ep37 冒険日和
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
「やー! 本日は絶好の冒険日和だな!」
「心躍りますわね! 歌い出したい気分!」
「まったく、君たちは……遊びじゃないんだぞ」
「どうしてこうなった……」
遠足前の小学生さながらにはしゃいでいるのは、ジョニィとマティルダの2名。
対照的に気落ちしているのは、引率の先生ことドロシーとオレの2名。
計4名プラス1頭の即席仲間は、大平原に横たわる街道を行く。
プラス1頭とはマティルダお嬢様が騎乗する山羊のような鹿のような馬(?)のことだ。
こいつがなかなかにスケベなオスで、飼い主であるマティルダは言うに及ばず、ドロシーにも鼻を擦り付けたりして懐いてるくせに、男性陣には態度を豹変させ素っ気ないどころか好戦的になりやがる。
そのことにむかっ腹を立て、躾けようとしたジョニィなんか、後ろ足で切り飛ばされていた。
そんな馬鹿山羊(仮称)をジョニィは警戒しつつも、マティルダの側を歩きナンパ男よろしく、しつこく自分を売り込んでいる。
「だから言ってやったのさ……お前たち、文句があるならまずはこのジョニィ様を倒してからにしな――ってな! 一斉に襲い来る悪党! あわや大惨事と思いきや、俺様は愛剣多勢に無勢をものともせず、敵をバッタバッタと薙ぎ倒し――」
「はあ、そうですのね」
ジョニィによる真偽のほどがだいぶ怪しい武勇伝に、マティルダは気のない感じで相槌を打っている。
「ジョニィ、お前は後列だろう。前に出過ぎだ……やれやれ、先が思いやられるよ……」
「なんか、ごめんな……」
模造剣の借りがあり、一応は約束を交わしたジョニィは仕方ないとして、マティルダまで同行するのは当初の予定にない。
ドロシーには、我儘なお嬢様のお守に付き合わせることになってしまって、心苦しく思う。
「貴族からの依頼自体は、さして珍しくはない。単身で同行を希望されるのは稀だがな……まあ、町の外に赴くとはいえ人間の支配圏内ではあるし、凶暴な魔物もいないだろう。私と君が揃っているんだ、大丈夫さ」
「大丈夫、なのかなぁ……」
この世界の住人はどうも楽観的というか、刹那的というか、いい加減なところが度々見られる。
魔物や野党が跋扈し、剣と魔法の世界。死が身近にあり、明日も知れない世の中だ。
人間ひとりの命が軽く、だからこそ重要なのは目の前にある今この瞬間であり、いちいち立ち止まって悩んでいる暇などないのだろう。
(逆に彼らからすれば、オレは七面倒くさい奴なのかもな)
国や風土が違えば国民性も異なる、そんな当たり前の話。
そういった七面倒くさいことを考え込んでいるオレの頬を、薫風が撫でる。それに誘われるようにして周囲へ視線を巡らせた。
「これは…………やっぱり凄いな……!」
果てしなく続く空となだらかな地平線。
深翠と蒼天の鮮やかなコントラスト。
小高い丘から見下ろす圧巻の光景に心を奪われ、直面している不安など些末事のように吹っ飛んだ。
こうして町の外に出るのは2度目。
以前は遭難という非常事態の最中で、悠長に景色を楽しむ余裕などはなかったのだが、冒険者となった今、世界はまた違った輝きを見せてくれる。
どんな映画やゲームで見た景色よりも臨場感がある一大パノラマ。
この広大な世界で、この身ひとつ生きてゆく。
オレはこの大地に冒険の第1歩を刻んだのだった。
ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます
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