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第28話 ランクCの魔物

 みなが寝静まり、いくらセーフティーエリアとはいえ、冒険者狙いの人間の盗賊とかいないこと限らない、何かあったら怖いので警戒のため起きていたら、ライルオンが寝返りをうった拍子にパチッと目が開くと目が合ってしまった。

「寝ないんですか?」

「ああ、いいよ寝てて、一応警戒しとくから」

「そんな、何から何までお世話になる訳には」

 この子いい子だな、アイルシェンとリヴァールはなんか抜けているが、ライルオンは二人のお姉ちゃん的な役割をしているのか表現が難しいがなんというかしっかりしていた。

 すると、寝床から起き上がり俺の横に座る彼女、ふと前室の開いたテントの中のレイルを確認するが耳がピクピク動いている寝たフリをしているな、何もしないっての。

「あの、つかぬことをお伺いしますが、レイルさんとはどのようなご関係で?」

 なんだ藪から棒に、色恋話が好きなのかな、修学旅行じゃないんだぞ。

「んー、相棒っていうか家族って言うか、まあ、そんな感じ」

 告白してないし彼女っていうのも変だったので若干誤魔化しながら言うとレイルがピクっと震えた気がした、家族って言ってるんだから許して欲しい。

「家族、ですか、でも指輪してないですよね?」

 君、痛いとこついてくるね。

「大人の事情だよ」

「大人って、レイジさん何歳ですか?」

 なんかだんだん俺との距離を物理的に詰めてくるライルオン。

「十七歳」

「え、同い年??」

「マジ?」

 彼女も十七歳?ということはアイルシェンもそのぐらいだろう、同じぐらいだとは思っていたが、二十歳そこそこだと思っていた。十七歳で冒険者ランクCって結構すごいのでは?ちょっと見る目を変えないとな。

