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もう1つの決着

 校舎の外で、空亡との戦いが終わった頃、校舎内の戦いも終わりを迎えようとしていた。


 死を偽装し、暗躍していた里田 幸夫(サトダ ユキオ)


 彼と偶然、邂逅(かいこう)し、戦闘となった達郎は追い込まれていたかに見えたが……。


「術師としての才能が無かったから、事務方にまわったと聞いていたのだが……」


 達郎が持つ呪符から伸びた光が鞭の様に幸夫に絡みつき、締め上げていた。


「僕の術師の才能は対象を殺傷する性質が強すぎて、人妖機関の術師には向いていない。そう義父(とう)さん……。いえ、師匠に言われました。対峙する人妖をことごとく、殺傷していては禍根ばかり残してしまうと」


 光の鞭の締め付ける力が強いのか、話の途中で幸夫は吐血する。


「コレを使うときは、相手を殺す覚悟をしたとき。自分でそう、決めていました。なのに、なんで……」


 この術は光の鞭ではなく、刃を伸ばすというもの。


 巻きつかれた時点で幸夫の身体は切断されているはずだったのだが、鱗粉が刃と幸夫の間に入りソレを阻止していた。


「なんで邪魔するんだよ……。姉貴」


「だめだ……。達郎、それだけば絶対にダメだ。お前を人殺しになんてできない」


 夢子の連絡を受けて駆けつけたレイコが、(すんで)のところで、幸夫の殺害を止めていた。


「コイツらが新矢さんを……。いや、新矢さんだけじゃない、姉さんだって罠にはめられて殺されたんだ! コイツらのせいで、どれだけの人があたり前の幸せを奪われたと……」


「タツ……。わかった、ならアタイが殺る。タツを人殺しにするわけにはいかない。なら、アタイがコイツを殺す」


「何言ってんだ、姉貴!」


「タツが苦しんでいる時、アタイは何もしてやれなかった。なら、せめて最後の帳尻合わせぐらいはアタイがやらないと……。ゴメンな、タツ。お前がそんなになるまで、何もしてやれなくって」


 レイコの鱗粉が幸夫の首に巻き付くのが目視できる。


「姉貴?!」


 達郎は呪符を手放し、レイコに抱きつく。


「お願いだからやめてくれ……。俺なんかのために、そんな事……」


「『俺なんか』なんて言うな。お前はアタイの大切な、唯一無二の弟なんだ。お前のためだったら、アタイはなんだってするし、何にだってなってやる」


「もういい、もういいんだ! 姉貴まで失ったら俺は……」


 抱き合う姉と弟。


 そのそばで、幸夫は力無く座り込み呆然としていた。


「ありがとう、夢子。教えてくれて」


 一部始終を見守っていた夢子に、レイカが話しかける。


「別に、礼を言われるほどの事じゃないわよ。もし、間に合わなかったら、アタシが止めるつもりだったけど」


「そうね、間に合わなければね。でもやっぱり、レイコが止めるのが正解だったから、間に合って良かったわ」


 妹と弟の抱き合う姿を見て、レイカは微笑む。


「タツはなぁ、凄く優しい奴なんだ。昔、タツをイジメてた奴をぶっ飛ばした時、コイツは真っ先にそのイジメてた奴のことを気づかったんだ。そんなタツに殺意を向けられたって事がどういう意味か。拾った命と時間で考えるんだな」


 レイコは超人機関の男に、言い放つ。




『こうしてチュパカブラさんの身体で歩いてみてわかったんですけど、結構大きいんですね』


「なに、エロガキ。そんな事が気になるの?」


『いえいえ。僕がって言うより、これから会う人がそういうの、わりと気にするんで』


 チュパカブラの身体に寄生する形のビホルダー。


 2人は険悪なムードでとある場所を目指していた。


 程なくして、古いが手入れされた屋敷が見えてくると、そこが目的地であるとビホルダーが告げる。


『お母さん、戻りました』


「お母さん?」


 ビホルダーの発言に疑問符が湧くチュパカブラ。


 なんの返事も無い屋敷に入っていくと、美人姉妹なのだが痩せた、不健康そうな女が1人、奥の部屋に居た。


「失敗したのね。ほんと、役立たず。それになに? その身体。私へのあてつけか何か?」


 チュパカブラを睨みつけると女はキツイ言葉を投げかける。


『すいません……』


 うつむいて謝罪するビホルダー。


 女の態度に嫌悪感を覚えたチュパカブラだったが、その女の影を見てギョッ、となる。


 そもそも影などわからなそうな薄暗い部屋の中で、女の影だけはハッキリとしていた。


 その影には無数の目が見開いており、チュパカブラを凝視していた。


 思わず悲鳴が漏れそうになったが、ビホルダーが右手を動かしてその口を(ふさ)ぐ。


「ふん」


 女はそんな仕草を気にもとめず、自分の影の目玉を1つ、指差す。


 するとその目玉が影から飛び出し、人の形に変化していき、最後にビホルダーの少年の姿になる。


『やぁ、ボク。こんにちわ』


「おはよう、はじめしてボク。これからよろしくね」


 ビホルダー同士で不思議な挨拶を交わす。


「なに?! 貴方ってこうやって産まれるの?」


『ええ、まぁ……』


 部屋を出た2人の会話は続く。


『彼女の……。お母さんの名前は百々目鬼(ドドメキ)。空亡の召喚に失敗してできた、出来損ないです。そして僕はその出来損ないの子供、ビホルダー。僕達、親子は父、怪魔の野心の犠牲になってこんな妖になりました。そんな事もあって、お母さんは父とこの世界を恨んでいるんです』


「世界を滅ぼしたいのは、あの女って事ね。それで貴方が怪魔の息子? アイツ霊体クローン以外にも、こんな事をしてたわけ?!」


『ええ、まぁ』


 手短に肯定するビホルダー。


 そして彼はこう続ける。


『僕の最終目的は父である蘭堂 怪魔(ランドウ カイマ)の抹殺です。必ずあの男の本体を見つけ出して、始末します』


 ビホルダーがその目的をチュパカブラに明かす。

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