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SPACE PEACS  作者: 夢之ゆめぜっと
ティモシー・チケット
31/42

030 ティモシー・チケットの飛行録 改稿前

 ぼくらは空をしらなかった。

 空はのっぺりと覆われていて、濃く深いばかりであった。

 世界は暗い粒子の低い天井に隔離されてあるだけである……


 光は空からは降りない、空はただ闇を降り立たせる…

 発光する巨大植物が地表を満たしているから、世界にとって光とはその蛍光色以外に何もなかった。

 

 野生植物が世界に絡まってグロテスクなデザインは視界を埋め尽くしている。

 この世界において、逆算していくとすべては植物であることを知る。

 巨大であれ小型であれ。

 ひしめき合ったそれらは、遠慮を知らずに生育し続けた。


 大きな斧を振りかぶる。

 ぼくらの兄貴分、ディアゴは加減が出来ないという意味では怖いもの知らずだと思う。

 彼はいつも得意げに、その斧を振りかざすのだった。 


 チャリーーン!!

 硬貨!

 彼は、ストレスをぶちまけろっ!と言わんばかりに、斧を振り続けるが、それにより獲られた報酬には全く手を出さない。

 だから彼が不定期に現れると、子供たちが待っていましたと言わんばかりに寄あつまる。

 豪快な斧の衝突!

 散蒔かれるその硬貨の地面打ち付ける雨を、子供たちは逃さず拾い集める……


 植物群は、宇宙へとエネルギーの発動機として今やある。

 利害関係が一致するとおり、植物群にとって、エネルギーの過貯蓄は、自家中毒の要因であるため、それを吐き出さねばならない必要がある。

 そしてそのアクションは、地域や住居を汚くねっとりと濡らしてしまうため、住人にとっても邪魔であった。

 それは第三者への利益へと相まって、三つ巴の相乗効果へと極まった。


 植物の、自家中毒の忌避。

 住人の、汚濁への払拭。

 そして、宇宙のエネルギー確保。


 宇宙中へとこの惑星ドルントルンから交渉人は飛び回っていく。

 飛び回って現状に、維持をもたらす介錯人として動き回った。


 誰かが斧を振り回して、衝撃が地面を伝播する時、その宇宙よりの報酬がより多く刻まれて、硬貨はみるみる量産を留めなかった。

 注目は累乗的である。

 硬貨は掛け算をはじめている……


 

 ……。

 濃い霧の奥…その天頂に…まさか空と呼ばれる世界が広がっているなんて思いもしなかった。

 ごく僅かの知性体だけが、ぼくらの星を飛び去り、通信回路を引き込んだ。

 

 あろうことか、ティモシー・チケットの想像力は、飛び抜けて特異だった。

 しかし、その説得力は、並外れてドルントルンを魅了した。


 ティモシー・チケットはこういった。

 あの深い霧は…世界を包む洞窟であって、ほかの星へは、我らはその深い堆積物を掘り進む事で行くことが出来るだろう…と。


 その後、ティモシー・チケットは、可笑しな乗り物をたくさん発明していった。

 それは植物が吐き出す硬貨を叩き伸ばし…植物が吐き出す接着剤を使い、枯れた植物を編み…そんなこの惑星ならではの様式で開拓していった。


 そして植物群の溜め込んだエネルギーを使い、植物の眠る深夜…と呼ばれる時間帯、ひっそりと、ティモシー・チケットは、その乗り物のエンジンを発動させていった…

 すると!

 それはティモシー・チケットの身体を宙に浮かせた……


 ビギナーズラックと呼ぶべきか。

 彼は一度目の飛行で天に被さった暗い濃い霧を通過して、空へと飛び抜けた!!!!!!!!!


 彼は以降失敗続きである。

 だから、あの成功すらホラ話ではないか?とする説のほうが今や主流であった。

 信じるか信じないかは、それぞれの感性に任された。


 彼が語った内容は…実に生々しく、鮮明であったため、皆の記憶に深く突き刺さったのは何よりの事実である。

 それはぼくらの運命を大きく担った、しかし何の実証もない単なる空虚に過ぎない。

 ぼくはもう、それを抱える覚悟を身に引き受けていた。

 皆はどう信じたのだろうか?

 皆が皆の感性で、何かを、そして幻想だけでなくどこかで現実として引き受けるのだろう……


 以下、ティモシー・チケット、第一フライトにおける獲得情報……


 厚くじっとりと覆われた濃い暗い霧をどうにか切り裂いて、その強い粘着物から逃亡することが出来た時…

 その瞬間、私の視界には信じられない光景があった!

 薄暗い、様々な淡い色彩の世界だった。

 そこに張り巡らされていたのは、斜交いにその世界を埋め尽くしたワイヤーの渦だった。

 それをいろいろな各色単色の色彩を帯びたリングが伝達している。

 それは、地面へと吸い込まれ、その濃霧へと沈下していったり…或いはより上空へと…上昇していったり…


 上昇したリングを、よ~く見てみると、それはある地点ですっとなくなって消えていった。

 最初はそれは、私の視力の限界なのであるのだな、と判断していた。

 しかし、その意味を、ようやく理解するようになる。

 つまり……


 その、より上空へは…恐らく下方に埋められたものと同じ、濃い暗い深い粒子の天井が伸び広がっているに違いない…

 そして、その推測から想像される結論はたったひとつ。

 ふたつとも言えるが、本質的には同じ意味をしめすのだから……


 つまり!

 その濃い霧である、粒子の天井を跨いだら…きっとそこに広がっているのは、我々の住んでいるような…グロテスクなデザインにうずまった、野生植物の世界だろう……


 より、穿った見方をすれば……

 そこには我々がいるのかもしれない……

 つまり、次元の果てがそこにあるのであって、果ての凌駕は即ち日常への帰還なのだ……


 それら二つの推論は、いずれもグロテスクな、閉塞した論理であるが、先程も述べた通り、違った二股に伸びた…それはややもすれば、永遠に末広がって無量大数の、相似世界を生み出す可能性があるのだが…、そしてもうひとつは、永遠に脱出することのない脱出という、これまた無量大数の世界観であり、ただひとつ違っているのは、増殖していく世界が、まったく同質である、という点だけである……

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