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第27話 ダンジョン攻略

『帝国ギルド本部』

 新しい服に新しい装備、新しい武器、二人でニヤニヤしながらギルドの中に入ると、中に入った途端受付嬢に呼ばれた、顔を覚えられるのはいいけどまた面倒ごとだと嫌だなぁ。

 呼ばれるがまま受付の前まで行くと。

「お久しぶりですレイジ・アンサラーさん」

「あ、どうも」

 言うても一ヶ月半だが、深々とお辞儀されてこっちも二人でお辞儀をし返す。

「ギルドマスターがお呼びです」

 やっぱり、レイルと二人で目を合わせると同時にため息を吐く、なんだよなんだよ面倒ごとは今度こそ本当に断るからな。もうギルドマスターの部屋には何度も行ったので、二人でギルドの奥に向かう。

『応接室』

 ノックをすると「入っていわよー」と軽い返事が返ってきたので、もう無言で入ってやる。

「あら、やっと来たと思ったら今日は二人なのね。とりあえず座ってちょうだい」

 そんないつも多人数でつるんでいるわけじゃない。

「そんなに不機嫌そうな顔をしないでくれる?今日はクエストの話じゃないわ」

 おっと、ついつい顔に出てしまっていたようだ、パンパンと頬を叩いてニコッと作り笑いをするとレイルが横で笑っていた。

「じゃあなんなんですか、アステさん?今、デート中なんですけど」

「あら、そうだったの?」

 アステさんがレイルを見ると何故か頬を赤らめ目をそらす、それを見た彼女は「そう、ふ〜〜~ん」と何か分かったかのようにニヤニヤしていた。まさか俺らのこと見てないよな?

「大丈夫、話はすぐ終わるわ」

 じゃあなんなんだってばよ、と首を傾げていると。

「魔王様が面会を希望してるわ」

 終わった。

 俺とレイルのゆっくり異世界スローライフは音を立てながら崩れ去るのがわかった。

「断れ……」

「るわけないでしょ、私の首を飛ばしたいの?」

「デスヨネー」

 だは~と項垂れているとレイルが背中をさすってくれる。

「刺客が来たでしょ、こっちも感知してはいたけど、なんか上手いこと丸め込んでたから特に手出しはしなかったのよ。それでそれを報告したら、魔王様が一度面会して処遇を決めたいと言ってるらしくてね」

 処遇…………。

「打首獄門ですか…………?」

 アババババと震えていると笑われた。

「そんなことは無いわよ、魔王は魔王でもよその魔王よりはだいぶ寛大なお人よ、会ったらわかるわ」

 そういうものなのかな、とにかく了承しないと帰れないし逃げれないのでその件は了承するしかない。

「日付は追って連絡するわ、迎えも用意するからあまり深刻に考えずに待っててちょうだい」

とだけ言われて応接室を後にした。

 それでこれからどうしよう、帰る?クエストを受ける?魔王が呼んでるんだし一旦帰った方がいいか?いやでも、せっかくのレイルとのデートだしな。

 ブツブツ言いながらロビーに戻ると、レイルはクエストの掲示板を見つめていた。

「これに行きましょう」

 掲示板を指さすレイル、内容はダンジョンボス『ダンジョンウルフ』の攻略で攻略ランクはC。冒険者ランク的には多分練習にはちょうどいいランクのクエストだ。

「うん、行こうか」

 笑顔で返すと、彼女も満面の笑みで喜んでいた。


   ●


 目的地にはレイルを抱えて俺の風魔法でひとっ飛び、目的地の『アレテレダンジョン』に到着した。

 そしてここは攻略ランクがちょうどいいせいか、冒険者が入口で列をなして入場を待っていた。ざっと四十人ぐらいいるかな、ダンジョン内部はこの前のダンジョンと比べ物にならないぐらい広いみたいだし冒険者でギュウギュウってことはないと思うけれど。

「結構いるね」

「私たちみたい訓練のために使っている人も結構いるのでしょう」

 列に並んでみんなが話しているのを盗み聞きではないが聞いていると、連携の確認だったり、単なる腕試しだったり、単純にお宝目当てだったり多種多様な人が集まっているみたいだ。確か、完全踏破はされていないはずだから奥に行けばまだ見ぬお宝とかあるかもね。

 そうして、いろいろとキョロキョロしていると、後ろに並んでいたルイさんをもっとアイドル系にした少年よりの青年に声をかけられる。

「君はこのダンジョン初めて?」

 へ、誰?とレイルと二人で警戒の目で見つめ返すと。

「あぁ、ごめんごめん、僕はローク・アイルシェン、後ろの二人は」

「グルド・リヴァールだ」

 ガタイのいいジムとかによく居そうなスポーツ刈りの青年、盾を持ってるし装備的にタンクかな。 

「ミミル・ライルオンです」

 魔法の杖を持っていて片目隠れのピンク髪ショートヘア、ローブで隠れてはいるが見たらわかるスタイルはいいと思われる魔法使いの女性。

「なんですか?」

 じとーっとした目で構わず見返し続ける、俺とレイルのデートを邪魔しようもんなら誰だろうと許さない。

「そんなに警戒しなくても、同じ冒険者なんだから」

 苦笑いされてしまった。

「いや、僕たちもこのダンジョン初めてだからさ、見た感じキョロキョロしてたから君たちも初めてなのかなって」

 そういう事ね、粗方初めてでよく分からないから途中まで一緒に行きませんか?って感じだろう、この人たちも見た目的に歳は俺とそんなに離れてないみたいだし、高校生のノリで来たって感じか?でもここは入場最低ランクDのダンジョンなので、駆け出し冒険者とかではなさそうか。

