帰省
八月十一日。
時刻は十七時を回ったころ。
拓哉は家路を急いでいた。
拓哉は今日このまま実家に帰るつもりでいた。
拓哉の会社は明日の十二日から夏休みと言うこともあり、今日中に実家に帰ってしまう魂胆だ。
だが花火大会からわずか四日の今日帰るのだったら、もっと早く光に告げるべきだったであろう・・・
何故それをしなかったのかは本人以外には謎である。
(本人曰く、言いづらかったらしいが・・・)
帰りの行程は新幹線だった。
チケット自体は二週間ほど前には用意していた。
便利なもので、最近はスマホから簡単に予約が出来る。
だから座れないという心配はないのだが、逆に乗り遅れる心配があったので急いでいた。
「タク君おかえりー。」
「ただいま。ごめんね、荷物持ったらすぐ出るから。いない間、よろしくね!」
「はーい。気を付けてねー。」
光は特に不満な様子もなく、笑顔で答えてくれた。
拓哉は光への挨拶もそこそこに、昨晩中に用意しておいた荷物を手に取りそそくさと部屋を出て行った。
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新幹線の乗車時間には問題なく間に合った。
実家や地元の友達への手土産を買うのはもちろん、夕食用の駅弁を買う程度の余裕を持って新大阪駅まで到着した。
時間にルーズな拓哉だが、こういう時はちゃんと間に合うように行動するらしい。
新幹線に乗り拓哉の地元の『九州』へ向かう。
拓哉の実家は九州だった。
余談だが唯志も実家は九州だ。
新幹線「さくら」の指定席に座り一息を吐く。
光と住むようになって約二ヶ月。
だいぶ慣れてきたとはいえ、元々何の心の準備も無く突然始まった同棲生活。
疲れていないと言ったら嘘になる。
自分一人の時間は数えるほどしかなく、常に気を張っていた。
(ノムさんとか岡村君は常時この状態なのか・・・。)
拓哉にとってはこの新幹線での移動が、数少ない気の休まる時間の様に感じた。
普段街中では人一倍他人の目を気にする拓哉だが、何故か混雑する新幹線では気にならない。
心置きなくイヌ娘をしたり、光がいることで見れなかったアニメを見て楽しんでいた。
福岡県から特急列車に乗り換え、そこから更に二時間弱。
拓哉の地元の某県最寄り駅に辿り着いた。
時刻は既に二十二時を回っていた。
ふとyarnを見ると光から連絡が来ていた。
[タク君無事着いたー?こっちのことは心配しなくて良いからゆっくり休んできてねー!]
自分のことを気遣ってくれてるんだと思うと嬉しくなった。
それと共に、やはり先日からちょっと距離感が近くなってるなと実感し、自信を深めていた。
拓哉は地元が好きだった。
高校までの気の置けない友人も多くいる。
なにより職場から離れた解放感だろうか。
実家に帰る上で嫌な要素は毎年実家に帰る度に言われる「結婚は?」とか「彼女は?」くらいのもんだった。
久しぶりに ( とは言えGW以来なので三か月程度 ) 会った両親の車で実家に帰る。
やっぱり実家は落ち着く。
何より何もしなくても衣食住に困らないのが良い。
出来ることならゆくゆくはこちらに移り住んで実家暮らしに戻りたいものだ。
拓哉はそんなことを考えていた。
(光とのことは忘却している様だ。)
この日拓哉は長距離移動で疲れたのですぐに就寝した・・・わけではなかった。
いつもの拓哉なら疲れたとか言ってすぐ就寝するところだが、地元となるとわけが違った。
さっそくとばかりに地元の友人たちに帰省の報告。
そして明日の事についてyarnで連絡を取っていた。
明日はプチ同窓会だ。
中学卒業の十周年で少人数の仲間内で集まるらしいのだが、多少女子も来る。
拓哉は今からワクワクしていた。
--決して女子がいるからではない。
久しぶりの地元の友人と会うのが楽しみなだけだ。
拓哉は地元では多少強気になれるものの、地元でも女性との接点は少なく、今回集まる女性陣ともあまり話したことも無かった。
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まぁ女性陣には興味ないわけだけど?
俺には光ちゃんがいるし。
光ちゃんより可愛い子なんて日本中探してもそうそう見つからないからね。
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などと供述しており、あくまで女子が苦手なわけではなく興味が無い体で行くのだと、頭の中の誰かに説明しているのだった。




