24 work 4-1 尊属殺
私達は救急ヘリの貨物室に入って、私達は塩水の大河『ダヌーブ大河』の川に沿う港湾都市、チーリアへ向かった。
空から見下ろす港湾都市は要塞化されていて、外壁には重機関銃や対空ミサイルが置いてある。
殆どはダミーだ。襲撃の初手の空爆で狙われることを知っている。
ヘリのパイロットは黙って操縦する。
医療用の装備が整ったヘリコプターの中に、軍隊の装備をした4人組が銃とクアッドコプターのドローンを抱えているのだから、関わりたくないのだろう。
ガラガラになった港の駐車場のど真ん中にヘリコプターが降下していく。
その途中で既に、尾部から黒煙を出しているタンカーが見えた。
中型の貨客船だ。コンテナと客室が半々の輸送船。
傭兵と物資、両方運ぶにはうってつけのもの。
私達が下りると、ヘリコプターは足早に離陸して踵を返す。
《シスナ。聞こえますか?クレアです。》
クレアが通信してきた。無線の周波数はメリッサとモモのままだ。
「感度良好。ハッキリ聞こえてる。」
衛星から通信してるはずなのに、まるでノイズのない声だ。
《こうして皆さんと話すのは、初めてになりますね。》
「こっちも正体はなんとなく判ってるから大丈夫。詳しい自己紹介はヒノシタに帰ってから。」
《ありがとう。話が早くて助かります。》
無線越しでも笑顔になっているのが判る。
「そっちから話しかけて来るとは意外だったけどね。」
《喋りたくないわけじゃなかったんですよ。私のことはいいとして…》
彼女は気を取り直し、真剣な口調に戻して言う。
《大ダンジョンの残骸からサルベージしてくれたデータがどうしても必要なんです。必ず生きて持ち帰ってきてください。私には皆さんが必要なんです。もう一つの人格ではなく、皆さん自身が。》
彼女の声は、誠実で実直な言葉遣いだ。リーシャみたいな含みのない、とても透き通った態度をしている。
《だから、今回はウチも協力します。FECTドローンが洋上でスタンバイしてます。支援が必要なら、いつでも指示を。》
「了解した。お近づきの印が近接航空支援とはね。マナーがなってる。アンタのこと気に入ったわ。」
《嬉しい。空襲したい場所があったらレーザーマーカーで誘導してください。通信終了。》
無線が途切れると、私達は目的のタンカーに到達する。
既に舟艇がおりているが、降りた人間が死んでいる。
私達同様に軍服は来ていないが、拳銃が付いたベルトを装備していた。
ベルトはバックルが閉じたまま外れて飛んでいる。
上半身の大部分が消え失せ、下半身と分かたれた死体が無数にある。
血飛沫が5メートル以上も、流線形に伸びて一直線に飛散している。全て同一の方向を向いている。
FECTドローンに搭載している散弾銃に撃ち抜かれたのだろう。
「可愛い声して、なぁ~かなかエグい戦い方するじゃんアイツ。」
リラは死骸を見て苦い笑みを浮かべた。
狩猟用の鹿撃ち向けの一般的な8.3ミリメートルのooバックよりも更に大きい、ヒノシタの規格品の11ミリメートルのパチンコ玉を無数に詰め込んでいるもの。
マッハ近いスピードから、更に火薬で放たれる対物散弾銃だ。人に撃てば、掠めた風圧だけでも大人の二の腕を吹き飛ばす速度になる。
等身大ぐらいの無人機とはいえ、超低空で進入して墜落せず、人間の腹部を狙って命中させている。信じられない精度。恐ろしい兵器だ。
「心強いね。」
レイチェルは落ち着いている。ミランダは吹き飛んだ臓物をなるべく見ない様に船の方を見続けていた。
《うへ~、他にどんな装備が乗ってるやら。》
《マイクロミサイルもあるんじゃねえっけ?》
メリッサとモモはドローンで死体を映し、そして高度を上げてタンカーの上面に登って行った。
「船の中に駐機してるドローンに誘爆したら私達も巻き添えになる。クレア、そこんところヨロシクね。」
《任せてください。》
「グッド、乗り込むわよ!舟艇に急げ!」
「舟艇って?」
「タラップだよ!階段!」
「最初からそう言えばいいじゃん!」
私達はライフルを構えて列を為して階段を昇っていく。
コンテナ船の上部に辿り着いた。
「手あたり次第に射殺しろ!立ってるヤツは全員敵!降伏したら手足でもぶち抜いとけ!」
「了解!」
私達は窓に見える人間に向けて発砲する。けたたましく割れるガラスの音。
「モモ、高度を落として窓を確認!メリッサはそのまま上から監視!」
《あいよ~。了解。》
ドローンが窓を確認する。
《上階の寝室に複数人。機関銃持ち出してる。中層に物資保管庫。下層側から一瞬人が出て行くのが見えた。来るよ。》
私は迷わずレーザーポインターを出した。
「最上階の1列に航空支援要請!進路…160、南東側から進入して!」
《了解、旋回中。》
「頭出すな!身を屈めておけ!掃射が来る!」
窓枠から軽機関銃が3つ、船体の後部側へ向けて放たれる。
コンテナを貫通してフルオートで連発される銃弾。
「っつぅ…!」
眼前で鉄粉が舞う。コンテナの中央部分で頭を床に付けるほど私は屈んでいた。
重点的に角を狙っている。相手はかなり手慣れている。
《位置に着きました。》
《こっちでマークするね。》
背後に着地しているモモのドローンが緑色の光を放つ。
《レーザーマーカーを確認。支援開始します。》
スンと風を切った音が4つ!無数の破裂音と共に再びガラスが舞い散る!
《弾着、効果確認。榴弾が全部中入ったわ。スゲー精度。》
マガジンが歪み、ベルトリンクが弾けた機関銃が目前に落ちて来る。
《船室横、敵影複数、来ますよ!》
「応射開始!撃ちまくれ!クレア、反転して船首に爆撃いける!?」
私達は船の側面に出て来る兵士たち目掛けて銃を撃ちまくる。
相手が構えるよりも早く、フルオートで乱発する。何人も転倒し、Uターンして船室側に何人か戻っていく。
死体目掛けて、私とリラとレイチェルは何度も撃った。立ち上がられると面倒だ。
《……側面から船首側に機銃掃射を提案しています。》
少し黙った後に、クレアが提案する。
「それでいい!」
《了解。旋回中。》
聴こえる位置での風切り音。両側面から聞こえるエンジン音が近づいてくる。
《ターゲットインサイト。ガンズファイアリング。》
トタタタタァンという銃撃の音。航空機関砲ほどではない、小銃弾だがそれでも銃撃の密度は非常に濃い。
《船首側に待機してた連中が倒れました。ナイスショット、船上に立ってる敵はいません。》
「前進!モモ、ミランダ、一緒に来い!リラ、レイチェル、メリッサ!そっちは任せた!」
「あいよ!」「了解。」
ミランダが通り過ぎた無人機の風圧によたつきながら、レイチェルの後ろから私の後ろに着く。
「モタモタするなミランダ!続け!」
「はひー!」
船室に攻め入り、全員ぶち殺す!




