027 豆大福 改稿前
豆大福を頬張る。
この、豆大福、というあたりがポイントなのだといつも思っている。
豆には数十種類の栄養が固められた凝縮されたサプリメントであったし、それ以外の原料や製法が、なんと言ったって伝統的で、天然のものであったのだから。
ここでいう天然とは、無論工場栽培になる作物に、分厚いガラス越しに太陽光を当てたものに過ぎないけれど。
でも今や、こういった天然に由来する製品や食品は数少なく、アリの巣みたいに立ち並んだ、地下につくられた「コロニー」で栽培されるものがほとんどだから。
粘っこいまったりとした口当たりのただ中に、ガリっとした歯ごたえが突き刺さる、サプリの硬柔らかいしっかりとした歯ごたえを確かめる時、脳内から体全体へ向けて、滋養と快楽の伝播を直覚している。
そうするといつもああ和菓子屋を開いてる友人がいて助かるぜ、ゼバスチャン・キャパは何度も確信する。
彼はいつしかそれを始めていた。
誘い出されるように、風に乗りあがるように…
探鉱はハイクラスの燃料を産んだ。
そもそも居住用としては不向きであると判断されていたこの、「惑星アグナス」も、大気として機能するリンドグラスの開発により、地表の有効利用が勃発して、一気にここは宇宙に注目された。
その流れの詳細はこうだ。
はじめ、思惑通りハイクラスの燃料に豊富であったこの地は、当時荒涼としていた。
破格の報酬とはいえ、そこに向かうは地獄行きも同じであり、産業はイマイチ停滞していた。
しかし、鈍い一歩であっても、その一歩は宇宙に対し、超破格な燃料であった。
それらは羨望され、徐々にその探鉱業に職を求めるモノたちが、宇宙中から集まっていくこととなる。
が、それでも、劣悪な環境に変わりはない。
それを打破する出来事が、大気の形成であった。
この惑星は、大気の薄い生命には苛烈な環境であった。
ガラスの原料であるケイ素に、そこで採掘される主成分のひとつリンドスを混ぜたところ、強い太陽風の影響に一挙に効果をみせた。
すなわち、居住するための条件を生命体に与えることとなる。
そしてリンドスを加えた合成物は、いかなる衝撃も吸い込んでしまい、割ることはない、更には際限まで薄く引き延ばすことことが出来、軽くなる。
目視出来るギリギリのラインにまで薄くなるし、そこまで行けばもう破れることはないしむしろ硬くなった。
この状態を、リンドグラスと呼び、存在者たちは畏敬の念を抱いた。
リンドグラス。
この惑星の居住化は、すべてここに宿り始まったのである。
リンドグラスの膜に覆われた地表。
すべての有害物質を跳ね返し、空気のみを透過する。
天幕として張られたリンドグラスは、地面に広がった基礎となるリンドグラスに結ばれて、いかなる衝撃や引力に対しても、ビクともしなかった。
これで、産業は外敵より守られた。
それからは、累乗的に速度を上げて産業は発展した。
地下採掘。
掘られた場所にはコロニーの形成。
ひとつは居住スペース。
もうひとつは栽培と製品工場。
採掘された鉱物は、ことごとく加工に適しており、しかも宇宙において、唯一無二の新たな概念を産む、発明のダイナモとして飛躍的宇宙への到達と発展を齎していった。
こういった無駄のない発展の軌道が、やがて宇宙にイメージの転覆を果たした。
その最たるものが、天然と呼ばれ重宝された地表に並んだ栽培工場であって、もうひとつ、こちらも地表を占領した、リゾート地であった。
すなわち、ホテル、大型ショッピングモール、その他エンターテインメント会場の、巨大な複合施設であった。
無論、地表にあるホテルは、セレブリティたちの贅沢であって、それ以外の中流層、とはいっても宇宙の富裕層にあたりはするが、それらの客層は、地下のホテルへと宿泊した。
こうして、資源と開発と産業とが結びついた新たな概念を、宇宙へ向けて発信していった。
それで、いまやリンドグラスに守られたこの惑星全体。
その中に、リンドスと双璧をなす、その他の鉱物を圧倒的に上回る採掘量を誇る物質があった。
エイキュウと呼ばれそれは、潤いの根源である。
それをそのまま口に含むと、溢れ出す液体が止めどなく、つまりは渇きを癒してくれる。
リンドグラスに包まれたこの世界は、湿度が高く渇きに縁遠いが、しかし液体成分がなければならない生命体は、宇宙の
半分強を占めているので、このエイキュウはリンドスと同じく重要であった。
その大体は、他の物質と合成されて薄められて使われる。
硬い表面に潤いの源泉となる内部。
エイキュウは、「惑星アグナス」を表すかのようであり、リンドスと共に、惑星の象徴となった。
どちらも半透明の鉱物。
リンドスは黄緑色をしていて、エイキュウは水色を指定た。
さて、和菓子屋を友人に持つゼバスチャン・キャパは、もうこの惑星に降り立って長かった。
近頃、炭鉱の仕事から、地表の、リゾート産業へと転職し、それは冥府から天上へと誘われたかのような衝撃を受けた。
実を言うとこういった転職は、非常に希ではあるがしかし確実に行われている組閣人事であった。
というのも、金力や権力を牛耳るのは自ずと地表に蔓延るモノ共であったし、しかしその根源は地下に根を張った肉体労働者にあるのだから、そのパイプをより強力にしていくためにはこういった提携が定期的に行われなければならないのであった。
そこについにゼバスチャン・キャパが選ばれた。
権力者の汚濁にまみれたビジネスの渦…
それはロクなものではない不健全な世界だということくらい知っていた。
しかし、あの地獄のような地下生活よりはいくらか健康であるのも事実だったから。
もう一口。
粘っこいまったりとした口当たりのただ中に、ガリっとした歯ごたえ。
友人たる和菓子屋の主人の店へ…
地表へと這い上がった地獄よりの使者が、まず第一に向かうのはその店で間違いなかった。