「十七歳でAマイナスって、どんなことをすればなれるんですか?」

「いやまあ、時の運というか」

 嘘は言っていない、転生したのはある意味時の運だ。

「やっぱり魔力の総量ですか?」

「それもあるとは思うけど」

「魔力総量は訓練で増えるんですか?」

「ひ、人によると思うかな」

 二人きりだからと言ってグイグイ来るなこの子、気になることが沢山あるのはいい事だと思うけど、そんなに一気に質問されても困ってしまう、俺は先生じゃない。

「もっといろいろ教えてください」

 彼女の手が俺の手の甲に優しく被さったところで。

「んーーー」

 とレイルがわざとらしく背伸びをしながら目を覚まし、ライルオンは慌てて俺の手の甲から手を離した。ふぅ、よく分からんが危ないところだった。

「そろそろ交代しますか?」

 おおそんな時間か、じゃあありがたく俺は寝るとしよう。

「あ、うん、ありがとう。何かあったら蹴飛ばしてでも起こして」

「蹴飛ばしませんよ」

 俺は逃げるように寝床に着くと、ライルオンも少し残念そうにしてレイルに何か言われる前に自分の寝床に着いていた。

 美人局じゃ、ないよな?単純に向上心があるだけだと思いたいが、エレノアの件もある、気をつけるに越したことはないか。


   ●


 翌朝、かどうかは時計もない洞窟なので分からないが休憩を済ませてセーフティーエリアを出発。

 今日はとにかく疲れる前に二十階層のボス『ダンジョンウルフ』の討伐に向かう。

「ダンジョンウルフってどんなのかわかる?」

 依頼書にも詳細があまりなかったがまあ行けるっしょと適当に受けたクエスト、流石に弱点とかあれば知っといた方がいいかなと思って三人に聞いてみると。

「え、レイジ、ダンジョンウルフの討伐に向かうんですか?」

 三人は足を止めてなんだか怯えてある様子だった。

「ダンジョンウルフは元々このダンジョンにはいなかったんだけどよ」

「突如、二十階層の大広間に出現して冒険者を困らせていると聞きます」

 はー、裏ボス的な感じなのかな?それとも期間限定イベント?なんて悠長なことを考えていると。

「レイジなら無理じゃないかもしれないですけど、ここ二、三週間で何グループかクエストを受注して誰もギルドに帰ってきてないって聞きますよ。あくまで噂ですけど」

 マジで?そんなこと受付で一言も言われなかったぞ。でも一応Cランクの魔物だよな、ってことはダンジョンウルフの他にも何かいるってことか、いやー、聞いといてよかった。

「なるほどねー、情報ありがと」

 と、レイルと共に先に向かってスタスタ歩き始めると。

「待ってください行くんですか!?」

「無理なら帰っていいよー」

「帰れないんで行きます!」

 そして、階層が深くなるにつれだんだんモンスターの全体的な強さは上がってきたが、アイルシェン三人は手こずることもなく無難にモンスターを倒していた。

 ダンジョンに入った時より動きの制度も上がってるし、疲れは見えるがこいつら以外と腕はいいんじゃね?と思ってきた。

「んー、アウルに任せたら結構強くなるんじゃない?」

「そう見えますね」

 レイルも同意見だったが、流石に三人も増えるのはなぁ。弟子とかではないにしても、たまーに訓練に付き合うぐらいはやってあげてもいいような気がしてきた。

 と、二人で話している間に少し時間はかかったが、やや大型のゴーレムを三人は倒した。

「おー」

 ゴーレムってなかなか刃が立たないから剣士とかは余程の手練じゃないと相手にするのは難しいらしいが、普通に一刀両断にしているから余計にそう思う。

「なんか強くなった?」

「そうですかね?いろいろ考えながらはやってるんですけど」

 うん、素質〇だね。この三人は戦いながら強くなっていくタイプにだろう、それだったらダンジョン攻略が合ってると思う。


   ●


 そして、特に危なげもなくついに二十階層に到着。

 前回入ったダンジョンとは違い、ここからボス部屋ですよというような大きな扉とは無かったが、なんだか空気が変わった気がした。

「レイル」

「はい」

 俺とレイルはそれぞれの剣と短剣を鞘から抜く。なんかめっちゃやばい気がする、ドラゴン状態のクリオと初めて会った時のような嫌な圧だ。

「全周警戒」

 俺たちは特に打ち合わせとかもしてないが背中を預け合い、全周を警戒しながら先に進むと。


「ぎゃーーーー…………」

「うわーーーー…………」


 五人で顔を見合わせる。

 人の悲鳴のような叫び声が奥から響いてきた、アイルシェンがいてもたってもいられなくなったのか、駆け出そうとするが俺は彼の腕を掴む。

「レイジ!助けないと!」

「待てお前まで死ぬ気か!俺から離れるな!」

「でも!」

 その気持ちは痛いほど分かるが、敵が何かも分からない状況も分からないんだ、無闇に突っ込むのは愚策だ。

 それに。

「今から行っても間に合わない」

「くっ…………」

 叫び声からして良くて重症、悪くて死んでいる。叫び声を出すまでもなく死んでいる人もいる可能性がある。

 ここはゆっくり確実に行きたいのだが。

「レイジ、魔力探知が使えません」

「ああ、厄介だな」

 魔力の空間に霧がかかったような感じがして、至近距離のレイルの魔力を感じるのがやっとだった。この階層の特性なのか、ダンジョンウルフの特性なのかはまだ分からない。

 ゆっくりと周囲を確認しつつ前に進んでいくと、大きな広間に着いた、ここがダンジョンウルフが出るという大広間に間違いなさそうだが。

「ヤバいな…………」

 人間の叫び声が少なくもと二人はしたはずなのに、目を凝らして探してみるが、怪我人も死体もどこにも見当たらない。

「レイルこれって……」

「食べられたと思っていいと思います」

 だよな、血痕は至る所にあるがどれも古い、てことはひと飲みしたってことか?ヤバすぎだろ。

「ヴッ……」

「伏せろっ!!」

 聞いてはいけない音にいち早く気づき振り返ると、ダンプカーぐらいある大きな狼がリヴァールの上半身を既に咥えていて、身体を持ち上げると同時に。


 ぶちっ。


 上半身を食いちぎり、血飛沫が舞う。

 いくらなんでも気配が無さすぎる、こんな無音で真後ろまで近づいてこれるものなのか?考えている場合じゃない。

雷炎爆裂砲(ブレイズカノン)!」

 みんながしゃがんだと同時にぶち込んでやるが。

「えっ?」

 リヴァールだった肉塊を貪りながらダンジョンウルフは涼しい顔をして食事をしていた。

 魔法が効かない?

