038チケット 改稿前
神経とよばれた線路。
色彩の溢れ飛び交う光の洪水、都市は眩さに漲っている!
そこへ、マテリアルの実在と実感を手渡すのは、高く聳えたビル群による遮られた視界。
それらはヤケにレトロで、鈍色の光沢を主張していた……
その中に誰がいて何があるのかは知られてはいないし、どうでもいいことだった。
存在者たちはみな、自らの存在という拠り所を欲しがっていたし、模索するばかりだった。
でも、それがなされるのは、いつのことだろうか?
生命。
静謐であり暴力でもあるその実在感は、ここでいう存在者たちにはあまり頓着すべき対象ではなかった。
彼らは、ある特殊な何かを求めては、さ迷い続けていたし、そうでなくても街を覆った快楽主義こそ生きることの進行形であったから。
そして、まったく、それに事欠くことはないも同然であったから……
『チケット』!
それこそが彼らにとっての答えだった。
例え生命を喪失しても、それにたどり着けるのならばそれこそが正解だったのだから。
列車が行く…
ノロノロとした運行…
そこへ存在者たちはぎゅうぎゅうに押し合って乗り、窓や列車の外枠の僅かな部品にさえ必死になって取り合っていた。
列車があたかも倍になって膨らんでいた。
停まる…
Syuuuuuuuu……
都市、都市、都市……
決して寂びれることはなく、永遠に続いていく都市の風景、そろそろと蛇行する神経を這う巨大な芋虫…
途端!
アリが散らばるように列車から降りた存在たちは、放射しては四方に限りなく広がった路地裏へと吸い込まれて消えていった……
喧騒、霧散、沈黙……
信号!
動き出す…
四方から新たな存在者たちは集まってくる。
すぐに膨れた列車はもう芋虫になって…
カタタマシイ不快音が谺した!
光…
色彩は狂っていく……
WOOOOOOOOOOOOOOO……
びゅしゅあ!
血液!
真っ黄色と真緑の混濁、あるいは分離した、血液の爆発。
死が破裂した!
死体は街を汚す。
残った者たちの目は、ヤバイくらいにイカレていた…
『チケット』!『チケット』!『チケット』!
取り憑かれたように…
それは生命を超えた極点だ。
列車を降りたのは、ペリフ。
彼は秘密の鍵を首からぶら下げていた。
狂騒や脅迫とは一線を画した、彼ならではの目的は、彼を皆とは違った場所へと彼自身を向かわせた。
ペリフは誰も寄り付かないところへヒトリ佇んでいた。
沈黙を超えた、無音の絶叫があった…
耳鳴りがする。
そこは、そう、ビルの入口である。
誰も寄り付かない永遠に立ち並ぶビル群…
そのひとつ、ぺリフは胸に下がったその鍵を使って、ゲートをくぐる権利を得ようと試みた。
……ガチャリ…
光?
…灰色をした光がぺリフのまなこに差し込んでいた!
ほんとうの無音だった。
沈黙はスローで…彼を彼とは違った…そして彼以外の掃いて捨てるほどに溢れ続けるその他の存在者とも違った世界を……
「…チケット……」
ペリフは思わずそう呟いた。
瞬間、もう、違う世界が広がるばかりであった……




