ep.16 事後紹介~マティルダ嬢
拙い文章ではありますが あなたの心に触れられたら幸いです
「あらためて、お礼を申し上げますわ」
少女はそう言ってかがむと、西洋のお辞儀カーテシーのような所作で一礼する。
この世界における礼儀作法など知りもしないオレだけど、その雰囲気から感謝の気持ちはしっかりと伝わった。
「私は――――、――、――――是非とも、あなた様のお名前をお聞かせください」
少女のフルネームは高い身分の者に相応しく、舌を噛みかねないほど長ったらしい。
どうも、オレが元々居た世界で言うところの西洋言語の発音に近く、あまり聞き馴染みがない発音だったので、一度聞いたくらいでは覚えられなかった。
先ほど上空で見た地上の街並みを思い返す。仮に、この世界が西洋の中世になぞらえて成り立っているのなら、現地人である彼女らの目には、東洋人であるオレが奇異に写るのではなかろうか。
――人類史は迫害の歴史。
オレは自分が異邦人として、いわれのない差別を受ける可能性を危惧する。
(そうならないためには、ファーストインプレッションが重要だ)
「よろしく。ま、とぃルゥ……ダ? ……マティ……ん”ん”っ! マティルダ。オレは――」
少女の難解な名前の中で、かろうじて聞き取れた部分を確かめるように復唱し挨拶を返す。
続けて自己紹介をしようとし、オレには名乗れる名前がないことを思い出した。
「まぁ……! まぁ、まあ!」
(ん? ……ああ、そうか。まずったかな……)
少女改めマティルダの妙な反応に、オレは初対面でありながら、いきなり彼女をファーストネームで呼んでしまった無礼に気づく。
苗字が先で名前が後ろに付く。オレの生まれ故郷の固定観念が出てしまったがゆえのミステイクだ。
「生まれはどちら? 恋人はいるのかしら? それから、それから――!」
マティルダはオレの手を取ると、前のめりになって矢継ぎ早に質問を浴びせてくる。
そこにはオレが恐れていたマイナスの感情は見られない。
「ええと、なんて言ったらいいか……」
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