 んー、とジト目で終始見つめ返しているとレイルの方が口を開く。

「途中まで一緒に行きますか?」

「いいのか!?」

 パァッ!と顔をキラキラさせる青年ことアイルシェン、みなも言わなくて済んだのでホッとしているようだ。

「おいレイル、いいの?」

 普段はレイルの方が嫌がりそうなのに。

「レイジと歳もそんなに変わらなさそうですし、経験という観点から見れば一緒にいてあげた方がいいのかなと」

「優しいな」

「レイジ程ではありません!!」

 後進の育成に積極的で冒険者の鏡だな、アイルシェンの方は俺たちと一緒に行動できるのがよほど嬉しかったのか、三人でワイワイと喜んでいる。

「俺らは結構奥まで行きますからね、無理だと思ったらいつでも帰っていいですから」

「わかりました!」

 元気だけはいいな。

「はぁ、レイジ・アンサラー、魔法使いだけど後衛も前衛もできるから」

 とにかく挨拶はしとくか。

「え、前衛も?どおりでローブを着てるのに剣を背負ってる……」

 キラキラと尊敬の眼差しで見られる。やめろやめろ、そういうのじゃないんだよ。

「レイルです、レイジの『相棒』です。基本的には中衛か前衛です」

「凄い、前衛もできるんですね!」

 レイルは女性のライルオンという人から尊敬の眼差しを受けていてふふんとまた胸を張っていた。

 そしてとりあえず受付を済ませてダンジョンの中に入り、特にまだモンスターとかでなさそうなので世間話をしつつ下の階層へ向けて歩いていた。

「えっと、アンサラーさん」

「レイジでいいよ」

 会ってすぐだから仕方ないが他人行儀過ぎて気持ち悪いので、普通に話すように言った。

「レイジは冒険者ランクはいくら?僕たちはこの前Cランクに上がったばかりで、手始めにここに来てみようかってなって」

 まあ、大方予想通りだな。

「俺?Aマイナス」

 ピタッと三人が足を止め、なんだよー、と振り返るとガタガタと足を震えさせていた。

「す、すみません、ぼ、僕たちだいぶ失礼なことを」

「見た目若かったので!悪気はありませんでした!」

「ごめんなさい!!」

 冷や汗をダラダラ流して水溜まりが出来ようとしていた。

 そうだよな、CランクからすればAランクは恐らく雲の上の存在だろう、絶対数的にもAランクは少ないし会えることも滅多にないと思う。だってギルドマスターがAマイナスだし。

「気にしてないよ、Aランクがここにいる方が変だし」

 推奨Cランクのダンジョだしね、奥に行けばCではきついかもしれないけど、Bランク以上の人はもっと違うダンジョンやクエストで忙しいと思うし。

「あ、では、Aランクの人の手を煩わせる訳にはいかないので僕たちはこの辺で…………」

 さっきまでのフランクさはどこに行ったのか、急にペコペコしだして終いにはどこかに行こうとしている。

「離れると危ないよ」

「え」

 ガチャン。

 言ってる側からアイルシェンが床のトラップを踏み抜き、正面から杭が着いたハンマーが振って来たのでサンダーショットで簡単に打ち壊す。こんな入口付近で発動してないトラップなんて、みんな避けてるってことだよな、大丈夫かこいつら?

「む、無詠唱……」

 腰を抜かして地面に尻もちを着いている三人、本当に大丈夫かよこんなんで、俺ら居なかったら普通に死んでるぞ?

「帰るなら今のうちだ」

 厳しいようだがこれが現実だ、アイルシェンは生唾を飲み込み他の二人と目を合わすと。

「行きます」

 何か覚悟を決めたような顔、大丈夫だとは思わないが無理に返すのも可哀想だ、自分で言うのもあれだが俺ってとことん優しいというか甘いな。

「離れるなよー」

 バッとローブをかっこよく翻し、先に進もうとすると、アイルシェンは俺の右腕に、ライルオンは俺の左腕に抱きつき、一番頼りになりそうだったリヴァール、しかしこいつは結構なビビりだったみたいで俺の背中に隠れて震えている。

