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第25話 居候

 気がつくとまだ昼前で安堵するが、気絶しすぎな自分にげんなりしている場合ではなかった。

 サキュバスは何故かクリオに正座をさせられ滾々と怒られている。

「血を吸うのは百歩譲って許そう、サキュバスが自然回復が不得意なのは知っておる。だがな、みなも吸うな!お前に吸われるぐらいなら我が先に全部レイジの魔力を取り込んでやるは!」

 クリオさん??彼女の後ろでレイルもアウルもうんうんと聞いているので、ちょっとおかしな事を言っていることに誰も気がついていない。

 せっかく全回復していたMPが、半分以下になっているのを確認して重い腰をあげる。

「まあまあ、俺は生きてるからその辺に」

「なっ、お主もう起きたのか。だからサキュバスを甘やかすでない!」

 そうは言ってもねぇ、困った時はお互い様だし別に甘やかしている気はさらさらない。

「ごめんねぇ〜、今まで吸った血の中で一番美味しくてつい吸いすぎちゃったぁ〜」

 テヘペロと言った感じだが、クリオの怒りは収まらない。

「なにがごめんねぇ〜じゃ、ごめんなさいじゃ!」

「ごめんなさ〜い」

「語尾を伸ばすな!」

「チッ、私のママかよ。この没落ドラゴンが」

「なんじゃと!?もう一回いってみろ!」

 このサキュバス緩急がすごい、俺に対してはメスガキムーブなのにクリオに関しては完全に下に見ている、このままじゃ殴り合いの喧嘩になりそうだったのでクリオを三人がかりで取り押さえるが。

「なんで我なんじゃ!あいつが売ってきた喧嘩じゃ!」

 興奮冷めやまぬ状況。

「クリオ、落ち着いて、これは命令」

「うぐぬぬぬ」

 こめかみに血管をピキピキと浮かび上がらせながらも、俺の命令に体が勝手に従ってしまいベッドの縁にちょこんと座るクリオ。困った時はこの手に限る。

 にしてもレイルも結構騒がしい方だとは思っていたが、クリオはその遥か上を行くなぁ、レイルの出番が最近少ない気がする。

「なぁに?人間と契約したの?没落も没落じゃんウケるぅ」

 ケタケタと笑うサキュバスに血管ブチ切れ寸前のクリオ。うん、身の程をわきまえてもらわないと。

 俺は無言でサキュバスに近づき、折れてない方の角をガシッと掴む。

「俺の家族をバカにするな」

 こういうのは威圧感が大事だ、ゴミを見るような目でサキュバスを睨み下してなんならいつでも電撃を加えれるように手に帯電させていると。

「ごめんなさい♡」

 なんか彼女は頬を赤らめていた。

 この二人本当に調子が狂う、ため息を吐きながらクリオの隣に座ると。

「我は家族なのじゃ」

 肩に頬をスリスリされた、喜んでいるようでよかった。

「罰としてしばらく吸血は禁止な」

「そんなー!こんな上質な血をお預けなんて生き地獄ぅ」

「罰は罰だ」

 ぷくーとふくれっ面をするサキュバス、サキュバスじゃなかったらまだ可愛げがあるんだけどなぁ。

「ちょっと待ってくださいレイジ、しばらくって、サキュバスを匿うつもりですか?」

 珍しく声を若干荒げるレイル、あー、勝手に回復するまでいてもらう気になってたけど流石にサキュバスは彼女たちも嫌か?

「んー、角が生えないとなんにもできなんいんでしょ?」

「まあ何も出来ないことは無いけどぉ、翼も片方ないから飛べないしぃ、魔力は半分以下だしぃ。あ!夜の営みは…………なによ、冗談じゃない」

 みんなに睨まれて最後まで言うのをやめていた、賢明な判断だ。元の魔力がどんな量かは知らないが、今の感じはあの夜の時に比べて全く脅威には感じない。

「この子も心配だし」

 いつの間にか俺の膝の上に座ってきて尻尾を振り、完全に懐いてしまったヘルマ、頭を撫でると嬉しそうにしているし、猫耳を触ると「へへ、くすぐったいッス」とこれはこれで反則的に可愛い。

 あ、別にハーレムを作ろうとしている訳では無いよ!彼女たちのことが心配だからだ!

