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烙印者 Prequel ~空白の1ページ~  作者: 日月
第-章 分岐点
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前略~1年前のオレへ~草々

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです

大原生林で目覚めたあの日から、もうじき1年が過ぎようとしてる。



異世界に飛ばされ、記憶を失くし、右も左もわからないままに駆け抜けた1年。


あれから色々なことが……本当に色々なことが起こった。


多くの出会いと少しの別れがあり、大きな喜びと深い悲しみがあった。


いくら超人的な体力があっても、やはりすべてが思い通りにはならなくて、後悔する日もあったけど、人々に支えられ今日まで至る。


いまだに失った記憶は戻らない。


こんなふうに異世界に留まり、日々を満喫していることを、記憶喪失になる以前のオレには申し訳なく思う。


きっかけは望まないかたちだったけど、今ならはっきりと断言できる。


この世界に来てよかったと。


さまざまな冒険を通じて出会った仲間と共に、この先もオレはここで生きてゆくのだ。


書きたいことは山ほどあるけど、残りのページもないし、今は皆を待たせているので、それはまたあとで。



「さてと……」

 王都の宿の一室で、習慣の日記を書き(つづ)っていたオレは、万感の思いでペンを置く。

 この日記帳もずいぶんと分厚くなり、もうボロボロだ。そろそろ新しい物を用意しなければならないな。

 そんなことを考えながら、オレが身支度を整えていると部屋の扉がノックされる。

「おお、直々にお出迎えとは、オレも偉くなったもんだ」

「君なぁ……まるでジョニィみたいだぞ」

「む、それは心外だな」

 扉を開けるとそこに立っていたのは、見知った魔女っ娘――じゃない、我らが仲間(パーティ)で一番の魔法の使い手、魔法使い(ウィッチ)のドロシーだった。

「怪我はもう大丈夫なのか?」

「ん? ああ、元々大した傷でもなかったし、すっかりよくなったよ」

 ドロシーが案じているのは、先日の激戦でオレが敵の大将から受けた負傷。

 敗北の怨恨を残すように刻き込まれた胸の傷についてだ。

「君に傷を付けるなんて……竜人王、敵ながら大した奴だったな」

(まったくドロシーの言う通りだ……)

 まさかこの世にオレを脅かす存在がいようとは露にも思わなかった。傷の場所が場所だけにひやりとしたものだ。

「ところで、そろそろ約束の時間を過ぎようとしているのだが、のんびりしていて大丈夫か?」

 懐中時計を手に、ドロシーが淡々と忠告をしてきた。

 今日は新たな依頼(クエスト)の出発日であり、仲間の皆と待ち合わせをしている。

「えっ!? そういうことはもっと早く言ってくれよ! ほらドロシー駆け足!」

「やれやれ、運動は苦手だというのに……」



『――――――ッ…………』

「悪い。支度に遅れた」

「おいおい、重役出勤たぁ、さすがはリーダー様だな」

 待ち合わせ場所の広場にある噴水に、遅れて到着したオレは、ジョニィの皮肉を浴びせられる。

 ビビリで足手纏いだったジョニィも、今やいっぱしの冒険者。斥候(せっこう)の才能を開花させ、仲間(パーティ)に貢献してくれている。

 旅の安全にいなくてはならない存在だ。

「いいじゃあないか。先日、あれだけの活躍を見せたんだ。いくら彼でも疲れが残りもするさ」

 傍でオレを労り擁護してくれているのはドロシー。

 強力な魔法の習得に余念のない彼女は戦場の花形で、パーティリーダーを務めるオレにとって公私ともに頼れる相棒的存在だ。

 長らくワンマンアーミーだったドロシー先輩も、仲間との冒険を通じて他者との関わり方を学び、今では態度が柔らかくなっている。

『――――ァ……ダ……』

「とかなんとか言って、夕べは2人でお楽しみ――ふべっ!?」

 ……一部の不埒(ふらち)人間(ジョニィ)を相手にする場合を除いて。

「く、口を慎め! 私と彼はまだそんな関係じゃないっ!」

 耳まで真っ赤にして取り乱すドロシーは、下卑た笑みを浮かべているジョニィ目がけて、杖をフルスイングした。

(うんうん。魔法を放たなくなっただけ成長したよな)

「いってぇなぁ! だったら、なんでそんなムキになってんだよ! 最近、怪しいんだよお前ら!」

「ハハハ……と、ところでジェーンたちの姿が見えないけど、オレたちが最後じゃなかったのか」

 待ち合わせ時刻を過ぎても、この場に居ないメンバーの行方を問う。

「あいつら、昨晩はかなり出来上がっていたからな。きっとまだ二日酔いでダウンしてるんだろうぜ」

「そうか。ならばジョニィ。呼びに行ってこい」

「はあ? なんで俺様が――ひぇ……わ、わかったよ! 行きゃあいいんだろ、行きゃあ!」

『――う……1年……学校……』

 ――何だこれ……声?

「はてさて、今回はどんな冒険が待ち受けているのか」

「ああ、出発前のこの高鳴りは、いつも変わらないな」

『私……大丈夫……きっと……』

 ――どこか遠くというよりも、これは…………。

「おぉぉーい!」

 ジョニィを筆頭に、遠くから見慣れた顔ぶれが手を振りながら、こちらにやって来ている。

「ようやく全員揃ったな」

「さあ、それじゃあ、行こうか。みんな――……」



 唐突に。





 ――――()は夢の途中で目が覚める。





 世界が白く染め上げられ、皆の存在が遠ざかっていく……。


 最後にヒラヒラと宙を舞う1頭の青い蝶を見た。


ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます

ご感想など お待ちしてます 活動の励みになります



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