「大丈夫かよ」

 俺のため息混じりの言葉にレイルは傍で笑っていた。


   ●


 最初は怯えていた三人は意外と連携はしっかりしていて、低級のスケルトンが現れた際、攻撃を任せてみると案外すぐに倒して見せた。

 攻撃方法としては、タンクのリヴァールが敵を引き付けて、アタッカーのアイルシェンが魔法使いのライルオンの強化魔法と攻撃補助を受けて切り込んでいく形。

 典型的といえば典型的だが、彼らにはそれがあっているように見えた。上級に通用するかはまた別の話として。

「すごいじゃん」

「あ、ありがとうございます!」

 テヘヘと照れているアイルシェン、無難な戦い方だし別に悪い戦法ではないのだが。囲まれたりしたら苦しくなるとは思う、まあ、俺が指導できる立場じゃないし、魔法使いのライルオンの技量がどこまでか分からないけど。

「レイジさん……」

「レイジでいいよ」

「レイジの戦い方を見せて貰ってもいいですか?」

 そうなるよね、見せろって言うのは簡単だけれどせっかくだし買ったばかりの剣を使ってみるか。

 少し先に行くとスケルトン二体とダンジョンスパイダー二体が出現、試し斬りにはちょうどいい。

「参考になるかは分からないけど、よく見てて」

 本当によく見てないと見えないぞ。

雷刹(フルミナス)

 コンマ数秒の出来事。

「え?」

 パッと周辺が俺の雷の瞬間移動で光ると彼らが何が起こったか理解するよりも前に、スケルトンとスパイダーは地面に倒れ、光になって消えようとしていた。

 目頭をゴシゴシとする三人。

「え、え??」

「全く見えなかったぞ……」

「雷の移動魔法?どんな原理??」

 おっ、ライルオンは意外と見込みがあるな、初見でそこまでわかるか。アイルシェンとリヴァールはノリでここまで来た感は否めないかな、厳しいこと言うけど。

 カチャンと抜いた剣を鞘に収め、どうだと言わんばかりに振り返ると、キラキラした目で彼らは俺のことをさらに尊敬の眼差しで見ていた。

「弟子にしてください!」

「俺ももっと剣技を磨きたい!」

「わ、私も魔法についてもっと知りたいことが!」

 もうワチャワチャだ。

「ああもうっ!俺も修行の身なんだよ!弟子は取らないし取れない!」

 そう言うと三人は愕然としていた、可哀想だけど事実だし仕方がないじゃん。


   ●


 そんなこんなで任せれるところは彼らに任せつつ、厳しいところは俺とレイルで対処していると、休憩部屋というかセーフティーエリアに到着した。以前入った初心者用のダンジョンにもあったが、ここのダンジョンにもセーブ部屋みたいなところもあるんだな、順調な滑り出しで十二階層に来ているのでたまにほかのパーティーには会ったりしたが特にいざこざもなく、ここには先客もいなかったので、今日はここに泊まることとなった。

「まさか、初日で十二階層まで来るとは」

「俺らこの階層にいていいのか?」

「疲れた〜」

 疲労困憊の様子な彼ら、無理もないか普通なら五階層ぐらいで帰ってもいいぐらいだ。まあでも、着いてくるって言ったのは彼らだしな。

「目的地って何階層だっけ?」

「二十階層ですね」

「じゃあ明日には終わるか」

「そうですね」

 俺ら基準で話を進めていると、アイルシェンたちは顔面蒼白になっていた。

「キツイならやめとく?」

 厳しいこと言うかもしれないけど。

 しかし、彼らは目を合わせると。

「行きます」

 と力強く答えてくれる、なんだ、やる気があっていいね。なんて思っていると。

「多分一緒じゃないと生きて帰れないです」

 思わず転けそうになった。よくよく考えたらそうか、魔物も結構強いし、変に返すよりは一緒にいた方がいいな。

「とりあえず野営の準備をしようか」

「はい!」

 ダンジョン内でプチキャンプ、前回のダンジョンは一日で踏破してしまったのでこんなことはしなかったが、レイルはこういうことがしたかったのかルンルンでテントを張ったり、焚き火の準備をしてりしてくれていた。

「凄い準備いいですね、てかどこに持ってたんですか?」

 アイルシェンたちは地べたに寝床を広げただけ、一方俺らはテントを立てて、コットのようなベッドを広げて、普通にキャンプをしようとしている。

「ああ、レイルのスキルが便利でね、いろいろ持てるんだよ」

「へぇ、いいですねぇ」

 まさに空間保管様々、荷物制限とか全く気にしなくていいので野営とか豪華になりがちだ。そう見ると彼らが可哀想に思えてきたので、明日には帰るし出かける前に作って空間保管に保管していたレイル特製のサンドウィッチを分けてあげることにした。

 特製サンドウィッチをあげるとなんか三人は泣きそうになっていたが、寝るにはまだ早かったので、食後はアイルシェンとリヴァールにはアウルに教わった剣のコツを、ローブを脱ぐとやはりボンキュッボンだったライルオンには魔法とは何ぞやと言うのを偉そうに教えてあげた。

 

 

 

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