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32 work 5-1 Bullet rain

フルスロットルで前進する中、ドローンの航空機が無数にアタシらの船を追い越していく。


《現在時、9時45分。フェクトより。交戦開始エンゲージ。》

《旗艦ティマイオス、マザーより。時速10ノットで前進中。交戦開始エンゲージ。》

「アゲートよりルチレート隊、交戦開始エンゲージ。35ノットで前進中。」


フェクトの通信を皮切りに、一斉に全員が戦闘態勢に入った。


「旗艦ったって、アタシらとで2隻だけだろがい。それに軍事行動でもなくね?この通信要る?」

《いい加減、黙って戦いなさい!いつまでヘソ曲げてる!》

「へいへいすんませんね!」

無線で茶々を入れたら怒鳴られた。後付けしたスマートフォンのモニターを起動する。


「ケッ、気の小さい魔女だこって。」

「アンタも大概よ…しっかり頼むわ。」

隣にいるシスナが苦笑いしてアタシの握る舵の手を重ねた。

「サーセンね。分かっちゃいると思うけどさ…。」


アタシは無線機で共有されてる画面に目をやった。


既に前方3方向から無人のクアッドコプターが3台。爆弾を抱えて飛んできている。

「最近の海戦って、結構熾烈なんよね!全員掴まれ!」


アタシは船の舵を右に全開にした。


「ティマイオスへ、クアッドコプター3台がアタシらを狙って飛翔中!面舵一杯!回避行動!」

《嘘!?どこから!?》

リーシャが動揺している。

「水中からさ!海中のブイの中に仕込まれてる!真後ろにつけさせる!シスナ、迎撃お願い!」

「散弾銃用意!」

シスナが操舵室から出て、床に置いてある散弾銃を取り出した。ミランダとレイチェルに投げて手渡し、コッキングして船尾に着く。

「撃て!近寄らせるな!」

《タンジェ、アメスの船の上についてて!観測しっかり!》


無数の銃声を後目に、船が波で上下動する。


(懐かしいもんだ。こういう時は必ず前から挟み撃ちが来る。追い込み漁なんて珍しくもない。)


目を凝らしてタンジェと共有しているドローンの空撮映像を見る。

無数に白い丸の物体が前方に浮き上がってきた。

「もういっぺん!みんなつかまれ!面舵一杯!反転する!」

「まだ一機撃ち落とせてない!」

「正面に機雷浮上!ティマイオス止まれ!どっかから見られてるぞ!」

《そんなバカな!停止!周囲確認急いで!》

船を反転させると、眼前にドローンが飛んでくる。


「んのっ…!」

ミランダが撃ち落としたドローンが船首でさかさまに跳ね上がりプロペラが弾けた。

窓ガラスに破片が跳ねて、爆薬を積んだ本体が機雷のある場所に落ちて行く。


ドボーン!


炸薬のサイズに見合わない巨大な水柱が2つ、同時に背後で飛び上がる。


《アメス無事!?》


「無事だよ!ったく、しゃーねーな!」

手元に置いてたバッグから暗視ゴーグルを出した。陸地の丘の方を見る。

機雷の浮上タイミングも完璧だ。間違いなくタイミングを合わせて遠隔操作している。


土人どもに偵察衛星や高価なカメラを積んだ高高度を飛ぶ無人偵察機があるとは思えない。

陸地から見るなら高い場所が必要だが、夏場前の湿度の高い時期じゃ内地の山間からはぼやけて見えにくいはず。


それに陸地までは3キロ先だ。港のどっか高い場所から沖合を見てるのは予想がつく。

前日から水平線の向こうで停泊してるアタシらを、地元の漁船が不審に思って通報してるだろうし、監視してるヤツは必ずどこかから見ているはずだ。


「み~つけた…!」


港の倉庫。クレーンの上から赤い光がこちらを見て点滅している。肉眼じゃ見えない赤外線が飛んできている。距離計レンジファインダーだ。

普段は地元の漁船に当てない様にしている機雷や無人機を、精確なタイミングで浮上させて狙おうって魂胆だろう。


普段からこの港が何を取引してるか、興味が湧いてきた。


「アメスより、フェクトへ!無人機の観測手を発見した!港湾のターミナルクレーン!一番角度が高くついてて、ウィンチが登り切ってる右から3番目!ドライバーをぶち殺せ!」


