表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
烙印者 Prequel ~空白の1ページ~  作者: 日月
第1章 目覚め
3/39

ep.3 残滓

事物は多角性


拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら幸いです


 目覚めると、そこは森林だった。



 見知った天井でなければ、見知らぬ病室でもない。

(悪い夢を見ていた気がする……詳しい内容は忘れてしまったけど……)


 視界いっぱいに埋め尽くすのは、種々様々の木々が織りなす枝葉のカーテン。


 風に揺れ、その合間から差し込む木漏れ日により、辺りは翡翠(ひすい)色の光に包まれている。


 大自然が醸し出す神秘的な雰囲気に圧倒されて、思わず溜め息を吐いた。

 それから、体をゆっくりと起こして視線を周囲へ巡らせる。

 しとねを共にしていたのはラッキーでスケベな美少女――――ではなく、毒々しいまでに異彩を放つキノコの他、蟻に運ばれる奇妙な姿の蛾の死骸。

(なんだか不吉だな……)


 人気のない森林――原生林で覚醒した――は、ここに至る経緯をまるで思い出せず、巨木の下で呆然と立ち尽くした。


(落ち着け……落ち着け……冷静に状況を整理するんだ……)

 再び(まぶた)を閉じ余計な視覚情報を遮断して、深呼吸を繰り返す。

 咽かえるほど濃密な腐葉土の匂いが鼻腔を満たした。

 とにかく、意識を外界から内界へと沈める。


 日付や住所。

 名前や年齢。

 家族構成や交友関係。

 また勤めている会社など。

 自分自身に関する、ありとあらゆる質問を次々と投げかける。細い記憶の糸を手繰り寄せようと試みた。

「………………!?」


 迫るエンジン音とバンパー。

 凄まじい衝撃と目まぐるしく回転する景色。

 赤黒く滲むアスファルト。

 そして――――。

「――ッ!」

 突然、脳内にフラッシュバックしたのは、あまりにもショッキングな誰かの交通事故の映像で――は、驚愕に目を見開く。

 自身の無事を確かめるように、震える体を抱えて擦った。

「ハッ、ハッ、ハァッ、ハァ……ハァ……ァ…………ふぅ………………」


(……そうか、分かった。自問の結果として、よく解らないことが判った)

 しっかりと言語を用いて思考しているように、住んでいた地域で学んだ知識や、一般常識といった記憶はあるものの、人格を形成するのに重要な思い出に関する記憶がひどく曖昧だ。

 つまりは記憶喪失。いわゆる、ここはどこ? 私は誰? 状態である。

(参ったな……)

 己が正体を知れず、故に何処へ向かうとも知れぬ……などと、やや哲学めいた文言が浮かび、シニカルな笑みを作りながら、根の溝にできた水溜まりを覗き込む。


 水面に朧げながら写る人物は、着ている服装から想定していたものよりも若い。

 その見た目年齢から、一人称をオレと仮定する。ボクという線も考え得るが、スーツもとい学生服からしてワタシではないことは明白だ……特殊なケースを除いて。

 それから、顔を上げて今一度周囲を見渡す。原生林で覚醒してから半刻ほど経過しただろうか、依然として誰かがオレを迎えに来る気配はない。



(これって……やっぱり、そういうことだよ、な…………?)

ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます

ご感想など お待ちしてます 活動の励みになります



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