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ep.24 冒険者組合~かませ犬

拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら 幸いです

 さて、そういった経緯があって、オレは冒険者の資格試験を受けるべく、冒険者組合所なるものの待合室にいる。



 冒険者に悪印象を持つ老執事と、オレの身を案じたマティルダからは猛反対されたが、一度付いた好奇心の火は消せない。

 やっぱり男として自分の食い扶持くらいは稼ぎたいし、何より記憶を失くして空っぽの人生に意義が欲しい。

 それに屋敷に閉じ籠ってぼんやり過ごすより、能動的に動き脳に刺激を与えたほうが記憶が蘇る可能性が高まると思うのだ。


「よう、お前だろ? 男爵のとこに転がり込んでる穀潰しってぇのは。上手くやったもんだなあ、おい」

「……そういう、お前は?」

 歳の頃はオレと同じくらいだろう。

 ひょろりとした体系と日に焼けた小麦色肌。

 くすんだ茶色い蓬髪(ほうはつ)

 他人を見下しているような座った目つきに締まりのない口元。

 ひと昔前のギャル男みたいな風貌の、見るからに軽薄そうな男が、いきなり話し掛けてきた。

「ハハッ、ずばり的中だ! この俺様を知らねえのが、なによりの証拠よ。こんなド田舎じゃ、とにかく余所者は目立つ。噂が広まるなんざあっという間だ。そいつが、たとえ冴えない引き籠りだとしてもな」

「ひょっとして、オレはケンカを売られているのか?」

 初対面なのに、ひどい言われようだ。

 しかし、投げ付けられた暴言は事実に基づいており、真っ向から反論できないのが痛いところ。

「おっと、悪ぃ、悪ぃ。根が正直なもんでよ。思ったことを、つい口にしちまう性質(たち)なんだなぁ、これが」

 軽薄そうな男は非礼を詫びているようで、逆に煽っているような態度を取っている。   

 先ほど、視界の隅でこいつと話していた人が、表情を引きつらせていた理由がわかった気がした。


「ははぁ、なるほど。お前、友だちいないだろ」

 オレは目の前の非礼者に倣い、遠慮会釈なく本音を口にする……根が正直なもんで。

「んなっ! バババ、バカ言うなっ! 俺様くらいになるとアレよ、ほら! あまりのオーラに凡人は近寄り難いっつーか! む、むしろ毎日忙し過ぎて没交渉っつーか!」

 オレの指摘が図星だったようで、軽薄そうな男は口角泡を飛ばす勢いで、苦しい自己弁護をする。

 どうやら根が正直というのは本当らしい。


「俺ぁ剣一本で成り上がり、いつかビッグになる男よ。こんなド田舎で埋もれてる奴らと慣れ合うつもりなねぇ……そうだとも農家の三男坊で終われるかよ……!」

 悲壮感に似た決意を滲ませる軽薄そうな男は、片田舎の少年が背負うには不釣り合いなほど、立派な意匠が施された剣を鞘から抜いた。

 町中の、それも建物内で武器を構えるという非常識な行動に、周囲から批難の目が浴びせられる。

 だけど、誰にも直接注意されないあたり、軽薄男は町人からどこか見限られている感じがした。

(きっと、こいつの問題行動は、今に始まったことじゃないんだろうな……あまり関わり合いになりたくない手合いだ)

「どうよコレ! うちの倉で眠ってたんだぜ! これから伝説となる俺様に相応しい、スンゲー名刀だろ!」

「そうだな。じゃあ頑張れよ」

「まあ、待てよ」

 オレは周囲に倣い、一人で勝手に盛り上がっている、おめでたい奴を放って立ち去ろうとするも、あえなく阻止される。

「フフン、お前がどうしてもってんなら、特別に未来の英雄たる俺様の仲間(パーティ)に加えてやってもいいんだぜ? 少しは見込みありそうだし、荷物持ちくらいなら考えてやらんこともねぇぞ?」


「ひとついいか」

 壊滅的なセールストークとか、歪んだ仲間の定義とか、ツッコミどころは多々あれど、いちいちそれを説く義理もなければまず面倒なので、とりあえず一番気になっている点を指摘する。

(こいつの奇行を咎めない皆も、きっとこういう気持ちなんだろな……)

「それ観賞用だぞ」

 密かに使用していたオレの鑑定スキルによれば、軽薄男が掲げるその剣は模造刀であり刃の部分が潰されている。

 主なスペックは――


 筋力補正D 斬撃+1 刺突+2 打撃+3 重量C 付与:ナマクラ 付与:魅力+


 ――といったところか。

 攻撃力に関して素手や木刀よりマシだが、無駄な装飾もあって扱いづらく剣としては落第点。ガラクタといって差し支えない。


「――ほへっ? ………………マジで?」

「ああ、マジだ」

「準備が整ったので、これより冒険者の採用試験を始めます」

 放心状態の軽薄そうな男はさておき、所員の案内に従い、オレは幾人の受験者と共に待合室から広間に通される。



「試験は、まず小魔力(オド)を調べる検査をし、次に大魔力(マナ)も用いて対象に魔法を使用する実技を行っていただきます」

(オド? マナ? 何のことだ?)

 試験官の口から出た聞きなれない単語にオレは困惑する。

 横目で周囲を伺うも、受験者の中に疑問に感じている者はいないようだ。

 この世界における一般常識なのだとすると、迂闊(うかつ)に質問すれば無知を晒すことになる。試験を始める前から自分の評価を下げるのは避けたいところ……。

(まあ、前の人に倣ってやれば大丈夫だろ)



 オレは内心の焦りを面に出さぬよう心掛けながら、さりげなく受験者の後列に並んだ。

ご高覧いただき ありがとうございました 次回へ続きます

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