036 変化する村 改稿前
ドリンカー・ドレンチ
夕刻…
森とともにある村の、ひっそりとした古い木造りの家々の点々とつづく野道。
変幻する空は…淡いサイケデリックに流動して現実世界を超越的に包み込んでいた……
突然!
変幻する色彩の空の渦潮に…奥まった深い次元から急激に…
黒い…暗い不穏な何物かが……
壮麗なグラフィックを掻い潜っては…そのおもてへと飛び出した!
ZAAAAAAAAAAA……
土や屋根を叩く強い大粒の雨…
道は直ぐに泥濘し…あたりは雑音に轟いた……
ドリンカー・ドレンチは革袋に詰めていたマントを取り出してそれを羽織る…
目的の場所までは遠い…
分厚い革靴で…どうにかうまく収まって欲しいものだが……
雨と泥濘…
どうにか革靴にはまだ…雨が侵入はしていない…
グチュアッ…グチュアッ…グチュアッ…
(もう三周……)
重い足どりで…すでに劣悪な足場を進んでいく…
目的地はこの村ではない…
まるでシュールだな……
ドリンカー・ドレンチは目的地を目指す…
もう…村は…すでに四箇所目だったのだが…不思議なことには、すべての村が…ほぼ…というよりはただの一箇所を除い
て家々も土地も…あろうことか住人のいちいちでさえ…まったく同じそれぞれのフォルムに一致していたということ……
その、ただの一箇所の相違といえば…村のはじめに立てられた…たった一言だけ記されている標識の、その文字の内容が
違っている、ということで、その他のその標識のフォルムや、立てられていたその位置関係までが…全く同じだったという
ことだ。
ドリンカー・ドレンチは…村と村とのあいだの道のりを、これに関しては様々に特徴を示した個性の辺境であったが…そ
の道のりを越えるのに…いちいちを…旅のメインといってもよく、その体力と労苦を費やすばかりであった……
その長い道のりの果ての…ドリンカー・ドレンチは、第七の村を目指し歩くのである……
村はほんとうに小さくて…直ぐ様横切ってしまう位のひと並びの風景であった……
しかし…辺境を考えれば…数量としては半分を越してはいたものの、その終着点までの道のりは…考えない方がいいくら
いの、果てしないものだった……
ある時、ドリンカー・ドレンチは、ある行動に出た。
そのいくつ目かの村のことである。
標識の一文字を除いて、見事なまでに一致したその村に向けて…ひとつのそれは挑戦だといえよう…
それは或いは偶然の産物だったのかもしれない。
何番目かの村での出来事。
突然突風が吹いた!
ドリンカー・ドレンチは、そのとき大きなつばの帽子を被っていたが、突風に投げ飛ばされてそれは飛んでいく…
ガチリ!
ある家のガラス窓に飛ばされた帽子を飾る金属のエンブレムが当たって、ガラス窓を割ってしまった。
変化!
ドリンカー・ドレンチが標識の一語以外に見出した、これら全一の村にとっての、はじめての変化である。
ドリンカー・ドレンチは気になってしょうがなくなった。
次の村には…どういった情景が広がるのだろうか…
そのガラス窓は割れたままの状態であろうか?
それとも割れていない元の状態であろうか?
ひょっとして、これが契機となって、予想外の様相を呈していくのか?
ドリンカー・ドレンチは、その答えをはっきりと逃さずに見定めるために、しっかりとガラスの周辺をくまなく調べ上げ
て、いちいち記憶していった…
まずはその、ガラスを割ってしまった住人に対しての謝罪をするために、訪ねてみた…
しかし。
中にいるはずの住人はいない。
いかにも食卓を広げて、食事にいそしんでいなければ逆に不審である…言わざるを得ないような…そんな途中の食卓であ
ったのに…空っぽ。
う~む…
次の村。
相変わらず、入口の標識の一語いがいは、ピタリ、と一致して居心地の悪さを拭えない…
ドリンカー・ドレンチは、ひとつ前の村で、ガラスを割ってしまったあの村へと目指した…
!
やはり…というのか…しかし、というのか…
窓ガラスは割れていなかった。
Syuooooooooonnnn
…
BARIYYYYYYYNNNNNN!!!
カラス!
上空から風に流されて、カラスの死体の…クチバシがその窓へと激突して、ガラスが破られた!
…情報修正??
(私は…現在をループしているとでもいうのか…?)
確かに風が吹いた、ガラスは破られた!
しかし帽子をしっかりと掴んでいたドリンカー・ドレンチの役目を担ったのは、憐れなカラスの死体……
微妙な…しかしやはり関連性をしっかり示した、変化があるんだな……
「何だい!!」
「!」
ドアを飛び出した母親。
激突したカラスは窓にはねられ、地面に空しく落ちていた。
「あ~、キタナイね~…」
「どうしたの~ママン!」
家に引き返す母親。
「トングを持ってきな!…」
「拾うの~?何がぶつかってたの~??」
ドリンカー・ドレンチ。
ドアを開ける…
「!」
「何だいアンタは?」
食卓……
家族の群れ…
その何度目かの村、しっかりとした村の変化を確認したはじめての瞬間だった…




