035 背には浅瀬 改稿前
浅瀬に足をとられながら前につんのめって歩く速度が、左右リズムが狂っていて苦しい。
それでも、歩く速度は変えられない…
なぜだろう、と問いただす自分、追われている、そう、追われているから。
そうだから、と問いなおす時分、追われている、もう、追われているなら。
永遠に広がるのか?浅瀬…
歩いたって歩いたって届かない…永遠の距離。
白磁…波紋…輝いたこの水平線と……
追い立てる速度!
水を切り、駆ける…
追い風が追い立てる抜き去って追いかけねばならなくなる。
来るな!来るな!来るな!
事象は追い立てる、異常が嘲笑う…
一歩、一歩が切なく…
やはり足はとられ。
彼は無効へと走る、いざ向かう、遠く遠く向かう、向かう、向かう…向こう……
彼は韋駄天なのだろう。
速度は計測されたことがないために、不明だ。
だが、しかし、推測するに…これだけの悪条件において、通常の道のりにおけるある一定の走行記録を叩きだすのであるから、やはり彼は韋駄天だ。
彼は追われていた、実態の見えない敵、彼の内奥にのみ宿った敵…
いつしか、かれはそれになって、結局見えないゴールを目指し続けた…
この果てのない逃走、張り付くほどの水面を踏みしめて、底に堆く嵩張るきめ細かな白砂。
影冷たくて一歩は振り絞り、闇が呼ぶ、足音をかぶせ、逃げ去る足元、すり抜ける恐怖の音…
雲が片寄って、雷が舞っている、暗い黒い雲の嵩なり、冷たい風は背中を追い、切りつける刃の先走りのイメージ。目に見えたダメージ、鮮血は風に消え。
透明なチューブを捩じ込むつもりだろうか?
皮膚は訴える!
遠慮なしに叫び声、ノイズは立てる!
世界が割れて聞こえる、喉は割けていたから、潤すものが無い!
纏わり付くはシオカゼ。
雨、降らさんと捩じ込む風圧、できるだけ避けたい、逆流は潮、飛び跳ねる液、塩辛く透明な、羽根、生やした総決算。
いまだけ総本山、なだらかな受けとご満悦のナゼ?
固めて寄せ集め、足元注意!これ以降一個だけ?越せる。
少人数の回避、怒り沈黙、風、増えゆく一筋の影。
透明の走行に背後は殺られ…
狂った走行の相槌、筆跡は速度六倍になる、彩の皺寄せ、透明な空中には光る空気の窪に赤!
不規則な感情環状に捲いて、意味のない溢れ出した勢いが溜まる層を噴き反す!
マダラな円盤の華!
咲くことで見るものが向かい合って絡まり合って、限界まで額を漬けたら…振動はピタリと起こり…長すぎる理由を知ればたまらず溜まらす……
はて。
向こうから何かが来る。
…何かが…何かが…
オレンジの笑顔はとてもぎこちない。
切り刻んだその髪型も…はっきり言って不揃い。
目線が泳ぐ。
静かに…
からだはだいたい融合になる、いつもうなだれて、転がりは浅く。
混濁した模様はカオスに美しい溶解液。
溶け合い、溶け合わぬために……
また、ごろごろと…
音無しの痛烈!
踏んづけて入接。
あの、気配は潮を食い…砂を食い…
弾け混濁は浪打ち…
だんだんと…
気配は増し…
球体が、待っている…
転がる、海を押さえ、転がる。
波は打ち、それでも不動の歩みを…
近づく!
巨大!
球体が逼る!!
たぷんたぷんと浪のホネ折って…
追っ手はこちらへ…
正気!
ダメだ、前進はヤメ!
来た道を引き返す!
勇気が溢れかえり、これまでの費やした努力の果て!
生き抜くため…
すべては一縷の希望のために…
自殺は始まった!
逆行のゆくえ…
いま、はじまって。
すべてのせいしん、投げ捨てる覚悟に。
途方もない過去への逃走…
景色を逆光で臨み、色褪せてゆく一歩また一歩。
背後には永久の球体が…巨大に転がって……
追い立てられたこころの風景は…やはり彼へと重なって!果てのない行方を満たす、その浅瀬……