「はぁ〜」

 怒ってる?だよね、なんだかんだレイルには負担をかけることになると思うし、二人でゆっくりスローライフを送ろうとしてたのも事実、それなのにどんどん人が増えている。

「ごめん……」

 謝るとヘルマも一緒になって耳をしぼめてくれる。

「謝らなくていいです、レイジが優しいのは知ってますし、そんなレイジが好きです。なので」

 サキュバスとヘルマの前に立つレイル、なにをするのかな?

 ぽんっ!

 何故か羽根が四枚ある精霊体の姿になる彼女、そういえばなんか久しぶりにみた気がするな、俺の訓練も兼ねてずっと擬人化してたし、擬人化してた方が便利とか言ってたし。

「何が言いたいか分かりますよね?」

 空中に浮かびながら椅子に座ったように足を組んで、ついでにふんすと腕も組んでいるレイル、わかるってどういうこと?

「精霊っ…………」

 口をあんぐりて開けているサキュバス、するとゆっくりと彼女は俺の方を向き目が合う。

「転生者…………」

 え、そんなすぐ分かるの?なんかガタガタ震えだしてしまったサキュバス、ヘルマの方はクエスチョンマークを浮かべよくわかっていない様子だが。

「はいはいわかったわかりましたー、降参でーす、もう何もしませーん」

 ベッドに倒れ込んでしまった。

「えらく素直じゃな」

「どういう風の吹き回しだ?」

 クリオとアウルも急な展開に怪しんでいるが、多分単純だ。

「いくら上級淫魔といえども正攻法で転生者に勝てるわけないじゃーん、降参降参。だから依頼主も新月に攻めろって言ったのかー、そこら辺ちゃんと言って欲しかったぁ」

 あーかったるいもう何もやる気しなーい、とふて寝してしまった。しかし、情報共有してないのかよ、転生者だと知られたらこうなると知ってたからかな?

「お姉ちゃん、これからどうするッスか?」

 布団にくるまってるサキュバスをゆさゆさと揺らすヘルマ、どうするのだろう、帰る場所とかあるのかな?

「そうだねぇ〜、しばらくここにいる〜」

「え?」

「はい?」

「なんじゃと?」

「なっ」

「わかったッス!」

 サキュバスの方から言うので俺たちがびっくりしている間にヘルマだけが納得し、俺の膝に飛び乗りジャストフィット、しっぽをふりふり振っていて可愛いのだが。

「ちょっと待て、どういうつもりじゃ!しばらくっていつまでじゃ!」

 ふて寝しているサキュバスを引っ張り起こして両肩を持ち、乱暴に首を前後に振っているクリオ。

「だってぇ帰る場所ないしぃ、魔力もないしぃ、ここにいる方が安全じゃん?人嫌いなテトも懐いてるしぃ」

「だからといって勝手に決めるでない!お主はサキュバスでレイジは男なのじゃぞ!レイジが正気を失ったらどうする」

 そうそう、少しの間なら居てもいいとは思っていたがそろそろ限界だしクリオの心配はよくわかる。「その時は私が処理すればいいじゃーん、ぐへっ」

 いつの間にか擬人化しサキュバスの背後にに回りこみ彼女の首を絞めるレイル、口元は笑っているが目が本気だ。

「レイジは私の『相棒』なんです」

「ちょ、まっ、ギブギブ」

 相棒という言葉に取り憑かれているレイル、もはやその言葉は半分呪いのようになってるんじゃないかな?流石にやばそうだったので「まあまあ」と止めてあげる。


  ●


「レイジ・アンサラー、冒険者『雷鳴の水鏡』リーダーだ、歳は十七で知っての通り転生者」

「レイルです、レイジの『相棒』です。忘れないでください『相棒』です」

「クリオネクス・フロストヴェインじゃ、友尚正しき竜族じゃ、没落した訳ではなくここにいるのは強いレイジに惚れたからじゃ」

「狐獣人のアウルスルア・ルペシュヴァルツだ、剣技はそれなりに得意だ、マスターは私が守る」

「改めて今日からよろしくお願いするッス!猫獣人のテト・ヘルマといいます、歳は十九歳、特技は影移動と家事全般ッス!」

「年上!!!???」

 リビングダイニングで改めて自己紹介をしていたのだが俺よりもだいぶ体格の小さく、膝の上にピッタリおさまりもはや子供と思っていたヘルマがまさかの年上で、ガビーーンと口を開けていると。

