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SPACE PEACS  作者: 夢之ゆめぜっと
リャイナード
32/42

031 2番手の娘 改稿前

 深い深い…森の中…

 かぶりをされ、連れられているのは少女…

 それも、この村ではとびきりの美少女である…


 この村には美しい娘が多かった。

 よほど様々な条件に満たされていたのだ。

 子宝に恵まれているのは当然のように、すくすくと健康体に、しかもその多くが美しく育ってゆく。

 そして…男の子に比べて、娘の誕生の割合がだいぶ上回っているのも不思議で、それは理にかなった事実でもあった。

  

 なんといっても、村の娘で、美しい順から序列がなされていく。

 それは、不幸にも花嫁としての序列ではなかった。

 逆に!

 それは、生贄としての…


 ひとりの娘がいた。

 その娘は何より特徴的であった。

 というのは、その娘だけは、生贄になれずにいたからであった。

 

 娘が美しくないという意味では無い。

 娘は、常に、2番手の美しさであったのだ。

 考えても見ないか!

 華美な、ギラギラと燃え盛る太陽みたいなオンナの影で、ひっそりと咲くいぶし銀の美しさ…

 そんな娘の魅力と言ったら……


 そう、娘は…どれほどの太陽にも劣らない、最高に美しい娘であった。

 それであるのに。

 ふた月に一度の、生贄の晩…

 森の奥奥へと引いていかれるのは…

 必ずと言っていいほどに、彼女ではなかった。

 いつだって…毎回、優秀候補であるとされているのに……

 いつまでも優勝できない無冠の女王…

 生贄の手前の、数日前に…

 必ずと言って現れるのが、幼い美女…或いは、急に色づいた大器晩成型娘。

 優勝候補は出し抜かれて、結局は生贄にならずじまいで…… 


 さて、この村ではある倒錯が歴史に刻まれ、以降それは精神のありかたとて根付いてしまっていた。

 すなわち、村の娘たちにとって、生贄の晩、選ばれし存在へと抜擢されるその栄誉こそ、最大の生きた証と代々美少女たちの精神世界のピラミッドの内奥、引き継がれていって、それはもう確固たるもので。

 死への恐怖を超克して、頂点への美酒への陶酔のみが溢れている。

 娘達にとって、それは羨望の未来だった。


 かつて、それが、ただの恐怖であった頃がある。

 それから今のようなカタチに、どうやって推移したのであるか。 

 それは、一夜の悲劇と、末代への襲撃の結びついた、逃れようのない神の裁きであった。

 娘たちは当時から美しかった。

 その娘たちは、美しい順に、宇宙の彼方へと売られていった。

 そして、二ヶ月に一度、特に美しい一名を、敢えて残すことで、それを可能にした。

 

 それでもはじめは秘密裏であったから、娘たちは売られていく恐怖に怯えながらも、宇宙の果てのどこかでは生きていけることだし…と、最後の楽観主義を発揮することでどうにか精神の崩壊をまぬがれていたし。

 ギリギリのところで、伝統として受け入れてもいた。

 その上で、どうせ売られていくのなら、特別なひとりとして二ヶ月に一度の娘として上級に選ばれて行くほうが、望ましいこととして敷衍されていった。


 しかし!

 ある生贄の日。

 ひとりの少女が森を駆け抜けていた。

 連行する逞しい男たちを掻い潜って、そのとびきり美しい二ヶ月に一度の娘は逃げていった。

 つまり、自分の命だけは、他の売られていく娘たちとは一際区別されて、それは生贄としての、生命の略奪を意味するのだと知ってしまったから。

 そして、その娘が、他の娘たちには圧倒して、そして男たちにもヒケを取らぬ程に、戦闘能力が高かったのも理由として重なった。

娘は、不意を突いたのである。

 慣れきっていたのは当然男たちの方であった。

 娘は集中力を発揮させてそれを成した。


 村に…娘たちの耳に…

 事実は知れ渡る。

 

 そして神も……


 娘は以降、生贄に選ばれぬように、汚いものを食し、汚いものを身につけた。

 身を清める行為の真逆をいくようにした…

 それなのに…村の血は絶えない……

 身なりはみすぼらしくても、その美しさに傷を着けるほどの要素は、何もなかった!


 不浄なモノに覆いを被されたその美しさは暴露され…


 村はそれでも運営を続けていく。

 何も変わらぬように…

 それほどに、娘たちに宿った、その美しさを見抜くことくらい、造作無かった。


 でも…


 神はそれを許さなかった!


 !


 雷撃のような怒号!!

 怒号は、つまり神のお告げと同化していた。


 神はこう告げた。


――一度だけだ。

  これを破ればもう、待たぬだろう。 

  美しい娘たちの、運命は反転する。――


 それで、娘は。

 美しいとされる娘たちが、皆がみな村を逃亡してしまったのだ。

  

 !


 村には、美しい娘がいなくなった。 

 相変わらず、子宝に恵まれて、璧のように美しかったが、娘の年齢までにはいくつかかることやら……

 よって、一番マシな娘が、次の生贄として選ばれたが……


 !!!

 ガシューーーーーーーーンンン!!!!!!

 !!!!!!

 

 お告げ再び。

 そしてもう、村は呪いを掛けられた。

 

 生まれ来る娘という娘が、もう美しいことはなかった。

 神はあの時、怒号したのである。

 醜き娘のみが生まれつづけ!!… 

 …それは末代までと!!!!!!……


 ごくたまに産まれ来る美の奇跡として、しかしもれなくその娘は生贄となって果てた!

 たとえ幼女であっても。

 それが村の精神とて達するまで。 

 そして精神が円熟したとき……


 本当の奇跡が訪れたのである。

 眩いくらいに美しい娘が産まれた。

 次も…その次も…


 それは限りなかった。

 その年長が少女と呼ばれる歳にたどり着いたとき、あちら側で初めて、再開された。

 生贄…という新しい歴史の一ページが……


 歴史は、ようやく、ひと繋がりに収まった。

 

 さて、時計の針は現在へと戻る。

 かの、2番手の美しき女……


 その娘がやっとのことで……


 一度失敗をして、村の結束はもう、一択であった。

 娘の羨望の頂上!

 生贄として、村一番の美少女として…

 その生命を…神の供物として…

 少女の憂いと…上気…薫香……


 それがいまや村の精神!


 そんな中での出来事である。

 ついに選ばれた生贄の切符。

 森の奥へ……


 しかし。

 空から神は降り立たなかった。

 男たちは恐怖に震えたが、少女の眼は澄みきっている。

 羨望というわけではなかった。

 かといって固い意志の目指す一点は、もう揺るぎないものでもあった。

 

 以降。

 産まれ来る数々の美しい璧のような娘たちはペースを上げたし、そして何度も何度も…

 彼女自身も少女から大人のオンナの年齢へと移行するまでのあいだ。

 それ以外の美少女の数々も……


 村にとって、生贄によって失われる犠牲はもう、皆無。

 村には、ただ、美しい少女だけが増産されてくのだった…… 

 2番手の娘、リャイナードは村を変革した。

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