ep.30 決着!~剣と魔法-戦士VS魔法使い
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
「参った――――と言いたいところだが……レフェリー、どう思う?」
剣を突き付けられてなお、余裕の態度を崩さない魔法使いが、レフェリーに勝敗の判定を仰ぐと彼は首を左右に振る。
『ふざけんな!』
『まだやれるだろ!』
『こんなんアリか!? 納得いかねぇ!』
『クソが! 金返せ!』
『続行だ、続行!』
試合を取り囲む観衆から、一斉に野次が飛ぶ。
「――だそうだ。残念だったな?」
「なっ!? な……んで…………!」
勝敗は明らかなのに、どうして正しい判定が下されない。
オレの態度が悪かったから?
それとも、オレが異邦人だから?
あるいは、権力者の男爵に贔屓されているからか?
だから、組合の身内で結託して気に食わない新人いびりか?
この決闘の場は、端からそのつもりで設けられたのか?
オレの中でいくつもの疑念が浮かび、じわじわと暗澹とした感情が込み上がってくる。
「よく見たまえ。どうやら、運命の女神モィラィは私に微笑んでいるようだ」
「え――あ……ああっ!?」
ここで、オレが勝利を得られなかった本当の理由が判明する。
自分が不当な扱いを受けていると考えたのは、とんだ早とちりだったようだ。
(ちくしょう、またかよ!)
荒っぽい扱いが祟ったのか、ここ一番というときに振り上げた長剣が刀身の中程からポッキリと折れている。
どうやら並みの武器では、オレの怪力に耐えられないらしい。
折れた一方の行方を捜し地面を見下ろすと、そこには刀身が突き刺さったままでいた。
「あー……これは……」
「さあ! 試合続行といこうか!」
「ちょ、ちょっとタイム! 替えの剣を――」
オレは両手でTの字を作り、試合の一時中断を提案する。
「甘い! 最初に言っただろう、実戦形式であると! 敵前で待ったなど通用するか!」
身を翻して距離を開けた魔法使いが杖を構える。
「不測の事態に対応するのも模擬試合のうち……さあ、降参するなら今のうちだぞ!」
そして、無慈悲にも再び詠唱を始める。
次に発動させた魔法は、お得意の火球〈ファイアボール〉――ではなく、泥人形の召喚魔法だった。
地面から生えてきた泥人形が、緩慢な動作でオレに迫りプレッシャーを掛ける。
「くっ、ここまでなのか……!」
降参の言葉がオレの喉元まで出かかったところで、はたと気づく。
そもそも論、試合を通じて実力を示せばいいのだから、別に武器がなくともいいのではないだろうか。
観察眼のスキルによると泥人形〈ゴーレムLVⅡ〉は、純粋な強さでいえば大鬼より劣り、素手でも余裕で倒せそうだ。
(……やむをえん。向こうが提示した決闘の趣旨からはズレるだろうが、このまま負けを認め引き下がるよりかは――……)
「ぅおぉぉーい! 余所者ぉぉ! こいつを使ぇぇぇぇ!」
オレが拳を固め泥人形〈ゴーレムLVⅡ〉を見据えたそのとき、観衆の中から身を乗り出した軽薄男が声を上げる。
(あいつ、どうして……)
折れた長剣の代わりに使えと、ご自慢の模造刀を投げて寄こした。
「させるものか!」
魔法使いが焦って魔法を発動させる――より先に、オレは飛び掛かる。
空中で模造刀をキャッチ――。
――鞘から抜き放つと障害となる泥人形〈ゴーレムLVⅡ〉を打ち砕く。
そして着地と同時に魔法使いの喉元に切っ先を突き付けた。
この間僅か0.99秒の早業だ。
「不測の事態もなんとやら、だろ? 降参するなら今のうちだぞ」
「……ふっ、そうだな。降参するよ――――私の負けだ」
「勝負あり!」
オレがしたり顔を浮かべると、魔法使いは諦めたように微笑み、レフェリーが高らかに決着を宣言した。
ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます
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