表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

ep.32 闘いのあと~余波~仲間

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです

「さて、晴れて君は冒険者になるわけだが。どうだろう、一度私と仲間(パーティ)を組んでみないか?」


「え……」

 魔法使いの提案を聞いた周囲の人間がざわめく。

 こっそり耳をそばだててみると、孤高を気取る魔法使いが誰かを誘うのは、よっぽどのことらしい。

(ただの社交辞令と受け止めず、返事は慎重になるべきか……)

 抜きん出た実力者に認められたのなら光栄だけど、協調性のない人間である線も考え得る。

 憂慮するのは、魔法使いが誰とも仲間を()()()()()()のではなく、誰とも()()()()()()人間である可能性だ。

 冒険者の仲間ともなれば、ときとして命を預けることもあるだろうから、相手は吟味せねば。


「おっと! その話は、俺様をとおしてくれねえとなあ!」

 ふいに周囲の群衆の中から声が上がる。

「ちょ、おい、やめ、どけっ! どけって……ぬがっぐぐぐ…………うおッ!?」

「……誰だ?」

 人垣を無理に押し分けたことで反感を買い、皆に小突かれ(つまづ)きながら飛び出て来た軽薄男に、魔法使いは怪訝(けげん)そうな顔を浮かべる。

「君の仲間かい?」

「違う」「そうだ!」

 魔法使いの質問に、それぞれ異なる返答が重なる。

「ええと、見解の相違が見られるようだが……?」

「オレがいつお前の仲間になったよ……」

「はあ!? なんでだよ! その剣貸してやったろ!」

「あぁ、これか……」

 確かに試合中に軽薄男から模造剣を貸して貰ったが、それで仲間になった覚えも、仲間になるつもりもない。

「おいおい、スカしてんじゃねぇよ。俺様が手助けしてなきりゃ、決闘に負けてただろ? となれば試験も合格できず、冒険者にもなれなかったわけだ。わかるか? すべては俺様の、お・か・げ・よ!」

(あの局面を切り抜ける術なんて他にもあったけど……なるほど。傍からすれば、そう見えたか)

 軽薄男は恩着せがましく自分の手柄を主張してくるが、もちろんオレは同意しない。

 そも事前に、そのような取り決めを交わした覚えなどないし、いくら模造剣を貸して貰った恩があるとはいえ、それはそれこれはこれだ。

 こんな奴と仲間を組むなど、ごめん被る。

(こいつこそが、誰とも仲間を組めなかった人間だろうからな)

 大体、出会いからして軽薄男の心証は最悪で、距離を置きたい手合いナンバーワンの人間だ。

 今後、よっぽどのことがない限り交流を持つことはないだろう。


「――というわけだ。じゃあ、返すぜ。ありがとな」

 以上のことを話してにべもなく断ると、さすがに軽薄男も消沈した様子で、渋々ながら引き下がる。

(少し、言い過ぎたかな……)

 オレの中で罪悪感がもたげる。

 軽薄男の腹積もりがどうであれ、力を貸してくれたのは事実だ。

「チッ、なんだよ、なんだよ……つれねえ野郎だな。後悔しても知らねえからな……」

 軽薄男はブツブツと不満を垂れながら、オレが差し出している模造剣を受け取ろうと手を伸ばし――――そこで剣の刀身がポッキリと折れた。


「あ」「んえ?」「おや」


(そうか。スキルで強化せず、強引に泥人形〈ゴーレム〉をぶった切ったから……)

「ぬわああああ!? 俺のヴァレンティーヌがああああぁぁぁぁ!!」

「ヴァ、ヴァレ……なんだって?」

 翻訳障害スキルが発動し、オレは思わず対象の名前を訊き返す。

(……っていうか、こいつ剣に名前なんて付けてるのか)

「どうしてくれんだっ! 弁償しろ、弁償ゥ!」

「あー弁償、ね……したいのは山々だけど、今は手持ちが……」

「おおぉぉん! 愛しのヴァレンティアァ! 伝説の剣となるはずのお前が、こんなとこで終わるなんてええぇぇ……!」

「いや、たぶん名前間違えてるし! そもそも模造剣だろ、それ!」

 魔物(モンスター)どころか野菜も切れない剣が、どうやって伝説になろうというのか。

 人目を(はばか)らず大泣きする軽薄男にドン引きしつつも、それほどまでに入れ込んでいた剣を折ってしまったことを知り、いよいよもってオレの両肩に罪悪感がのしかかる。


(仕方ないか……)

「ハァ、わかった……一度だけ。一度だけ冒険に付き合ってやるよ。それで今は勘弁してくれ」

「本当だな!? 約束じたぞ! あど代金はぢゃんど弁償じで貰うがらな!」

 瞬間、折れたヴァレナンチャラを前にして、床に(うずくま)っていた軽薄男は、涙やら鼻水やらでぐしょ濡れの顔を跳ね上げると、加速スキルかくやの敏捷(びんしょう)な身のこなしでオレに迫る。

「あーはいはい……うおっ!? それ以上近づくなバッチイ!」

「ぷげらっ!?」

 体液を垂れ流しすり寄って来る軽薄男を、オレは思わず蹴り飛ばしてしまう。

 この怪力を受けても、軽薄男は爆ぜることなくもんどりうった。

 模擬試合を経て力加減を覚えてきたオレである。

(それでも、やっぱり人間相手は苦手だな……)

 魔物を容易く(ほふ)る怪力も、人間が相手では十全に振るえず弱点になるとは……。


「ほう。ならば、やはり私の協力が要るな。近場を冒険するにしても新人二人では心細いだろう?」

 魔法使いは、すでに冒険者として活動実績のある自分の有用性を、ここぞとばかりに説いて売り込んでくる……やはり早口で。

「わかった! もう十分わかったから! 最初の冒険はこの三人で行こう!」

「よっしゃ!」

「賢明だな」

 こうなってしまうと、オレはもう考えるのも面倒になって諸々の提案を承諾する。

(やれやれというやつだ)



 人生、先のことは誰にもわからない。

 迷い、悩み、慎重を重ね、最善を尽くしたつもりが裏目に出ることもある。

 いつだって後悔の奴は後に立つ卑怯者なのだ。

(それなら、いっそ流れに身を任せるのも、ありのはず…………そうだよな?)

ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます

ご感想など お待ちしてます 活動の励みになります



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