幕間~農家の三男坊が納屋に眠っていた伝説の剣に導かれて超絶無双する件~村の自警団が引き留めてももう遅い! 俺様は激マブ令嬢とクーデレ魔法使いを侍らせ英雄になる!
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
「……クソ面白くねぇ」
どいつもこいつも、アホ面晒して試合に夢中になっていやがる。
満を持して冒険者試験に殴り込んだってぇのに、魔法の適正は並み以下で、実技もてんで振るわない。
俺様の中に眠っている、超絶最強のパワーで脇役どもの度肝を抜き、華々しく冒険者デビューを果たすつもりが、どっかのバカが決闘なんかおっぱじめて、話題をかっさらいやがった。
「きっと時期が悪かったんだ……長旅で疲れてたしな……」
そんなふうにこの俺、ジョニィ様が独り言ちていると、空気を読めねぇ脇役どもから大きく歓声が上がった。
「チッ、うるせぇな……」
周囲の熱狂に当てられて人垣の隙間から覗き見ると、剣を持った男が次々と襲い来る魔法を弾いている。
あいつだ、あいつ。
カーニバルの道化師みてぇに、ド派手に着飾っているおめでたい奴。
主人公の俺様を差し置いて、皆の注目を浴びてるあのいけすかねぇ野郎。
「なんで、あんな奴が……」
冒険者の中でも名うての実力者を相手に健闘し、あまつさえ接戦していやがるんだ。
俺とお前、いったい何が違うんだ。
余所者同士、招かれざる客だろ。
俺様は田舎も田舎ド田舎の農村で、しがない農家の三男坊として生まれた。
農家のそれも三男坊。長男の代わりの代わりだ。
土地も家業も継ぐ権利はなく、うっかり出来ちまった誰からも期待されない人間。
俺に残された将来の選択は、このまま家に残り兄貴たちにこき使われ、財産も持たず労働力として一生を終えるか。
家を出て他所の農家で雇ってもらい、やっぱり奴隷のように終えるかの二択。
死ぬまで搾取されるのが決まったクソみてぇな人生だ。
そんな俺様にも――いや、そんな俺だからこそ夢がある。
仕事をさぼり、ひょんなことから古市で拾った英雄絵巻。それは閉塞感に喘ぐガキにとって救いだった。
どこにでもいるような平凡な少年が、剣術の才能に目覚め、己の腕っぷしひとつで英雄へと昇り詰めるサクセスストーリー。
いつか俺もそんなふうになるんだと胸を熱くし、どん詰まりの未来に希望を抱けた。
そう! 夢は英雄になること! 村の……いや、世界の誰もが認める大英雄に俺はなる!
そうと決まれば、いずれやって来る魔王軍の進撃と、王女様との激アツな出会いに向けて準備せねばなるまい。
寝ていても、時が来れば導かれるだろうが、俺様は堅実な男だ、うん。
手始めに村の自警団に入って、柄にもなく真面目に剣術を学ぶ。
自分の中に眠る才能を信じて、地味でかったるい基礎体力トレーニングなんかにも励んだ。
けど、1日が過ぎ、3日過ぎて、どんなに頑張ってもちょびっと筋肉が付いた気がするくらいで一向に芽が出ねぇ。
そんなだから模擬戦でも、ここ一番でビビり癖が出ちまった。
性根の捻くれた2番目の兄からは、よく蚤の心臓とからかわれたっけな。
……いや、んなこたぁどうでもいい。
そもそもだ。
こんな辺境で、隠居した戦士から剣術を教えられたとこで強くなれるわけがねぇ。
魔王軍だってこんな何もない村を襲うかうっすら疑問だ。
嗚呼、ビッグな俺様にこの村は小さ過ぎる……王都に生まれてりゃあ俺だって……。
そうだとも! 全部環境が悪いのだ!
思い立ったがなんとやら。こんなとこにはさっさとオサラバだ。
俺様は、息子の成功を疑うクソ親父の財布から旅費を頂戴すると、納屋に眠っていた宝剣を手に、故郷の農村を飛び出した。
(つーか、思い返してみても、印象的な出来事がまるでねえ……マジでなんもねぇ村だったからな……けどこれからは違う……そのはずだったのに……)
そうして現在。冒険者組合の訓練場にて、脇役どもに紛れて決闘試合を目の当たりにしている。
「ふん……あいつもなかなかやるじゃねぇか……ま、まあ、俺様にゃ遠く及ばなねぇけどな、うん!」
――いつからだ? 嘘を吐くのが平気になったのは。
「……オレだって本気を出せばあんくらいのこと…………」
――いつからだ? てめぇの嘘で誤魔化せなくなったのは。
不意に脳裏に浮かんだうざったい声。それを振り払おうとして意識を他所に移すと、試合を観戦している奴らの会話が耳に入る。
「なぁ、どっちが勝つと思う?」
「そうだなぁ……やっぱ魔法使いが勝つんじゃないか? 男の方も頑張ってるけど、戦士が強かったのなんて親父の時代の話しだろ」
「だよなぁ。御伽噺の英雄様じゃあるまいし、期待するだけ可哀想か」
「んじゃあ賭けるか?」
「いやいや、賭けになんねぇって」
「…………好き勝手言いやがって」
そのとき一際大きく歓声が上がり、勝負は佳境を迎える。
見ると決闘を行っている野郎は剣が折れてしまい、丸腰で魔法使いと対峙してる。絶体絶命ってやつだ。ざまぁみろ。
(あいつ、どうして……)
だけど野郎はピンチに陥ってなお、戦う姿勢を崩さない。煤塗れのみっともない格好で拳なんか構えちゃってる。
(ダッセェの。俺が目指す英雄とは程遠い――……)
「――クソが……あのバカ、なにやってんだよッ!」
次の瞬間、気づくとオレは愛剣を手に駆け出していた。
きっと理由はいろいろある。けど、考えるのもメンドクセェ。
ただ同じ余所者で、同じ新米で、同じ戦士を志すあいつが無様に負けるのは、どうにも我慢ならん。
文句を垂れ流し腐ってるのは、いい加減飽き飽きだ。
(もし、あいつが勝負に勝つことができたら、そんときは今度こそ俺も本気で――――)
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