「なんて呼んだら良いッスか?僕はテトでいいッス!」

 とても年上とは見えない、デレッデレの猫のように俺にすりついてくるが周りの彼女たちは何故か止めない、サキュバスじゃないからかな?

「あ、えっと、レイジでいい、ですよ?」

「なんで敬語なんッスか、歳は気にしなくていいッスよ、獣人なんで年より見かけッス」

 俺の胸に笑いながら頬をスリスリするテト、やばい、守りたいこの笑顔。ほわわぁ、と猫を撫でるようにヨシヨシしているとレイルにやっと睨まれたので真顔に戻る。

「エレノア・ロエよ、男の生気は他所で摂取するから安心して。あ、でも美味しい、じゃなくて早く回復したいから血は定期的にちょーだいね」

 他所ってどうするのだろう、まあ、俺が気にしても仕方ないか。俺の魔力と一般人の魔力は多分相当違うから血はあげるとしよう、早く良くなって貰いたいし、ツノを折ったのは俺だし。


 色々なことがあり六人での生活が始まる。

 部屋についてはエレノアとテトが同室。

 そして、役割分担としてはレイルとテトで家事全般、俺とクリオ、アウル、時々レイルで日中は鍛錬、エレノアは夜の街へと男の生気の接種がてら出稼ぎに出ていた、どうやら娼婦街で働いているらしい。エレノアについては別に彼女とかでは無いので、その仕事については俺は何も思わないし誰も何も言わなかった。


 そして一週間が経ち、朝五人で朝食を食べていると、仕事終わりの胸元が大きく開いたドレスに毛皮のショートコートを羽織ったエレノアが甘い匂いをぷんぷんさせながら帰ってきた。

「お疲れ様です、エレノアの分もありますよ」

「そう?じゃあ食べちゃおっかな」

 荷物を部屋に置き戻ってくると空いていた俺の正面の席に座るエレノア、すると、食事を始める前にドサッと布袋を机の上に置いた。

「これ、今週の稼ぎ」

「え?」

 困惑していると彼女が痺れを切らし説明してくれる。

「私とテトの生活費!タダで住まわしてもらおうなんてこれっぽっちも思ってないから!私が必要な分は抜いてあるから自由に使って」

 マ?エレノアって意外といい子?つい一週間前に殺し合いの戦いをしていたとは思えない態度と謙信さになっている。

「え、でもこれだいぶ多いよ?」

 ざっと数えただけでも8000ギルはありそうだ、この前のゴブリン討伐の報酬が20000ギルだったのでその多さの異常さがわかる。

「私はこの仕事か暗殺ぐらいしかできないからさ〜、汚い金かも知らないけど上手く使ってよ」

 ニヒヒと笑う彼女、しかし。

「エレノアが体を張って稼いできたお金だ、汚くない。俺にできることはなんでも言って」

 いくらサキュバスでも好きでもない男、かっこよくもない男と時間を共にするのは生気のためとはいえ辛い仕事だと思う。それを汚い金なんて決めつけちゃダメだ。

 その言葉にエレノアはんふふふと久しぶりに不敵に笑い。

「ありがとっ、それじゃぁ、今日は血を吸わせてね」

 頬杖した彼女にウィンクされちょっとドキッとしてしまったが、隣にいたレイルとクリオ二肘打ちされて我に返る。

「お主、鼻で息きしとるな」

「だって一緒に生活してるのに失礼じゃん、気合いだよ」

「お主も律儀というか馬鹿じゃのぅ」

 呆れられてしまったが仕方ないじゃん、ここ一週間実害があった訳じゃないし、せめてもの誠意だ。それに、ずっと吸ってたら慣れてきそうだし。

「じゃあ、とりあえず貰っておくよ、物入りだったら遠慮なく言ってね」

「必要な分は抜いてあるって言ってんじゃん、ウケる」


  ●

 

 そして食事を済ませ、片付けはレイルとテトに任せて俺はエレノアに手を引かれて彼女の部屋に連れ去られてしまった。血を吸われるだけなのだが何かドキドキしてきた。

 ガチャ。

 およ?

