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19 work 3-2

まずは仕事を先に終わらせる。トラックの積み荷は一直線の最短ルートで、ドゥラショブ南端の工場団地へと持って来た。


一番怖いのは道中だったが、偽装が上手くいったのか攻撃されることはなく済んだ。

大型のトラックは標的になる。金属加工だとかの機材を運べるぐらいの大きなサイズは、問答無用で狙ってくる。


前線から離れた内地だからと言って、敵方の観測ドローンが飛んでいないとも限らない。

今回は運がよかった様だ。



搬送先に着いた。


空を見上げると、ラジコンサイズの飛行機のプロペラの音がする。仲間の観測ドローンが飛んでいて、敵の監視ドローンが入ってきていないかを確認しているらしい。


待っている人には軍人も居た。新兵器の導入を心待ちにしているとかなんとか。


少しボロい工場の大きなシャッターを開けて、フォークリフトで積み荷を降ろし、搬入する。


私は説明書を見ながら組み立てる。それほど難しくはない。

ユニットごとに並べて、パイプやケーブルを繋ぐだけだ。液晶モニターにコントローラーを乗せて、まるでビデオゲーム大会の会場でも作ってるかのよう。


ペンダントを繋いで、インストーラーを起動してシミュレーターを起動しながら、パーツごとに分かれた機体の仕様を確認する。


スペースシャトルの様なリフティングボディの全動翼。

胴体と両羽の3つのパーツで構築された、身長ほどの中型のドローン。

敵方も使っているプロペラ式の自爆ドローンを、より薄く細長く流線形にしたもの。

形状から見るに、コイツは高速のジェット機の様だ。どちらかと言えば、戦闘機っぽさがある。


胴体の前の方から、翼をスライドする様に差し込んで組み立て完了と、かなりシンプルな作りだ。


呼称は『FECT』、読みはフェクト。

Fast-response Engagement Counter Termination system

即応交戦型の迎撃排除システムとか、そんな意味らしい。


目的は、自爆ドローンや巡航ミサイルの撃墜をする、自律と半自律を兼ね備えた無人機だ。


空中に浮いているタイプの迫撃砲弾を投下するクアッドコプターのFPVドローンを始めとして、飛行機型の自爆ドローンやそれを誘導する観測機の他、マッハ1クラスの巡航ミサイルを、備え付けた散弾銃や誘導榴弾で破壊する。

高速度の空対空迎撃ドローンだ。


機雷の除去をする掃海艇に準えた、掃空ドローンと言う新しいカテゴリーの機体だ。勿論自ら自爆特攻も出来る。


位置的には、有人の低コスト航空機であるCOIN機の更に下に位置する。

既存の戦闘機やヘリコプターが持つ、上等な熱源探知ミサイルに立ち向かうには弱すぎるだろう。


だが、この機体は外装が強化プラスチックで中は硬質ウレタンフォーム。

他の自爆ドローンと大差がなく、構造のシンプルさを考えるとミサイルを使わせるだけでも費用対効果に見合うもの。特攻して撃墜出来れば御の字だ。


操作は半自動と完全自律作動の2つ。ラジコン操作は訓練設備からですら動かせるという徹底した削減ぶり。


目の前で、半分組み立てられた機体の羽の後端が操作に合わせてフラップやラダーが動いている。

導入された現物が目の前で動いているのを見ると、私達も一緒に驚いてしまう。


やろうと思えば、今この瞬間から戦闘に参加することさえできる。なるほど、確かに即応性がある。


カメラのサーマル性能や空力特性は、民生品でも出来るレベルの量産品で普通と言ったところ。レーダーは存在しないから有視界限定だ。

ただし、衛星経由の制御やGPSのプログラムの制御はかなり高度な様だ。

プログラムの圧縮の拡張子は見たこともない英数字の羅列。


「ちょっとシスナ!これ!ロータリーデトネーションエンジンじゃねーの……!」


説明書を読んでたリラが私に耳打ちしてくる。


パルスジェットエンジンの発展型のエンジンだ。

タービンブレードを排して、燃料の爆発の圧力を利用して、燃料を圧縮して爆発させるのを繰り返し、円筒の中で回転する様に爆轟を繰り返して推力を得るという。

構造が簡素でタービンエンジンよりも圧倒的に安価な上、推力も圧倒的に高いという夢の様なエンジンだ。

実証はされているが、無人戦闘機での量産と実用は初の事例だろう。


問題は圧縮と爆轟のサイクル制御。


数千分の1ミリ秒クラスの高度な電子制御が必要なもの。

速度帯や高度、燃料の種類や燃焼室内の温度、条件が少しでも乱れると失火したり、最悪爆発して自壊してしまう。


確かに、あの量子コンピューターがあった時代なら実用されていても不思議じゃない。


「うーん……」

私は生返事でリラに返しながら、シミュレーターを操作する。


最高時速はマッハ3まで行けるが、リミッターが掛かっている様だ。

墜落してもいい前提で作られている。速度を上げ過ぎると機体のフレームが保たないみたいだ。


「なんていうか、凄くピーキーな飛行機ね……。」

レイチェルは私の操縦を見て苦笑いする。


エンジンを付けて加速し続けると、マッハ1付近に加速してはリミッターが作動してエンジンを止めて滑空するのを繰り返す。

妙なシステムではあるが、燃料消費を抑えるには確かに理に適った手法だ。

速度を落として滑空して敵を探り、見つけ次第に加速して突っ込んで撃墜しては、再び滑空して敵を探す。


まるで水面を漂うアメンボの様な挙動だ。


これが無数に空を跳び回れば、確かに自爆ドローンや巡航ミサイルの脅威は減る。



(確かにこれは量子コンピューターを使って設計する価値のあるものだ。確実にゲームチェンジャーになる。)



シミュレーターの試運転は終わり、他の従業員や担当のドライバーも無事に操作出来て、仕事は終わった。


襲撃もなく、無事に済んで何よりだ。


私達は次の仕事に向かう。これから行くのは大ダンジョンの跡地だ。データのサルベージを行わないと。


(しかし、ペンダントを使わせたのは何のためだろう?)

インストーラーを動かすぐらいなら、パソコンに繋いでダブルクリックするだけ。

こんな程度は、レイチェルやミランダにだってできる。


ペンダントを見ると、オレンジ色の光は健在だ。過去のシスナはまだ私と共に居るみたいだ。

一体何が目的だろう?


私はメンバーの顔色を伺う。別の端末で同じ作業をしていたレイチェルにも特に異常は見えない。

「な~に隊長、私の顔見て。どう?リップ変えたんだけどさ。」

リラは笑顔を見せて来る。

「知らん。いいからエンジン付けろ。」

指先で強めに頬を突いて車に座らせた。

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