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15 break time 2-1 ブライダルシーズン

マザーに余ったペンダントを返却し、目的のものを手渡した。


「2個だけ?」

「現場の裁量よ。それだけあれば足りるはず。」

「分かったわ。確認する。」


シスナの判断には、マザーも信頼を置いているらしい。



後日、仕事を終えて、私はやることもなくベッドに寝転んでスマートフォンでネットサーフィンをして待機していた。


マザーがお土産にくれた関西の肉まんは凄く美味しい。


既に行動が起きていた。ニュースで警察が見覚えのあるジャンクヤードを摘発している。


「手が早いのなんの……。」

インターネットニュースを眺めていると、シスナが話しかけて来た。


「レイチェル、明日の結婚式、アンタにも手伝って貰うから買い出し行ってくんない?」

珍しくシスナ達が教会にいる。居候の私達は結婚式の運営スタッフもやらなきゃならないらしい。


表向きの仕事としては悪くない。マザーの用意した社会的なカムフラージュのひとつだ。


「はーい。分かった行ってくるね。」

「あとアンタ料理できるんじゃないっけ?リラと一緒にそっちもお願いできる?」

「あーい。」

私は近所のスーパーマーケットにお使いを頼まれ、買い物に行く途中で、警察の取り調べを受ける老人の男性を見かけた。


例のソーラーパネル詐欺の被害者だ。

マザーは全国に散らばった被害者の名前を公的機関に流出させて、告発させる気でいるらしい。

買い物を終えて戻って来る頃には、警察の隣には地元のテレビ局までいる。


予定にあった結婚式のスタッフ業務を無事に終えて数日。

来週には私の新しい身分証が手に入るということで、写真撮影だ。駅前のシャッター街で細々とやっている写真館で、身分証用の写真を撮る。



鏡に映る他人の顔を、何度も美人だと褒められながら、私は複雑な思いをして教会に帰る。



ニュースを見ると、設置した銅線まで盗んだのは計画的な犯行だったとか何とか。

責任を持って撤去して欲しいなど、被害者のニュースが放映されて1週間後。


教会の敷地の中。仕事用のバンを停めているプレハブガレージや、駐車場の屋根に撤去されたソーラーパネルが移設された。


「犯罪者も被害者も無駄にしない。これぞ、さすてなぶるってヤツね~。」


マザーはご満悦と言った表情で駐車場を眺めていた。協力してくれた地元のリフォーム業者の人が彼女に手を振ると、笑顔で振り返す。

単純に産業廃棄物として捨てるのも費用が掛かって忍びない。なら精々私達で有効活用してやろうという、ただそれだけのことだ。


お代は留置場にいる二重国籍の連中が持つ。

彼らは詐欺の刑事裁判と、慰謝料請求の民事裁判を両方やることになり、その数も10件近いもの。


証拠を取り揃えられた裁判は、被害者それぞれの1つずつ立件されて、まとめて行われることはない。

入金は被害のあった地主のお爺さんの民事裁判で弁済された後で、一年以上は先の話になるだろう。


今回のガレージ周りの工事は、マザーが費用を支払っている。

裁判が終わるまで、空いた土地で何もしないのも時間の無駄だ。その間にソーラーパネルのあった場所は駐車場にでもするなり、土地を売るなりしてお金に変えて、裁判費用に当てる方がいいとマザーは言う。


弁償の額が払いきれないから不満だと、何度も上告されて時間を稼がれるかも知れない。

銅線や蓄電池の盗難も、国外が絡む計画的な犯行だったことも踏まえ社会問題にも発展するだろう。国際関係で圧力がかかって、裁判内容も有耶無耶になるかもしれない。

1つの土地だけで数百万円。総額での被害額も大きく、返済できるか怪しいものだ。ふとしたタイミングで、彼らは国外逃亡も考えるはず。


ジャンクヤードで働いていた無実の人達には悪いが、失業だろう。



でも、あくまでこれら全ては、被害者の地主のお爺さんと詐欺業者間の問題だ。



証拠集めや情報提供は私達が匿名でやったこと。情報の入手経路は暴行や住居侵入の犯罪と知っていて、リスクを知った上での行動だ。

立場上は部外者だから静観する以外にない。シスナもマザーも、これで納得している。



それが"教会の刃"だ。



ふと思い返すと、そういえば今回の仕事はミランダがいなかった。


「マザー、そういえばミランダは?」

「乳がん検診で初期症状があったから、手術で入院してたわ。明日には戻るわよ。」

「道理で見なかったわけだ。」


思ったより普通な理由だったことに安心して、私達は次の仕事に控えるのだった。

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