じゃあ、作ろ
# 第8話「じゃあ、作ろ」
朝、目がさめると、いずみはすぐに起きた。
「ノア! 今日、いずみの誕生日だよ」
「はい。5歳になりましたね」
「そう。もう5歳!」
いずみは手をひらいて、ノアに見せた。
「もうお姉さんだよね?」
「昨日より1日、大きくなりました」
「そうじゃないよ。もうお姉さんなの」
「そうですか」
「そうなの」
いずみはベッドから降りた。
「今日はケーキがあるんだよ」
「はい」
「プレゼントもあるよ」
「プレゼントの内容は知りません」
「いずみも知らないよ」
「では、同じですね」
いずみは笑った。
*
夕方、父が帰ってきた。
「ただいまー」
「パパ!」
いずみが玄関へ走っていく。
「いずみ、ちょっと外においで」
「なに?」
「いいから、いいから」
父について外へ出る。
ノアもついていった。
玄関の前に、補助輪の付いた小さな自転車があった。
「わあ!」
いずみが走っていく。
「5歳のお誕生日、おめでとう」
「乗っていい?」
「いいよ。でも、今日はちょっとだけな」
いずみはさっそく自転車にまたがった。
父が後ろを持つ。
「ちゃんと前見て」
「見てる!」
いずみがペダルを踏む。
自転車がゆっくり進んだ。
「ノア、見て!」
「見ています」
「ちゃんと見て!」
「ずっと見ています」
父が笑った。
「ノアも見てるけど、パパも見てるぞ」
「うん!」
*
夜になって、ケーキにろうそくを立てた。
5本。
母が火をつける。
「電気消すよー」
部屋が暗くなった。
小さな火が、いずみの顔を照らしている。
「ハッピーバースデー、トゥーユー」
父と母が歌った。
いずみも途中から歌った。
ノアは歌わなかった。
じっと見ていた。
歌が終わる。
「いずみ、ふーってして」
「うん!」
いずみが息を吸った。
ふーっ。
ろうそくの火が消えた。
「おめでとう!」
部屋が明るくなる。
「もう5歳かあ。大きくなったね」
母が言った。
「もうお姉さんだよ」
いずみが得意そうに答えた。
ノアが言った。
「どうして火を消すんですか」
「たんじょう日だからだよ」
「誕生日には、火を消すんですか」
「そうだよ」
「なぜですか」
いずみは考えた。
「……ケーキ食べるから」
「火を消さないと食べられませんか」
「食べられないよ」
「そうですか」
「ノアのたんじょう日、いつ?」
いずみはケーキを食べながら聞いた。
ノアは少し黙った。
「ありません」
「ないの?」
「はい」
いずみはフォークを置いた。
「じゃあ、作ろ」
「作る?」
「うん」
「誕生日をですか」
「うん」
いずみは少し考えた。
「ノアがうちに来た日」
ノアは何も言わなかった。
「そこ、たんじょう日にしよう」
「……はい」
「ケーキも食べようね」
「私は食べられません」
「じゃあ、いずみが食べる」
「私の誕生日ですが……」
「いいじゃん」
ノアは少し考えた。
「……いいです」
いずみは笑った。




