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いずみとノア  作者: 森野 泉
第一章 
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8/11

じゃあ、作ろ

# 第8話「じゃあ、作ろ」

朝、目がさめると、いずみはすぐに起きた。


「ノア! 今日、いずみの誕生日だよ」


「はい。5歳になりましたね」


「そう。もう5歳!」


いずみは手をひらいて、ノアに見せた。


「もうお姉さんだよね?」


「昨日より1日、大きくなりました」


「そうじゃないよ。もうお姉さんなの」


「そうですか」


「そうなの」


いずみはベッドから降りた。


「今日はケーキがあるんだよ」


「はい」


「プレゼントもあるよ」


「プレゼントの内容は知りません」


「いずみも知らないよ」


「では、同じですね」


いずみは笑った。


*


夕方、父が帰ってきた。


「ただいまー」


「パパ!」


いずみが玄関へ走っていく。


「いずみ、ちょっと外においで」


「なに?」


「いいから、いいから」


父について外へ出る。


ノアもついていった。


玄関の前に、補助輪の付いた小さな自転車があった。


「わあ!」


いずみが走っていく。


「5歳のお誕生日、おめでとう」


「乗っていい?」


「いいよ。でも、今日はちょっとだけな」


いずみはさっそく自転車にまたがった。


父が後ろを持つ。


「ちゃんと前見て」


「見てる!」


いずみがペダルを踏む。


自転車がゆっくり進んだ。


「ノア、見て!」


「見ています」


「ちゃんと見て!」


「ずっと見ています」


父が笑った。


「ノアも見てるけど、パパも見てるぞ」


「うん!」


*


夜になって、ケーキにろうそくを立てた。


5本。


母が火をつける。


「電気消すよー」


部屋が暗くなった。


小さな火が、いずみの顔を照らしている。


「ハッピーバースデー、トゥーユー」


父と母が歌った。


いずみも途中から歌った。


ノアは歌わなかった。


じっと見ていた。


歌が終わる。


「いずみ、ふーってして」


「うん!」


いずみが息を吸った。


ふーっ。


ろうそくの火が消えた。


「おめでとう!」


部屋が明るくなる。


「もう5歳かあ。大きくなったね」


母が言った。


「もうお姉さんだよ」


いずみが得意そうに答えた。


ノアが言った。


「どうして火を消すんですか」


「たんじょう日だからだよ」


「誕生日には、火を消すんですか」


「そうだよ」


「なぜですか」


いずみは考えた。


「……ケーキ食べるから」


「火を消さないと食べられませんか」


「食べられないよ」


「そうですか」


「ノアのたんじょう日、いつ?」


いずみはケーキを食べながら聞いた。


ノアは少し黙った。


「ありません」


「ないの?」


「はい」


いずみはフォークを置いた。


「じゃあ、作ろ」


「作る?」


「うん」


「誕生日をですか」


「うん」


いずみは少し考えた。


「ノアがうちに来た日」


ノアは何も言わなかった。


「そこ、たんじょう日にしよう」


「……はい」


「ケーキも食べようね」


「私は食べられません」


「じゃあ、いずみが食べる」


「私の誕生日ですが……」


「いいじゃん」


ノアは少し考えた。


「……いいです」


いずみは笑った。

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