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ep.28 決闘!~剣と魔法-戦士VS魔法使いⅡ

試合開始です


拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです

「んじゃあ、両者準備はいいっスか? このコインが試合開始の合図ですんで(アァ、ハー、モゥカエリテー)」

 決闘の場に相応しくない緩い態度で、試合のレフェリーを務めるのは気怠(けだ)るそうな担当員。


 観衆(ギャラリー)が見守る中、ひょんなことから始まった決闘……。

 

 魔法使いのプライドと一般人の反抗心が、今まさに激突しようとしている……。



 指で弾かれたコインが、甲高い音を鳴らし地面に落ちた瞬間――オレは足元を蹴り上げ一気に駆け出し、魔法使いへ速攻を仕掛ける。

 そして、習得しているスキルの中から見つけた、この場に適してたものを発動させる。


 加速スキル発動〈カイロースの決断〉


『はや――――――!』

 観衆が上げた驚きの声は、耳に当たる向かい風によってかき消えた。

(呪文を唱える暇は与えない!)

 この世界において魔法は強力無比な存在らしいが、これがセオリー通りなら詠唱を必要とし、発動するまでにタイムロスが生じるはずであり、ならば戦士職としてその隙を突くのが定石だ。

(ビデオゲームの話だけどな!)

 マティルダが水魔法を披露したあのとき、それから魔法使いが内包しているオドを調べるとき、実際に詠唱するのを見ていたので、この仮説は確信に近い。


「――ほう、狙いは悪くない。でも、だからこそ対策されるとは考えなかったのかな?」

 瞬く間に距離を詰めたオレの走力に、魔法使いは目を剥く。しかし、すぐにその表情が不敵な笑みへと変貌する。

 魔法に精通した魔法使いは、その長所や短所も熟知していた。

 指に嵌めている指輪を、摘まむようにして軽く擦る。すると、前面に謎の衝撃波が発生。上段右上から下段左脇へと剣筋の弧を描く――剣術で言うところの袈裟(けさ)切りを振るっていたオレは、刃が相手の左肩に届く寸前のところで大きく弾き飛ばされた。


「うおおぉぉっ!?」

 その衝撃に反して身体的ダメージはないに等しく、ただせっかく詰めた間合いが離されてしまった。

(つまり、これは……) 

「詠唱時間を稼ぐマジックアイテムさ!」

(クッソ! ズルだろ、それ! こっちは剣一本で――)


 そうして放たれたのは火魔法。


 ファイアボールとでもいうのだろうか、詠唱を終えた魔法使いの杖から火球が(ほとばし)る。

 サイズにしておよそ直径30センチメートル。バスケットボールよりも大きく、直撃すれば大火傷を負いそうだ。

「ふぉ!?」

 飛来した火球にビビったオレは、反射的に体が動いたお陰で運よくそれをかわす。

 外れた魔法は後方の地面に着弾し火柱が上がった。

 数十メートルは離れているはずなのに、熱波がオレのところまで届く。

「チッ、外れたか……運のいい……」

(この野郎! 手加減するって話はどうしたよ!?)

 わざわざ決闘の場を設けたことといい、オレが魔法を軽視しているとも取れる失言をしたことについて、魔法使いは内心業腹なのかもしれない。


(……というか、今更だけどあれだな。人間に斬り掛かるっていうのは、想像以上に怖いな……)

 模擬試合とはいえ、人間を相手に剣を向けることにはやはり抵抗があり、暴力を潜在的に忌避している。

 現に初手の一振りを躊躇(ちゅうちょ)したせいで、相手に反撃の猶予を与えてしまった。

 魔法使いと目が合った瞬間、胸が早鐘を打ち剣を振り下ろせなくなってしまったのだった。

 とはいえ、だからといって、オレが本気で攻撃すれば、大鬼の頭蓋を砕いたときの二の舞になってしまうからして、その辺の力加減が非常に難しい。

(もしも、あんな風に人間を殺めてしまったらと思うとゾッとする……!)


「ん――おおっ!?」

 オレの逡巡を好機と捉えた魔法使いが、容赦なく追撃の魔法を放つ。


 スキル発動〈ヘパイストゥスの鍛造〉


 オレは慌てて武器強化のスキルを長剣に使用する。

 殺意マシマシで飛んで来た火球〈ファイアボール練度Ⅱ〉を観察眼(サーチ)スキルで捕捉。

 長剣を正眼に構えると、頭上から縦に真っ直ぐ振り下ろす。ゲーム――いやさ剣術で言うところの唐竹割(からたけわ)りを繰り出し、強力な魔法を両断した。


『……き、切った!?』


『おぉ……まさか魔法を……!』


「ゴホッ……!」

 迸る火の粉によって前髪の毛先が焦げ、ツンとした嫌な臭いが鼻腔を突いた。

 どうやら長剣の刃が潰されていても、思いっ切り振り下ろせば一応は切れるようだ。

(……でも、炎が分散して危ないし、あまりやらない方がよさそうだ)

「ほう……なるほどな、口先だけではないということか…………ならば! もう遠慮はいらないな!」


 自慢の魔法が防がれたことで、いよいよ魔法使いの闘争心に火が付いた。

「――――、――、――――、――――、――、――――!」

(なにアレ!? 気持ち悪っ!)

