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ep.39 彼方に野党!?

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです

「――ハッ! 気を付けろ! 何か向かって来ているぞ!」



 それからしばらくして、またしても唐突にジョニィが警鐘を鳴らす。


「…………よく見えないな」


 ジョニィが指差す方向。街道の先に注目すると、かろうじて豆粒大の影が確認できる。


「て、て敵襲だ! か、か構えろ!」


 やはり、ジョニィだけは敏感に不穏な気配を感じ取っているようで、震える手で腰に下げている短剣(ダガー)の柄を握る。


「……あれは見たところ旅人だな。我々の町に向かっているのだろう」


 距離が近くなるにつれて対象の姿が明らかになると、ドロシーはそのように判断する。


「や、野党じゃねえのか?」


 ジョニィの疑問にオレも同調する。


 対象はボロを纏(まと)っており、かなり風貌が荒んでいる。知見が浅い者からしたら、野党と区別がつかない。


「無辜(むこ)の民を装っている野党か……その可能性は否定しないが、相手が賊と判明するまで武器は抜くなよ?」


「それってつまり、賊とわかったときは襲われてるってことだろ? んな無茶な……」


 有事のさい、後手に回るのはルールを守る者の常であり弱みか。その点、破る者は気楽でいい。


「迂回するってのはどうだろう?」


 不安に思うくらいなら、このまま街道のど真ん中を直進して、かち合うのは避けるべきだ。


「街道を外れるのはそれこそ危険だ。視界や足下が悪く、敵の奇襲への対応が遅れるし、それが狙いという線だってあり得る。敢えて野党の一人が不審者然とした姿を晒し、それに怯えて迂回する獲物を、周辺で潜んでいた仲間が襲う……というふうにな」


(そういう企みもあるのか……まるで、魚の追い込み漁みたいだな)


 ドロシーは杖を逆さまに持ち、攻撃の意思がないことを示す。


 それから、離れた旅人からも見えるように片手を掲(かか)げ、宙に二度三度大きく円を描いた。


(何かの合図か? ……おっ、向こうも返してきた)


「行くぞ。くれぐれも警戒は怠るな」


 ひとまず互いに戦闘の意思がない、という確認が取れたらしい。一行は止めていた歩を進める。


「……一応訊くけど、どれくらい信用できるんだ?」


「絶対の保証なんてないさ。相手の胸三寸で状況は変わる」


「だよな……」


 衛兵の詰所が点在しているとはいえ、やはり人里離れた法の届きにくい街道だ。邪な考えを持つ輩も増える。


「現状における数の利は、こちらにある。精々伏兵がいないことを祈ろうじゃないか」


「た、旅人だろ? 不吉なこと言うなよ……」


「あらゆる最悪を想定していれば、いざというとき臨機応変に動ける。冒険の心得だ」


 旅人との距離が表情が判るほど縮まり、一行に緊張が走る――――。


 ◇◇◇


 果たして正体不明の旅人との接触は、拍子抜けするくらい何事もなく終える。


 草臥(くたび)れた感じのする旅人は、こちらとすれ違い様に軽く会釈をすると去って行った。



「杞憂(きゆう)だったな。人はまだ起きてもいない困難を先回りして不安視するが、その多くは想像の域を出ないものだ」

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです



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