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10 work 2-1 節電にご協力を

そして3日後、シスナ達も呼び出されて私達はシスターの服を纏って一同に集まった。



「というわけで、今回は電気料金を賄う為にね、ちょっと人攫いをお願いしたいの。」

マザーは満面の笑みで言う。

「出たよ……」

「ハァ……」

リラとシスナは嫌悪感に満ちた顔で睨みつけた。マザーは苦みを帯びた愛想笑いで答える。

「大丈夫よぉ。そんな怪訝な顔しないでって。」

「で、具体的には何を?」

明らかに不機嫌そうなシスナが腕を組んで聴く。

「ここから北東に24ブロック。大体700メートルぐらい先にねぇ、なんだか不要になったのに廃棄出来ない太陽光パネルがあるとかでぇ。」

「そういや、半年前だかに電線と蓄電池をごっそり盗まれて未稼働になったってニュースなってたな。」

リラは腕を組んで、片足立ちして爪先で自分の足を掻く。

「そうよ。太陽光パネルもウチの屋根に欲しい訳だけど、それ以外にも色々と出来そうだと思ったのよね。」


農家を止めて土地を持て余した高齢者の地主が、太陽光パネルの設置詐欺の被害にあったところだ。


ファイルにあったのは、その詐欺の実態と被害届の詳細だ。


実際には補助金を掠め取られる上、固定資産税がかかりまくるわ発電の効率が低くて売電の収益性が悪く、やめようにも処分費用も酷くかかる為に負の遺産になっている。

その上、中の太い銅線はマイナーメタルの純銅や鉛の回収の為に金属窃盗の被害に遭いやすい。


最後に残るのはフェンスと土地と、一時蓄電も出来ない、無駄に発電しているただの板だけ。

放置すれば土台のボルトが腐食した末に台風か何かで吹き飛び、回りに被害も及ぼす。


始めから月極の駐車場にでもしていた方が、よっぽど儲かっただろう。


私は首を傾げながら聴いた。

「被害者の地主をフン縛っても無意味のハズですよね?業者はペーパーカンパニーで地主は連絡が付かないから泣き寝入りのはず。」

「レイチェル鋭いわねぇ!その通りよぉ。狙いはソーラーパネル設置業者側、詐欺グループの主犯格ね。お金を持っているのもそっち側だし。」

「でもどうやって追跡を?事務所も夜逃げして、泣き寝入りになったはずでは……?」


マザーは笑顔で答える。

「そこはクレアとモモが特定してくれたから大丈夫よぉ。」

「一体どうやって……」

私は驚いてモモを見た。

「犯罪1回ごとに車まで入れ替えるのは、中々やらないでしょ?ナンバープレートはよく盗難したのを偽装して入れ替えられてるけどね。車台番号や車そのものは中々偽装が出来ないもんだし。」

「確かに……」

私達の商用バンも、仕事の度に買い替えたりはしない。

「ペーパーカンパニーでも仕事内容次第では届け出には車台番号が必須。でも重大な殺人事件でもない限り、警察は他県の市役所や区役所に行くほど暇じゃない。他県に引っ越して、オークションで持ち主が変わったりすると、ほぼ追跡できなくなる。」

「モモってば天才よねぇ。名探偵よぉ。」

「公的機関に賄賂使って、車台番号の届け出をちょろっと調べんのさ。事業所が失踪した日付を基準に、同じ車種と同じカラーを探して、新しく登録された車台番号を覗いたりするだけで済むもんね。」


仕事をしている人間のモニターをミラーリングして閲覧するだけで済む。賄賂を受け取った側は全くの無害な上に、そもそもハッキングされたことにさえ気づかないだろう。

電車でスマートフォンを後ろから覗かれたのと全く同じ程度のもの。


「後は、地元のバイト君とか、SNSの正義の味方気取りとか、車屋にお金払ってマフラーとか一致する箇所を調べて貰ったりね。同じ番号で照合して事業所を特定して、監視カメラとかで運転手の人相を深堀したりすると、大体同一人物が出るってわけ。」

「スゴ……」

私は絶句してしまう。


「そういうわけで、悪人をしょっぴいて、ついでに負の遺産を私達が有効活用してやろうって話。誰も悲しまなくて『ういんういん』ってヤツよ。ここは私達のナワバリなわけだしね。」


シスナがモモに肘打ちする。

「モモ、マザーを手伝うなって言ったはず。」

「や~グラボ新しいの欲しくて……」

「ったく……被害者が泣き寝入りで終わるから、犯罪は収益性や常習性がいいのよ。詐欺グループの大本なんて碌なもんじゃないはず。最悪国絡みよ?敵対組織の末端に禍根や報復を残す真似はしたくない。」

「流石プロねぇシスナ。」

マザーは皮肉で返した。

「チッ!マジでいい死に方させないわよ。」


「私が惨たらしく死ぬのは承知の上よ。私の計画を邪魔する者は全て焼く。サーモバリックの多連装ロケットでも、弾道ミサイルでもブチこめばいい。こっちにはクレアがいる。」


マザーの表情は怒りに満ち、目にはオレンジ色の光が走る。

「武力抗争になったら、バス3台にアゾフカ120体でも載せて送ってやれるわ。それと私、後手に回るのが嫌いなの。先制攻撃で全て擦り潰すのが私のやり方よ。」

シスナは観念して承諾した。

「……分かったわよ。」



考えてもみれば、ここは管理されたダンジョンだ。過去に拾ったデータはクレアに引き継がれている。

私の様な有機物の人間でさえデータを保存して再召喚出来てしまえるのだから、ダンジョンで1度、私を殺したアゾフカと言う鉱石の自律人形が召喚できないわけがない。


アレは言ってしまえばロボット兵器、ゴーレムだ。

人の力を遥かに凌駕する強固な水晶の体で、素早い体術。爆発する鋭い結晶の腕や、帯電など人間の肉体など易々と殺傷出来る恐ろしい兵器を無尽蔵に召喚出来る。


私の初仕事で戦ったのが、ほぼ何の武器も持たない最弱の個体。

私が加入する以前に、シスナ達はそれよりも上等な個体のデータを回収しているはずだ。十分に再現できるデータがあれば、車両の運転ぐらいなら出来てしまうだろう。

その気になれば、銃で武装だってしてしまえる。



いや、もしかすれば、私やシスナの人格が入ったアゾフカさえ召喚出来るのかもしれない……。思っているより、このダンジョンの力は恐ろしい。



むしろ、シスナの方が、他の犯罪組織がマザーに近づくきっかけを作るのを恐れている。

マザーが暴走するのを最も恐れている。だから反抗的な態度をするまでに慎重で消極的だ。


「その詐欺グループはどこに?」

私が聴くと、彼女はケロっとして表情を戻した。

「関西地方の郊外。何年も昔に潰れた個人経営の床屋を改装してオフィスにしてあるわ。」

「確かに、中部地方の私達の地元からは、かなり離れてますね…」

「でも、まだ活動してる。次の被害者を出さない為にも、素早く静かに、迅速にね。人の目が付きにくいし、簡単な仕事になるはずよ。」

シスナは深いため息をついて背を向けた。

「だと良いけど……。」

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