まばゆく光って消えるもの
帰り道。
拓哉と光、二人での帰り道。
駅までの道のりは簡単だし、会場から駅に向かう人も多かった。
だから大丈夫と、帰りは唯志たちの道案内は不要だと伝えた。
そんな帰り道。
さっき唯志が言っていた言葉の本当の意味が少しわかった。
「--帰るまでが花火大会だぞ。」
小学生の遠足かよとか思ったけど、今なら意味も分かる。
花火を見た興奮が残っている。
恐らく同じ気持ちだろう帰る人波。
そして、名残惜しい寂しい気持ち。
これら全てが心地よい。
これらも含めての花火大会だと言うことなんだろう。
「花火・・・凄かったね。ほんと見に来て良かったと思うよ。」
拓哉がそう言った。
拓哉とは思えない発言だ。
拓哉は自分の意思を、感想をあまり言葉にしない。
まずは他人の意見を聞いて、出方を伺う。
それから当たり障りのない回答を述べる。
そうやって生きてきた、世渡りをしてきた。
本当の意味で自分の気持ちを口に出すことは滅多にない。
だけど、今日は違った。
いまだ余韻で興奮冷めやらぬ状態だからだろうか。
それとも新しい経験をして少しは成長したからだろうか。
素直な自分の気持ちを口にしていた。
「うん、本当に感動したよ。タク君、連れてきてくれてありがとう。ううん、タク君と会えたおかげだよね、ありがとう。」
光も少し興奮気味だ。
まだ花火の余韻が残っているんだろう。
「そんなことないよ。俺なんて・・・光ちゃんがいなかったら一生花火なんか行かなかったかもしれないもん。」
素直な拓哉の気持ちだった。
「そうなの?もったいないね~。折角タク君はこの時代の人なのに。」
「ほんとにね。光ちゃんのおかげだよ。」
「ふふ、変なの。連れてきてもらったのは私なのに。大げさだよ、タク君。」
光はいたずらっぽく笑った。
「そんなことないよ!俺は光ちゃんのおかげで一生しなかったかもしれない経験が出来た。他にも、色んなこと経験出来た。・・・霊能力者なんかと知り合えたほどだよ。本当に光ちゃんには感謝してるよ。」
拓哉は花火の高ぶりが残っているのか、珍しく熱く語っていた。
「そっか、私でも過去に来て役に立ってるんだね。」
光はニコッと微笑んだ。
その笑顔が拓哉には天使の様に見えた。
「・・・光ちゃんと出会ったのは俺にとって凄く良い事だったんだと、思う。」
「それなら私もそうだよ。タク君と会えなかったら、今頃野宿か風俗嬢らしいから。」
光は前に莉緒に言われたことを思いだして笑っていた。
「光ちゃんはさ・・・、俺にとって花火みたいなものなのかも。俺の目の前で急に光って現れて、俺の目を一瞬で奪って・・・。」
(そして、好きになってた。)
続く言葉は続けなかった。いや、まだ言い出せなかった。
だが、続く言葉は光が続けた。
「それから、あっという間に消えちゃう・・・かな?」
光は少し困ったような笑顔で言った。
「え?」
「違った?花火みたいなものって言うから、てっきりそう言う意味かと思った。」
そう言って笑った光の笑顔はどこか寂しそうだった。
「ねぇタク君。私が未来に帰ったらどう思う?」
光は拓哉の方を見ずに、夜空を見上げながら言った。
「・・・寂しい、と思う。」
帰って欲しくないとは言えなかった。
「そっか。私もきっと寂しいと思うんだ。それくらいこの時代の人にお世話になっちゃった。」
「うん。」
拓哉はそう返すのがやっとだった。
「タク君とか莉緒ちゃん。それに・・・唯志君。他のみんなも。少し嫌な人もいたけど、みんな良い人ばっかり。みんな優しいから、帰りづらくなってきちゃったな。」
「・・・なら、この時代に残ったら!?」
拓哉の精一杯の引き留めだった。
「うん。・・・考えとくね。」
光は困り顔で笑顔を見せた。
「でもどうせならもう少し過去に行きたかったな~。」
光が急に不思議なことを言い出した。
拓哉にはその意味が分からなかった。
「もう少し過去?どれくらい?」
「うーん、一年くらい?」
「一年?ほんとに少しだね。どうして?」
「さあ、なんでだろうね。少し過去だったらタク君ももっと早く花火見れたし、莉緒ちゃんとも同い年だったから・・・とか?」
光はてへっと笑っていた。
拓哉でもそれが嘘なんだろうとわかった。
「もっと過去に来てたら・・・。」
光はそう言って遠くを見ていた。
「来てたら・・・?」
続きの無い言葉に、拓哉は続きを促した。
「ふふ。なんだろね。でもその時も、タク君は私を見つけてくれるかな?」
そう言った光はまるで小悪魔の様に無邪気な笑顔で拓哉を見つめていた。
「・・・うん。必ず見つけるよ。俺一年前でもあそこを通るのが日課だし、きっと見つけるよ。」
「ふふ。期待してるね、タク君。」
いつの間にか駅が目の前だ。
名残惜しいがもう電車に乗って帰るだけ。
花火のおかげか、光と珍しくお互いの思っていることを話した。
お互いに今までは触れないようにしていた部分の本音を聞けた気がした。
二人の仲も以前より進展している証拠だろうと思い、拓哉は嬉しかった。
今日この日、確かに二人の距離は縮まった。
拓哉にとっては光と出会ってから一番進展があった大切な日になった。
そして今日この日、光にとっても大切な一日となったことを拓哉はまだ知らなかった。




