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思惑

 ヴァンパイアが持つ吸収能力。


 吸血が主流となった現在、この力を全く使わないヴァンパイアも多い。


 静音や走司が使う妖力でできたコウモリはこの能力を具現化したもので、対象の持つエネルギーを吸収する。


「私、言ったわよねぇ。迎えに行くから待っていろ。そこから一歩も動くなって」


 戦場に到着するやいなや、麟太郎に詰め寄る静音。


「はい、確かにそうおっしゃってました。間違いありませ?!」


 言い終わる前に、麟太郎に飛びかかって締め上げる静音。


「わかっていてどうしてウロウロ動き回るの!」


 戦場のど真ん中で雄叫びをあげる静音を、誰も止められなかった。




 エリスの父、走司の一族である条牙咲家は『ヴァンパイアは秩序を重んじる妖』を体現したような家系だ。


 古くから人妖機関に対しても協力的で、一族の多くが職員として働いている。


 特に一族の中でも突出した能力を持つ静音は早い段階で最精鋭に抜擢(ばってき)され、長く活躍している。




「さあ、やるわよ。麟太郎」


 そう言って彼に手を差し出す静音。


「えっ?! 嫌です」


 一瞬の間を置いたあと、差し出した手で麟太郎の顔面を鷲掴みにして宙吊りにする静音。


「ただでさえ引っ掻き回しているのに、拒否権があると思うなよ!!」


 麟太郎の腕に咬み跡を残して、麟太郎を開放する。


「私がアイツ(空亡)からエネルギーを奪ってアンタ(麟太郎)に送るから、アンタは対式を使う事だけを考えて!」


 静音が指をパチンと鳴らすと、さらに大量のコウモリが飛び立ち、空亡を包み込む。


 それを見て麟太郎は深いため息をつくと、仕方なさそうに対式で空亡を撃ち抜く。


「なんだ?! あんな切り札があったのか!」


 一連のやり取りを、横目で見ていた蒼炎が声を上げる。


「しかし、これで終わる相手でしょうか……」


「まぁな。最後まで油断できねえってのはそのとおりだ」


 蒼水の意見に同意する蒼炎。


 その時、戦場を囲む様に、6つの光の柱が天に伸び、それを結ぶ六芒星が現れる。




「ワリィな、嬢ちゃん達。でかい口たたいてこのザマとは情けねぇ」


「気にすんなって。想定外の事ってのはあるもんだぜ」


 最後の石板の置かれた戦場にて、申し訳なさそうに言う元蔵に、桜が返す。


「何はともあれ、これで石板は全て由利歌さんの影響下に置かれたわけね」


「これで空亡をやっつけられるの?」


 光の柱を見上げる春香に直が尋ねる。


「それはまだ、なんとも言えないと思うわ。空亡を制御する仕組み自体あと付けな訳で、空亡本体があまりにも反発する様な事をやろうとすると、制御できなくなったりする恐れがあるわ」


 深完が落ち着いた口調で解説する。


「姐さんの事だから、上手くやってくれると思うんだが……」


 未知の敵、空亡をどこまで御せるか。


 元蔵も楽観視はできないようだ。




「これは……」


「ああ、封印式の様だな。ババァがコイツの制御権を得て、封印しているんだろ」


 いつもの調子の蒼炎。


 横で見ている蒼水は、苦笑するしかなかった。


(ビホルダーめ、余計な事をしてくれたおかげで、空亡の晴れ舞台が台無しじゃあないか)


 物陰から様子を伺っていた人物がポツリと呟く。


(せめて最後くらいは華々しく散ってくれ)


 その人物は呪符を1枚取り出し何やら念ずると、空亡の七芒星に囲まれた何も無い空間から何かが破裂する様な音が聞こえ、巨大な目玉が現れる。


「なんだ?! 戦闘続行か?」


 刀を構えながら霧香が叫ぶ。


「これは……?! まずい、何か危険な術式が発動するぞ!」


 注意を促す蒼炎。


 空亡はこれまで以上に閃光たヒヒイロガネで暴れ始める。


 先程までと異なるのは、目玉が現れ、それが徐々に溶けていってるという所だ。


「あの目玉が溶けきったときに良からぬことが起きる。エネルギーの流れで、そう感じ取れる」


 蒼炎の言葉を受けて、そこにいた全員に緊張が走る。


(流刃が仕込んだ妖専用の絶滅陣。これで妖だけでも減らせれば)


白光・対破(びゃっこう・たいは)!」


 麟太郎が持てる全ての力を使い、消滅させようとするが、まだまだ時間がかかる。


「私がやる!」


 その声の主はソラだった。


 戦場に現れた少女は空亡に向かってジャンプすると、その姿はかき消え、代わりに何も無い空間が割れて巨大な目玉が現れる。


「今度は守る。走矢と走矢の大切な人達を!」


 ソラは術式をかき消すように力を膨張させ、崩れ落ちる。




 手のひらに乗るサイズの透明な箱。


 その中に流刃の怨念のこもった空亡が封じ込められていた。


 その傍らに、横たわるソラの姿があった。


「良かった……今度は誰かの役にたてたんだね。わたし……」


 絶滅陣の効果を受け、ソラの肉体は消滅しかけていた。


「ソラちゃん……」


 彼女が過去の罪滅ぼしをしようとしたのはわかっていた。


 前世からの友人であったソラ。


 彼女の姿が少しずつ崩れていくと、かわりに前世の記憶が呼び起こされてくる。


 友達だった目玉の化物は、走助の魂が輪廻の輪に帰るまでずっと傍らにいて、時に相談に乗り、時に彼を励ました。


「ずっとそばにいてくれたんだね。ソラちゃん……」


 ソラを見つめる走矢の周りには、いつもの桜達や収容組の面々、母や玲奈達がいた。


「良かったね、走矢……。友達、いっぱいできて……」


 かつて、走助が願った、『友達になって』という言葉を思い出しながら、ソラは消滅していった。


「ソラちゃん?!」


 消滅したソラを抱きかかえたままの姿の走矢。


「うぇ〜ん、私がしんじゃったよ〜」


 突然背後から聞こえたその声に一同はフリーズし、振り返る。


 そこにたった今、消滅したはずのソラが立っていた。


「私達がさんざん苦労させられた、本体を作る能力ですね……」


 ため息まじりに、蒼水が言う。




「何から何まで失敗か。やはり流刃や怪魔などに任せるべきではなかったな……」


 気配を消して、物陰から一部始終を見ていた人物は、その場から立ち去ろうとしていた。


「走矢様、またいずれ」


 最後にそう言い残して。 

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