25 work 4-2
死体の山を踏み、私達は開いたドアから船室に入る。
ミランダがビビってもたついている間に、レイチェル達はもう銃撃戦を始めていた。
既に1階は死体が4人。銃声は上層階へと移っていて、階段を昇っていっている血痕がある。
予想通り、敵はパニックになっている。
「二手に分かれる!ルチレート1-2、そっちは客室を掃除しろ!上階へ行け!こっちは船倉側に行く!」
《アメス了解!パっと皆殺しにして合流すっぜ!》
モモのヤツもリラに引けを取らないクソガキだ。命を何とも思ってない。
あの3人なら躊躇うことなく引き金を引くだろう。問題はミランダだ。
いくつか死体のすり替えだとか犯罪はしてきたことがあったが、実戦は今回が初めて。
それも戦地のものだ。アゾフカの方が人体的な強度が高いとはいえ、ライフルで武装している相手と戦うのは初めて。
前後から絶え間ない銃声にパニックになって当然だろう。
「シディア、後ろお願い。シトリン達は上の階に居るから、見えた人影は全部敵、いいね!」
「は、はいー!」
「続け!ジャスパー、角をお願い!」
《了解。》
階段を下りて、地下の船倉側へと向かう。
クルーズ船の生活感のある客室から一変して、病院や市役所の待合室みたいに並んだ座席。どれにもボロい市販のバッグが何個も並べられている。
バッグからはアンテナらしきもの。無機質な角張った膨らみからして、クアッドコプターのドローンだろうか。
進んだ先には左右に船室が4つ。恐らくは船員用のもの。
「シディアちょっとストップ。前見てて。誰か出てきたら撃って。」
彼女の胸元のポーチからグレネードを引っ張り出し、通路の先に構えさせる。
身を屈めて移動し、右のドアに静かに張り付いた。
ピンを抜いて、少しだけドアを開けたらすぐに閉じる!
パァン、ドァァァン!
ドアの奥で爆発。対面の窓に銃を向けると、誰かが覗き込んだ!
私は床に尻を付けた姿勢のまま窓に向けてフルオートで連発する!
ドアに銃口をくっつける様に、内部へ向けて弾倉が空になるまで撃ち続けた!
「もいっぱつ!」
自分の胸のポーチからグレネードを出して、割れた窓に放り込む!
スリングをドアノブに引っかけて、体で引っ張って固定する!
ガチガチとドアを開けようとしたが、全体重でドアが開かない様に引っ張り止めた!
ドガザァァァ!
聴こえた音は窓が割れた音。船倉の窓が割れて、部屋に入り出している。
スリングのカラビナを外し、マガジンを捨てたまま、拳銃に持ち替えた。
「シディア、右の部屋お願い!」
「は、はい!」
彼女は右を、私は左の船室のドアを。
ドアを開けて、拳銃で押し入る。
居るのは両手を上げた男。服装は丸腰だ。青色っぽいツナギを着ていて、船の整備員か操舵士か何かに見える。
「や、やめてくれ!」
問答無用で私は両手の掌向けて銃を放つ!
「あぁぁぁっ!」
髪の毛を引っ張って膝蹴りを顔面にくらわし、うつ伏せに倒したところで両足のふくらはぎを撃つ!
「そこでくたばってろ!後で来る!」
部屋を後にし、ミランダの方へ向かう。
「ミランダ、部屋に入る!後ろにつくわ!」
部屋に入ると、同じ様に両手を上げたヒゲの男が居た。
「う、撃つな!俺は軍属じゃない!」
「え、え、えっと!」
同様して構えているミランダの銃を下させた。
「後ろで銃構えてろ、誰も寄せるな。」
「はい!」
パァン!
私は拳銃を脛に向けて撃つ。
「ぎぃやああああ!」
膝を突いて倒れたところで、頭を蹴り倒す。手の甲を踏みつけ、右手の甲を撃った。
背中の腰に拳銃を隠し持っていた。奪って自分のポケットに詰め込む。
「ステパンって男の船員はいるか!」
「お、奥の船長室…!」
「おーし、上等!」
船室にかかっている上着を頭に被せて、雑に結び付けた。
「続けシディア!後ろお願い!」
「はひ…ひゃい!」
拳銃をリロードして、ライフルもリロードして持ち替える。
道中のトイレのドアも撃ってから開けて調べる。誰もいない。
最後は最奥部の船長室だ。
入る前からドアノブ目掛けて私は歩みながら銃を撃ちまくる。
リロードしてドア越しに撃ちまくる。更にリロード、ヒンジがありそうな場所を撃ち、ドアがぐらついて傾いた隙間から先の明りが見える。
ドアの前に辿り着き、私はドアを蹴り飛ばした!
銃を構えて入ると、そこにはまた、両手を上げた男。
「撃つな!民間人だ!」
「名前は!」
「ステパン・ミハイロヴィッチ・シャスチ!スチャヴァのシレト市出身のロメニア人だ!」
「……。」
私は銃を構えたまま向き合う。
父親だ。
時間が止まった様に、私は考え込む。
なんて言葉をかけてやろうか。色々考えていたはずなのに、急に言葉に詰まってしまった。
「我々は民間人だ!こんな事をして、戦争犯罪のはずだぞ!」
「…。」
私は一度銃口を下し、ヘルメットを取った。
戦意がなくなったのに安心したのか、彼は安堵の顔を一瞬浮かべたあと、私の顔を見て驚愕した。
「シスナ…?」
「……。」
まずやりたかったこと。
私は腰だめにライフルを構えたまま、足めがけて銃を撃った。
「ぐおぁぁぁぁ!!?」
フルオートで半分ぐらい。普段は残弾を意識するのに、今はそれどころじゃなかった。
「あー!あぁぁぁぁ…!な、何故だ……シスナ……」
「……。」
言葉が出てこない。コイツが絶望したまま死んで行ける様に、呪詛をずっと考えてきたはずだったが。
だけど、背中から溢れる本能と、過去のシスナがこう言っている。
このド下衆野郎に、言葉なんて必要ない。
任を果たし、殺すべき相手を殺せ。自分の定めた使命ならば、躊躇う必要はない。
「何も判らないまま死んでいけ!お前には、それで十分だ!」
腕と頭を踏みつけ、フルオートで!
尻から、心臓へ!まくり上げる様に!
ありったけの恨みと火薬と鉄と鉛を!
この銃声が私の慟哭だ!!!