 絶え間なく口を動かし、ちょっと何言ってるか分からないほどの早口で呪文を詠唱すると、連続で火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉を放つ。

「くっ! このっ! うぉりゃあッ!」

 オレも負けじと長剣を振り回し、これらに対処する。

 刃側面の平らな部分で、野球の千本ノックよろしく次々と打ち返す。

 これを魔法使いに向かって跳ね返してやれたらよかったのだが、どうやら記憶を失う以前のオレは、野球少年ではなかったらしい。


『おおっ! また打ち返した!』


『今度は大きいぞ!』


『すげぇ! あいつやるじゃないか!』


 オレが火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉を打ち返す度、野球場に詰め掛ける客のように観衆(ギャラリー)から歓声が上がる。

(どの道、この(バット)とあの魔法(ボール)じゃ、上手くコントロールできないだろう……うっかり観客に打ち返さないだけマシか)

 体力も気力も十分。やはりオレには魔法に対抗し得る身体能力があるのだと、この試験もとい決闘を通じて確信した。


(けど、ああ……まさか嘘だろ……ちくしょう、なんてこった……これは、かつてないほどのピンチだぞ……!)

 火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉を1000本どころか10000本だってできそうなくらい好調なのだが、体力以外の面で問題が生じる。


 それはオレの貧相な装備の耐久性についてだ。

 繰り返し火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉を弾いたことにより、赤熱に染まっている長剣は、スキルにより強化しているのでまだいい。問題は、両断したときほどではないにしろ、飛び散る火の粉によって焦げていく衣服だ。

 

 最悪このまま戦闘が長引けば、オレの衣服は全焼し局部を揺らしながら決闘に臨む事態に陥りかねない。

 そんなギャグ漫画もかくや、いきなり劇中のジャンルが変わるような珍事は何としてでも避けたい!

(というかこれ借り物の服だし! ネコミミメイドさんに叱られてしまう!)


 脳内でステータス画面を開き、スキル項目の中から防具の強化に関するものがないかざっと探してみる。

(防御力強化は――は違うな。火耐性付与……いや、次――再生能力向上? ――クソッ! どれも効果があるのは直接肉体にのみか……! ええい! スキルの数が多すぎる!)

 タブを高速でスクロールし、数多のスキルの中ら目当てのものを掘り当てようと探し続ける。

 すると、焦るオレを急かすように火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉が飛んで来て、検索の邪魔をした。

(こんにゃろう馬鹿の一つ覚えみたいに同じ攻撃ばかり繰り返しやがって!)

 膨大な量のスキルに埋もれ、窒息しそうになっているオレは、即断即決で魔法を繰り出す敵を恨めしく思う。

 通算6つ目の火球〈ファイアボール練度Ⅲ〉を(しの)ぐも、魔法使いの追撃は留まるところを知らない。


(……ひょっとして他に魔法が使えないのか? いや、それともこの魔法こそが最適解だから連発してるのか?)

 ファンタジー調の創作物に馴染みのある者ならば、ややもすると火球の魔法は、初歩的で下級であると捉えがちだが、いざそれを目の当たりにすると印象がまるで違う。

 リーチの優位性はもちろん、見た目の派手さに加え、着弾時に炸裂する轟音(ごうおん)と熱波は対象の恐怖心を嫌でも駆り立てる。並みの戦士(ウォリアー)なら、これを連発するだけで完封できるはずだ。

 実際、火を怖れる生物の本能が、じわじわとオレの戦意を削っていった。

 属性といった遊び心を無視すれば、氷のつぶてを投げたり、風の刃を振るったりするより、よっぽど強力で対人戦においてかなり有効に思える。

(自分で例を挙げておいてなんだが……氷のつぶてとか、よく考えたらただの物理攻撃だし投石と変わらん。まあ、投石は投石で強力なわけだが……風の刃に至っては意味不明だ)

 とにもかくにも、このつるべ打ちから抜け出し反撃の糸口を掴まなければ。


 オド総量云々の件があるくらいだし、魔法の使用も有限だろうが、全裸になるリスクを負ってまで根競べをするつもりはない!

ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます

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