「グルドォォ!!」

「ローク!だめぇ!!」

「うぉぉぉぉ!!」

 もはや錯乱状態のアイルシェン、ライルオンは腰が抜けて動けない様子だが、アイルシェンの方がダンジョンウルフに向かって切込みを仕掛ける。

「待て!」

 がぶっ!

 暗闇から出てきたもう一頭のダンジョンウルフに横から頭部を噛まれ、そのまままた暗闇へと消えていった。

「え?」

 ここまでほんの数秒。

 何も出来なかった。

「レイル!ライルオンを守れ!」

「わかりました」

 悲しんでいる暇は無い、せめて彼女だけでもっ。

 リヴァールをまだ食べているダンジョンウルフに向かって手をかざして、魔力を練り上げる。消えた一頭は気になるが再び襲ってくるまでに発射は可能だ。

 手のひらに三種類の魔法陣を展開させ、狙いを定める。

「|炎雷霆衝撃砲《ヴルカヌス・テルミナス

》!」

 魔法障壁で弾かれた可能性がある、余程高位の魔物では無い限り、この貫徹力増し増しの貫通魔法は防げないはずだ。

 ドッバーーーーン!と先程とは打って変わって天井が崩落しそうなほどの衝撃派がダンジョンウルフを襲うが、やつはやはり涼しい顔をして手を舐めていた。

「なんでだよ……」

 無傷なダンジョンウルフに愕然としていると。

「カハッ!!」

 後ろから思いっきり狼の前足で振り払われ、ドゴーンと壁に打ち付けられた。

「レイジ!」

 くそ、消えた一頭とは全く別の方向から攻撃が来たぞ、魔力探知が使えないし、視界も悪くて何も分からない。

 崩れた瓦礫から這い出すと、ライルオンを抱えたレイルに手を引かれるが、目の前には信じ難い光景が広がっていた。

 ダンプカー程の大きさのダンジョンウルフが三頭、アイルシェンとリヴァールの肉塊を奪い合っていた。

「ローク…………」

 その光景をまじまじと見せられるライルオンはこの状況にもはや涙も出ないようで、座り込んでただその様子を見ていた。

「大丈夫ですか?」

「ガハッ!ゴホッ!ああ、魔法が効かないぞ」

「みたいですね」

 咳き込むと背中を優しく叩いてくれる、障壁で防いでいる感じがしない、単純に効いていない感じがした。まるで、レイルの物理無効と一緒だ。

「レイルはライルオンを守るのに集中してくれ、俺がどうにかする」

「気をつけて」

 ランクはCの魔物だ集中しろ。剣を構えて、目の前の食事に夢中な三頭の狼を睨みつける。

 くそ、どうしてこうなった、俺から離れるなと言ったのに二人も守れなかった。油断もしていなかった、なのにあのダンジョンウルフは自らの魔力も遮断し、音もなく近づいてくる。これじゃ目隠しされて戦ってるも同然だ。

 まだ三頭は俺らなんかお構い無しで食事を楽しんでいる、他にもいる可能性が捨てきれない以上、俺は周囲を明るくするためにバレーボール大の火球を四方八方に展開し、一瞬大広間は明るくくなったが、すぐに火球は消えてしまった。

 こりゃ、ダンジョンウルフが魔法を無効にすると言うよりこの空間が魔力を吸っているな。かと言ってここからおびき出すのも難しいと思う。

「物理で殴るしかないか」

 雷を身に纏い、近接戦闘の準備をしていると、MPの減りが異常に早いのがわかった、魔法を使っている間にどんどん吸われるのか、いくら回復薬があるとはいえこりゃ長期戦は無理だな。

「雷…………」

 ぼんっ!

「あれ?」

 さっさと斬撃を加えて攻撃効果を確認しないとと剣をカチャっと構えた瞬間、レイルが精霊体の姿に戻ってしまい、ライルオンの膝の上で自分の身体をキョロキョロと眺め混乱している様子だった。

 魔力の供給が絶たれた?焦ってMPを送ろうとするがなんだかモヤモヤして全然レイルにMPを送れない。

 そして、妖精の姿になったレイルと、その後ろのライルオンに気がついた一頭のダンジョンウルフ。

「レイル!!」

 俺は咄嗟に駆け出したダンジョンウルフとレイルの間に割って入った。

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