ep.25 魔法適正検査
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです
「えー……じゃあ、次の人どぞー」
役所然り、病院然り、こういった事柄は長い時間待たされるのが常だ。
だから、魔法適性検査にしても、夕方まで待たされることを覚悟して列に並んでいたのだが、予想に反してオレの順番はすぐにやってきた。
当初、試験と聞いて予備知識のないオレは身構えていた。
けれど、先に検査を受けていた人の様子を見るに、どうやら簡単に済むもののようだ。
「――つーわけで、この水晶に手ぇ乗せてくださいねぇ(アァ、ツマンネ)」
気怠るそうな担当員が示す特殊な水晶玉は、個人が内包するオドとやらに反応して光り輝く代物で、その光量により魔法の適性を測るとのこと。
推測するに、オドとは魔法を行使する際に必要になる精神力のことで、いわばビデオゲームにおけるMPのようなものではないだろうか。
(精神力とは何か、という疑問は脇に退けておく……)
ちなみに、オド測定の明確な基準値及び合格ラインは不明。
どこかに得点が表示されるわけでも、試験官が検査結果を記入する様子もない。
これでは試験官の裁量によって、合否が左右されてしまいそうだ。
(ルールが緩いのは世相を現れか?)
オレが元々いた世界も、一昔前まではサラリーマンが仕事中に平気でタバコを吸っていたり、営業周りの途中で堂々とサボっていたりと、おおらかな時代があったらしい。
厳格なルールが敷かれるのは、時代を経て社会が十分に成熟した後であって、この世界ではこのくらいの緩さが普通なのかもしれない。
(いや、それとも……)
この空間が局地的に異例という線も考えられる。
右を見れば、血の気の多そうな半裸のむくつけ。
左を見れば、ボロを纏い呪文をつぶやく怪し気な隠者。
些細なことから喧嘩になり、殴り合いを始める輩もいる。
いずれも暴力の臭いを漂わせ、脛に傷がありそうな奴らばかり。
冒険者組合など名ばかりで、その実まるで凶悪犯の収容所のようである。
窓口が広くゴロツキ紛いの手合が集まる、という老執事の言葉の信憑性が増す――と思いきや、実際はまるで違う。
右を見れば、防御力の概念に挑戦する露出過多の鎧を着た女戦士。
左を見れば、とんがり帽子が歩いているような童女。
明日を夢見る少年剣士に、先輩風を吹かすかませ犬こと軽薄男。
(異様っちゃあ異様だけど、なんだか想像してたものと違うなぁ)
魔法が実現されている世界だから、見た目の逞しさと強さが必ずしも比例するわけではないのだろう。
筋骨隆々の大男顔負けの怪力を秘めているオレが、何よりの証拠だ。
「――あのー、ちゃんとやってくれませんかね…………(チッ、オワンネェンダケド)」
ふいにオレの適正検査をしている、気怠そうな担当員から、試験に集中するように批難される。
確かにオレの意識は周囲へ逸れていたが、事前説明ではただ水晶玉に掌を乗せろと言われただけで、やれ呪文を唱えろとか、やれ気合を籠めろといった特別な手順はなかったはずだ。
「いや、だって水晶玉光らねぇし……これ、どゆこと?」
「いや、オレに訊かれても……」
オレの番に限って、水晶玉はなぜだかまったく反応しない。
「オレ何かまずいことしちゃいました?」
「あー、ひょっとして故障かな? こーれ、けっこうお高いんスよねぇ……」
動作不順をオレに擦り付けようとしている感じがするけど、責任の所在はオレにはないはずだ……たぶん。
気怠そうな担当員は、オレに代わり水晶玉に掌を乗せて作動を試みる。
するとオレが掌を乗せていたときは、うんともすんともいわなかった水晶がにわかに光を発した、
「あぁ、ちゃんと光りますねぇ……(ハー、メンドクセ)……おーい――」
気怠そうな担当員は重い腰を上げ、近くに居る同僚のところへ行くと、こちらをチラチラと見ながら何事かを相談している。
(まるで、やる気のない店員みたいだ……レジの不具合に直面して、バイトリーダーにヘルプを求めて……いや、他人のことをとやかく言える立場じゃないな)
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