ep.01.5 √B ~夢の終わり~
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
頭の中に声が響く。
知らないはずなのに、どこか懐かしいような声だった。
(ここは誰だ?)
混乱から生じた思念は意味を成さない。
楽しくて優しい夢から、つらく厳しい現実へと強制送還された。
それがあまりに唐突な場面転換だったため、状況を把握するのに時間を要する。
白い天井。
白い壁。
白いベッドの傍らには綺麗な花が飾られている。
体が酷くだるい。自力で起き上がるのは無理そうだ。
(病床に伏してるくらいだ、当然といえば当然か……)
「――ヵ……ァ……」
人を呼ぼうとするが、喉が張り付いて上手く声が出せない。
(そうだ。ナースコールを――えっ!?)
なけなしの力を振り絞り、ナースコールに手を伸ばすと枯れ木のように痩せ細った腕が視界に入る。
(オレの体……だよな……いったい何が起こって……)
見慣れた視点から見る、見慣れぬ体に呆然とする。
「ぅ、あ…………」
急激に心身に負荷が掛かったせいか意識が遠のく。
異世界に転移したときに失くしていた記憶。自分が何者であるかという問い、その答えが怒涛の勢いで流れ込んでくる。
ここでのオレは世界の加護を受けた転移者ではなく、どこにでもいるその他大勢の凡人。
心躍る冒険も、明確な敵や、それを制覇したときの達成感もない。
導いてくれる魔法使いや、溺愛してくれたお嬢様、引き立て役のかませ犬もいない。
これから先は、どこまでも無味乾燥な日々が続くのだ。
不意に去来するのは、お気に入りのゲームをクリアしたときに似た喪失感。
浮かんでは消える仲間の顔に見送られながら、俺は再び眠りに就いた。
ここまでご高覧いただき 誠にありがとうございました
『烙印者 Prequel ~空白の1ページ~』は ここで一区切りとさせていただきます
引き続き、次回作『烙印者 ~忘却の少年~』をお楽しみいただけたら 幸いです
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