 ドアの鍵を締められ、シャーとカーテンも閉められる。血を吸ってるのも見られるのは恥ずかしいか、前はみんなの前で吸ってた気がするけど。

 俺はどうすればいいんだ?とソワソワしていると「ん?座っていいよ?」と彼女のベッドにちょこんと座ると、彼女は仕事着のコートを脱ぎ、ハンガーにかけると俺の横に座る。

 すごく可愛い赤を基調としたドレス、スリットが入っていてキレイな太ももがあらわになっているし、胸元もガッツリ開いているのでその大きな胸の谷間に無意識に目がいってしまう。

「ド、ドレス可愛いね!」

 変にドキドキしてきたので意識をそらすために、女はとりあえず褒めろと前世で言われたような気がしたのでとりあえず褒めてみると。

「そう思う?お気に入りなんだよねぇ、ちょっと高かったけど買ってよかった、ありがと」

 ニコッと笑う彼女にまたドキッとしてしまう俺、血を吸われるだけなのに何こんなドキドキしてんだよ、そういうお店に来たんじゃない!あ!匂いのせいか!流石にヤバそうなので口呼吸に切り替える。

「どの辺が可愛い?」

「ふぇ!?」

 どの辺ってどの辺よ!全体的に似合ってるとか言うのも変だし、えっとー、と全身を見直していると、彼女が自分の胸元を両手で隠す。

「エッチ」

「見てないよ!?(見てた)」

「んふふふ、冗談」

 すると彼女は俺に覆い被さるように押し倒し、馬乗りの状態になる。あまりに自然すぎてさすがお店で働いてるだけあるなと感心してしまった。

「どれだけ吸っていい?」

「え、これから鍛錬もあるから、少なめで」

「わかった、ちゅ」

「!?」

 馬乗りになった状態からそのまま顔が近づき、頬にキスをされ首筋をペロペロと舐められビクビクっとしてしまう。

「ちょ、何を」

 彼女を離そうとすると両手首をベッドに押さえつけられる。

「消毒してんのっ」

「え、ああ、なるほど」

 サキュバスの唾液にはそんな効果が?人間の病気を貰うこととかあるかは分からないけどサキュバスを介して感染とかは普通にありそうか、この世界の医療がどこまでかは知らないけれど、消毒しないよりかはマシか。と、自分に言い聞かせる。

「変に動いたら痛いからね、じぁ、いただきまーす」

 かぷっ。

 少しチクッとした痛みが首筋を走るが、後はなんだかドクドクと吸われている感じがするだけで、彼女の息継ぎの吐息が首元にあたってすごくゾクゾクと言うかゾワゾワする。

 そして、五分ぐらい経っただろうか、目を瞑って悶々としていると。「ぷはー」と彼女は口を離し吸血は終わったみたいだ。

「大丈夫?くらくらしたりしない?」

「多分大丈夫」

 終わったと思って起き上がろうとするが、馬乗りになったままの彼女はどいてくれる気配がない。

「エレノア?」

「…………」

 ボーッと無言で見つめてくる彼女、名前を呼んでも反応しないし太ももを触って揺らしてみると。

「あ、ごめんごめん!」

「大丈夫?」

 ワタワタの俺の上からどいてベッドの縁に座るエレノア、なんか顔が赤い気がしたが気のせいかな?

「着替えて寝るから出てって!」

「え、ちょ!わかったから!」

 締め出されてしまい、リビングにいたクリオと目が合う。

「よく我慢できたの」

「え、まあ、気合い?」

「馬鹿じゃのぅ、アウルスルアが外で待っておる、邪な心をうち払ってもらえ」

「わかりました!!」

 そして俺はこっぴどくアウルに木刀でボコボコにされるのであった。

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