか?
師匠からの念話はまだ届く距離ではある。
しかしこのまま外に出るとなると、念話が届かなくなるかもしれない。
どこまで念話が届くのか試していないだけに、この緊急事態で誘拐犯を追うという行為を少し躊躇ってしまう。
しかし…
迷っている間にも誘拐犯はどんどん街から離れていく。
……おそらく誘拐されているのは子供。
なら何を迷う必要があるのだ?
俺は強いはずだ。
ならば何かあっても自身の力でどうとでも出来るはずだろう。
よし、このまま追跡を続行しよう。
念の為に俺はオリジナル魔法のステルスを使って追跡を続行する。
しばらく追跡を続けていると、間の悪い事に近くにそこそこ強そうな魔物の気配がしてくる。
しかも誘拐犯の方が魔物とかなり近いな。
そして誘拐犯はおそらく魔物に気付いていないのだろう。
誘拐犯はある程度街から離れて油断しているのか、呑気に休憩している。
……これはまずいな…
魔物から殺気が漏れ出している。
誘拐犯の存在を嗅ぎ付けたか?
これはもう俺が動くしか無さそうだな。
そんな事を考えていると、突然師匠の声が頭に響いてくる。
やっと念話が来たかと俺は安堵する。
『お待たせ!状況はどうなってるの?それに今は何処に居るの?』
『遅いですよ師匠!街から魔の領域側に少し踏み込んだ辺りです。それに誘拐犯がおそらくこのままだと魔物に襲われますね』
『魔の領域!?……仕方がないわね。此処からじゃもうそこまで行くのに間に合わないだろうし…好きに動きなさい』
『了解!』
『ただし!やむを得ない状況にならない限りは誘拐犯を生かして捕らえなさい』
俺は再度念話で了解と答えてから直ぐに動く事にした。
誘拐犯はまだ気付いて居ないのだが、目視出来る距離に虎型の魔物が忍び寄っていたのだ。
このままでは誘拐犯はともかく、攫われた子供が危険だ。
ステルスを解除して俺はある魔法を唱える。
「加速!」
身体強化とは別の観点から作ったこの魔法は風の属性を使って強烈な追い風と、通り道の空気を空にする事で追い風が空になった空間に吸い込まれるように二重の加速力を生み出す魔法だ。
それに俺の身体強化された動きが合わされば、景色は高速道路のように流れていく。
俺が誘拐犯の元に走り出すと同時に誘拐犯はついに虎型の魔物を目視していた。
……はっ?
虎型の魔物を目視した誘拐犯はなんと、一目散に逃げ出した。
それは別にいい。
逃げなければ並の人間ではあのタイプの魔物には殺されるだけだろう。
しかしだ。
あの野郎…攫った子供を置いて走り出しやがった。
そうすると魔物は鼻がいいのか、誘拐犯を見逃して置いていかれた子供に寄っていく。
……間に合うか?
このままでは間に合わず子供が魔物に殺されるかもしれない。
焦りはあるが俺は意識を集中させる。
そして唱える魔法。
「転移!」
魔物の真上に転移した俺はそのまま魔物の首目掛けて黒刀・羅刹を振り下ろす。
スパンッ
「ガッ……?」
魔物は何が起きたのかもわからなかったかのように鳴きながら首が落ちる。
それを見届けた俺は直ぐに置いていかれた布袋に入っているであろう子供の元に駆け寄る。
布袋が微かに動いていた。
俺は布袋から子供を出してあげる。
布袋に入っていたのは少女だった。
年齢は俺と同じくらいだろうか?
桜色のロングストレートで目がとても透き通った美少女だった。
意識はあるが、手足が縛られていて口も布で覆われている。
布袋から解放された少女は最初、魔物の死体を目にして恐怖に顔を染めていたのだが、俺を見付けて一瞬驚いた顔をしてから安堵した表情に変わっていく。
「もう大丈夫だから」
そう言いながら俺は縛られた手足と口の布を外していく。
どうやら何処にも怪我などは無いようだ。
自由になった少女は開口一番にお礼を口にした。
「助けてくれてありがとう…」
聡い子だな。
周りを確認しながら自分が誘拐されて、魔物に襲われた自分を俺が助けた事が理解出来ているらしい。
とりあえず師匠に報告するか。
『師匠。誘拐犯が魔物に襲われて、誘拐犯は攫った少女を置いて逃げました。少女は保護しましたが誘拐犯はどうします?』
『保護した子の安全優先だけど、捕らえられる?』
俺はその問いに少女を見ながら考える。
魔物から逃げたという事は、おそらくその程度の実力しか無いのだろう。
少女を連れたまま追うか?
それとも少女を此処に一度置いたままにするか?
そんな事を考えていると突然少女が話し掛けてくる。
「私の事は気にせず追って大丈夫だよ?」
俺は驚愕した。
何故この少女は俺が誘拐犯を追うのかどうか考えている事がわかったのだろうか?
驚いた顔の俺を見ながら少女は疑問符を浮かべて俺を見る。
そして一人納得したのか、俺の疑問に答えるように喋り始めた。
「私は念話が視えるの」
念話が視えるだと?
そんなの聞いた事が無い。
俺は直ぐ師匠に確認する。
『師匠、保護した少女が「念話が視える」と言っているのですが…どういう事なんですかね』
『念話が視える!?…なるほど…その子は魔眼持ちなのかしら……』
魔眼?
確か稀に生まれる特異体質で魔素が目に視えるとか書物に書いてあったな。
「魔眼…持ってます」
少女はそう言いながら目を逸らした。
何故目を逸らすのだろうか?
いや、今はいいか。
『魔眼持ちだそうですよ。それより誘拐犯を追っても大丈夫だとこの子は言ってるので、とりあえず地下室作って保護してから誘拐犯を追います』
『わかったわ。くれぐれも油断しないようにね』
『了解』
そう言って念話を終わらせてから土魔法で地下室を作る。
「此処で少し待ってて。直ぐに戻ってくるから」
「…うん」
地下室に空気穴を作って、明かりも適度に入るようにしてから俺は誘拐犯を追う事にした。
明日は19時更新です