《…了解。クレーンの先端にレンジファインダーの光を確認した。空襲する。》

一瞬でFECTドローンが機首方向を変えて、全速力で急降下して爆撃を始めた。

双眼鏡に切り替えて、爆撃した先を見る。赤い爆炎が見えて、黒煙の後にクレーンが傾いて水柱が上がったのが見えた。


「うっひょ~!ナイスショット!」

クレーンの根本を狙ってミサイル一発で海中側に倒壊させている。中々出来ない芸当だ。


ロメニアに居た頃から分かっちゃいたが、FECTドローンはマジで強力だ。

今撃ったのは多分、梱包爆弾を抱えた自律タイプの廉価型携行ミサイルだ。爆発の規模からみて20キロぐらいの炸薬を積んでるはず。

ツァーリ連邦との戦いで世間にも急激に普及しているが、民間のカルト教団が持つには強力すぎる。


《やはり元海賊だ。勘がいい。君を護衛に選んで正解だった。》

「海上戦は考える事多くて忙しンだよ!だからヤだったんだ!」

《今回の悪態は特に酷いみたいだが…。》

舵を取り直して、ティマイオスの船首方向へとタンジェのドローンを見ながら進む。


「今浮いてる機雷をマークする!フェクト、やれ!」

《了解だ。航行ルート上の機雷を除去する。》

無人飛行機が反転して頭上まで来た。急降下し、水中へ向けて銃撃する。


《ガンズファイアリング。》


ドカンドカンと水柱が無数に立つ。

《…驚いたアメス。私の目じゃ泡立ってる波飛沫にしかみえないのに。》

メリッサは機雷と波の泡の判別が付いていない。ブイから出たクアッドコプターの発見が遅い辺りから、察してはいた。

「経験ねーと無理だ!操作に集中してろ!」

《マザーよりアメスへ。見直したわよ。引き続き前にでて護衛の方をお願い。》

「あーはいはいはい!つっても船相手は放っておいても良さそうだけどね。」


フェクトが暴れまわっている。既に10隻近い漁船が炎上して黒煙を上げていた。


水柱が上がってひっくり返ってる船もある。アイツの方は水面下に隠れた自爆無人艇もちゃんと壊しているみたいだ。

カヌーみたいな形をしてるから上空からも判別しやすい部類だろうが、アタシが出る幕でもない辺り、仕事は出来るヤツみたい。


向こうも対ドローン銃とかは持っているだろうが、FECTドローンは中身が半分人間の自律AIだ。

妨害電波の類は効かないし、中の操縦手もかなり知能指数が高くて精密な操縦で人間大の相手を高速で空襲出来るパイロット。


最悪のオーパーツの組み合わせだ。知ってりゃ絶対敵に回したくなんかない。


ティマイオスの前について、2分ほど低速で前進しているが、空撮画像を見ていても、新しい機雷が上がって来る気配がない。


観測手を潰したのが功を奏したみたいだ。

あのやり方だと、軍隊だってどこから見られてるか中々気づけないはず。

灯台守はそう簡単には替えが利かないし、代替する防衛手段もなさそうだ。恐らく機雷の操作を管理してるヤツも混乱してる。


目は潰したから完全に道が開いた。このまま一直線に港まで突っ込めるはず。


「アメスより、これよりルチレート隊は港へ直進する!フェクト、向こうに降伏を呼び掛けな!」

《どうするつもりだ?》

「頭を取る!上陸して港を制圧する!コンテナの中身が気になってね!ガッツリ略奪すりゃ資金繰りにゃ困らねーぞ!」

アタシの提案にフェクトは少し沈黙した。

《…了解した。オープンチャンネルで港湾の管理者に呼びかけよう。上陸後も近接航空支援で援護する。君の思う通りに進め。》

「物分かりがいいねジーさん!ティマイオス、そこで待ってな!向こうがトチ狂ってこの辺の機雷全部浮上させるかもしんねー!」

《了解よ。タンジェ、ジャスパー、アナタ達も援護なさい。》

2人のドローンがアタシらの船の上についた。


《リラ、今日は絶好調じゃん。》

「いひひ、あのコンテナ群、金の匂いがするぜぇ~!」


スロットルを全開にして港へ向かう。

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