21 work 3-4
音のした場所まで戻ってくると、そこにはアゾフカが3体歩いていた。
塵雷を纏った個体が居る。
「アメス右、私は左。ジャスパー、ドローンにグレネードを持たせる、アンタの投下を合図にやる。」
《アファーマティ~ブ》
クアッドコプターの足にグレネードを持たせて、ピンを引き抜く。プロペラの回転数が上がって飛び上がった。
コツンという音から一拍置いて、
パァァァォォォン!
イヤーピースを通り越して鼓膜を揺らす破裂音と残響が遠のく様に響く!
リラと私がアゾフカに銃撃を撃ち込んだ!
うなじを撃ち抜いて、頭が落ちる。片方は倒れ込んだが、もう片方は頭が落ちているのに動いている!
「コイツ…!?」
倒れた胴体に撃ち込んだが、動きが止まる気配がない。持ち上げた頭を地面に叩きつけ、自ら砕いた。
直後、地鳴りと共に現れたのは、巨大な黄色い結晶。
自ら砕けると、彫刻が現れたかのように魔物が飛び出した!
「…ハァ!?」「ドラゴン?!」
私とリラは目を疑った。
黄色水晶の彫刻で出来た飛竜が目の前に現れている。私達の方を見て、犬笛の様な高周波の咆哮を叫んだ!
目の奥や耳の奥の三半規管の液体に響く!
幻覚の類じゃない。本物だ。
《おいおいおい、クリスタルのワイバーンだ!マジでモンスターじゃん!?》
「どうやって動いてんだ?!」
「いいから撃て!人の目に触れる前に破壊する!」
私とリラが顔面めがけて銃撃する。
ガチンガチンと結晶が砕ける音。だが跳弾しているわけじゃない。弾丸は通っている。
右目のクリスタルが砕けると雄たけびを上げた!
天井が落ちて来る。私はリラの手を引いて、洞穴から抜け出た!
《どわー!ドローンが潰された!次の機体が到着するまで時間かかるよ!》
モモのドローンが落石で潰れてしまった。土埃が羽ばたきでかき消され、風圧に私達は膝を突く。
夏の森の中、木々の隙間から入る日光が、黄水晶の体を照らして金色に輝いている。
斜面の下に居る私達を、まるで捕食する獲物を見るかのように、ワイバーンが見下ろしていた。
(小火器で立ち向かえる相手か…?)
茫然とした私達に向けて、口を開けた。背面と咥内が光り輝いている。レーザーか、あるいは火炎放射か。
その直後。自分の頚椎が鳴る様な、破裂した感触と耳鳴りが私とリラを襲った。
ペンダントがオレンジ色に光り輝いている。そして熱が伝播する様に、私達の全身を胸元から一瞬で駆け巡った!
その刹那、私達は衝動的に思い出す。
『こいつは"倒したことがある"』
目の奥が熱い、そして衝動に駆られる様に、私とリラは身を翻して、別々の方向に跳躍した。
斜面を滑り降りて、ナイフを突き立てて機転にし、スライディングしながら立ち上がって走り出す!
レーザーが私達の居た場所を焼き払った!背後にあった倒木が、一瞬で丸焦げになって出火して煙を立てている。
「リラ!足を撃てる!?」
「いや!位置が悪い!」
「分かった!私が先に囮になる!中身をやれ!」
「オッケ、任せて!上を取る!駆け上がるよ!」
二手に分かれて、私達は斜面を登る。坂の上に登って上を取らないことには、有効打は与えられない。
ヤツの弱点は首の付け根にあるコアだ。外殻はクリスタルだが、小銃弾なら貫ける。
足元の土を凍らせて、柔らかい山肌を急いで駆け上がる。
私の方を見て口を開けている。
「リラ、撃て!」
後頭部にリラが撃った銃弾が命中し、彼女の方を振り返った。私は斜面に膝を突いて、片足の膝を狙う!
ドタタン!3点で撃った弾丸が関節に命中して、膝が砕けた!姿勢が崩れ、リラを狙ったレーザーは空を撃ち抜いて、青々とした葉を焼き払う。
「ナイッショー!」
近づいたリラが暴れる羽を避けて首筋にナイフを刺しこんだ。バチィと紫色の魔法の電撃が神経節を貫いて、頭が垂れる。
「っし!今だ!やっちまえ!」
「んぁぁぁっしゃああ!」
私はスライディングしながら、背中に飛び乗って銃剣を甲羅の間に差し込んだ!光るコアめがけ、フルオートで銃弾を叩き込む!
バキンとコアが砕ける音がして、輝いていたクリスタルのワイバーンはくすんだ色になって倒れた。
倒れ伏すワイバーンの甲羅にナイフが挟まれ、バキャンと音を立ててへし折れる。
背中から滑り降りて、私はリラの隣にしゃがみ込んだ。
「ふーっ…」
私は思わず力が抜けて仰向けに倒れてしまう。
「何とかなったぁ。武器の進化に助けられたな。」
リラはライフルを見て笑いながらボヤいた。
体が落ち着いた時、ようやくわかった。
私の記憶に過去のシスナが介入してきた。私達を助ける為に。
コイツはシトリンの大聖堂の16階の守護者。過去に、シスナとリラとリーシャと、あともうひとり、顔を思い出せない誰かと一緒に倒した記憶がある。
空を跳び回り、そこら中をレーザーで焼き払い、土魔法の棘を飛ばしてくる凶悪な相手。
当時の火縄銃の弾丸では、外殻の甲羅と何層にも折り重ねられたクリスタルファイバーを貫けない。
もっと強力な銃を手作りして持ち込まないと勝てないとさえ言われていた。
「あーもう、要らん知識ねじ込んできやがって…。」
私は目を擦ってぼやく。
土にめり込んだ足で階段を作る様に斜面を凍らせて登るのは、当時の私達のやり方だ。
出来るなら土魔法で硬くした方が足が滑らない。
かつてのシスナとリラのタレントは魔術師。火と氷と雷の3属性しか使えない。その時に体に染みついていたやり方だ。
「でも、助けられたじゃん。へへ。」
「現実感が薄れて嫌なのよ、この感覚。まだ頭がふわふわする…!」
「そう?アタシは大好き。スリルと勝った時のアドレナリンがマジでサイッコー。」
リラは天を仰いで息を整えた。
あのワイバーンがアゾフカと同様の水晶で出来たロボットだということに気づけず、何人もの冒険者が挫折していった。
そして、それを作ったダンジョンの主のシトリンは、5分とかからず単独で倒せるのが当たり前だったという。
4人がかりだったとはいえ、当時のシスナ達はどうやってあのトチ狂った強さをしていたシトリンに勝てたのやら…。
まだその時の記憶を教える気はない様だ。
しばらくして、特に変わった様子はない。アゾフカも出てこない様だし、魔物の出現は収まった様だ。
《うほー!2人とも、アレ倒したの!?マジで!?》
「うるさいジャスパー。ルチレート1-2と合流する。」
私が立ち上がった時、空から音がする。
断続的に聞こえるスパパンと言う音。しばらくすると鳴りやんで、低く唸る風切り音。ジェット機の様な音だ。
「今の音は…」
「デトネーションエンジン……」
リラが言いかけた時、レイチェル達の居る方から爆発がした!
一瞬聴こえた風切り音。空襲だ!
「…嘘っしょ!?」
「急ぐぞ!走れ!」




