ep.31 闘いのあと~余韻~魔法使いと書いてその実・・・
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
レフェリーこと気怠るそうな担当員が、いつになく高いテンションで勝者の腕を掲げると、試合の行方を固唾を呑んで見守っていた観衆が一斉に沸く。
「スゲェェ! スンゲェェェェーッス! 俺、感動しちゃいましたッ!(Foooo! カンドォ!)」
(こ、これはもう、気怠そうなんて言ったら失礼だな……)
名うての魔法使いを無名の新人が打ち負かした。この快挙を目の当たりにして、アッパーな担当員を始め皆が口々にオレを褒めそやす。
『うおおぉぉ! いいぞぉ!』
『やるじゃねぇか! あの新人!』
『白熱した試合だったぞ!』
『私たちも負けてられない!』
『まさか本当に勝っちまうとはな!』
『うがぁ! 番狂わせの大穴だぁぁ!』
「見事だ」
決闘を終えて、魔法使いが歩み寄り和解の握手を求めてくる。
それに応じたオレがしっかりと手を取ると、その拍子にバランスを崩した魔法使いがよろめき、肩にしなだれかかる。
「おっと!」
「す、すまない。柄にもなく、少々張り切り過ぎてしまったようだ……」
相も変わらず涼し気な顔を崩さない魔法使いだったが、こうして近くに寄ると息が乱れていることが確認して取れる。観衆の手前やせ我慢をしていただけで、実際はかなり消耗していたようだ。
「正直なところ、一発目の火球〈ファイアボール〉を弾かれたときから、この決着は予想していた……何だ、意外そうな顔をしているね」
「うーん、だってなあ……」
決闘を突き付けてきた件といい、その言動から魔法使いは、なかなかに自信家と見受けられる。
(だから、そう、正直なところ、魔法使いがこんなにも潔く負けを認めるとは考えてなかったし、勝敗がどうであれ、わだかまりは残るだろうと覚悟していた)
「いかな魔法といえど無尽蔵に生み出せるものではない。魔法の使用限度は優秀な者で9つ。天賦の才を授かった私で二桁といったところだ。それでも大抵使用限度内でカタが着く。つまりそれほどまでに魔法は強力無比なものなんだ。それなのに君という奴はまったく火球〈ファイアボール〉を剣で弾く者など前代未聞だよ」
(す、すごい早口だな……)
魔法使いは此度の戦闘を饒舌に分析し、ひとしきり語ると満足したように溜息を吐く。
「コホンッ……そ、それでだな……」
「うん?」
「あの、もう大丈夫だから、そろそろ離れてもらっていいかな?」
「あ……わ、悪い!」
ずっと魔法使いを支えるかたちで、身を寄せ合っていたのに気づき、オレは慌てて身体を離す。
魔法使いは大き目のローブを着用していて、見た感じではわかりづらかったけど、うっかり力を込めたら壊れてしまいそうなほど華奢な体をしていた。
「いや、汗をかいたし……に、臭うだろう……?」
「ハハッ、それはお互い様だろ」
一呼吸置いて平静を取り戻した魔法使いは、すくっと立ち上がるとローブの乱れを正し敬意を籠った一礼をした。
「御見逸れした。それだけの力を得るには、相当の研鑽を積んだのであろうな」
「えっ、い、いや……まあ、それなりに、ね……」
オレは曖昧な態度で言葉を濁した。
表面上の理由は敗者の手前、あまり謙遜するのも嫌味に取られだろうと配慮してのこと。
自信家であり、ややもすれば高慢とも取れる魔法使い。天才を自負するが、その在り方はたゆまぬ努力の賜物だろう。
男社会の中世で女性が頭角を現すには、オレの想像が及ばないような苦労があったはずだ。
「そう謙遜するな。君の実力は本物だよ。戦士など、魔法の才能に乏しい者がなる賤業だと見下していたが、考えを改めなければならないようだ」
(……まいったな)
魔法使いが称賛するオレの能力が、ある日、目覚めたら手にしていた借り物だと明かしたら、彼女はいったいどんな顔をするのだろう。
芽生えた尊敬の念など消し飛び、逆に軽蔑されてしまいそうだ。
(オレ自身には、なんら非はないのに、なんだこの後ろめたい気持ちは!)
ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます
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