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SPACE PEACS  作者: 夢之ゆめぜっと
ウンドゥ・モルダー
27/42

026 ビーフジャーキー 改稿前

 弛んだ二つの首の皮は…すでに干からびて…ビーフジャーキーみたいになっている…

 ビーフジャーキーと、柔らかい皮膚との境目はどうなっているんだろう…

 自分の首に回り込むことなんてできるわけないから、男は隣の男の首元を見てみた…

 隣の男はそれを察したのだというのか?

 男が覗くそのあたりを、すかさず捻った首の角度でつくられた、死角で見えなくした。

 そんな事してなんになるというのだろう……

 男は、隣の男と並べられ、首のあたりから、巨大な魚を釣るときに使うような、釣り糸みたいなもので、地面から2メートル50センチのあたりに吊るされていた。

 その並んだ姿は、とても滑稽だった。

 仕方なく男は、一旦視線を正面へと向き直す。

 所詮生命体の考えることなんて大差ない。

 隣の男は、男が正面を向いた瞬間に、男の首元を確認した。

 そして、にっと笑った。 

 なんという厚かましい男だろうか。

 まあいい、俺ももうすぐやつが油断した隙を縫ってきっと見返してやるぜ。

 風景は荒涼としている。

 ここは荒野か?

 見たこともない場所。

 隣にいる男も実を言うと今朝までただの赤の他人だった。

 急な仕事を請け負った。

 これが災難の始まりというやつだ。

 それでも、男はこうする以外、生きて行く術がなかったのだと言わざるを得ない。

 例え、こうして無様に吊るされていたからって……

 そもそもどことも知らない辺境の惑星の、ありふれた荒野の風景。

 ああ、運命のイタズラは時に苛烈だ。

 こんなしょうもない仕事で…しかも、絶対に失敗しない簡単な仕事、という触れ込みで始まったこの一連の悲劇。

 何がいけなかったのかと、何度シュミレーションしてみたとしても、やはりそれは関係ないこと、それがいちばんではないか。

 さて…そろそろ…

 ちらと隣の男の首を眺めてみたが!

 信じられないことに、男の場所からだけは絶対に絶妙に見えないようにしていた。

 けっ。

 …ちくしょう、そうされてしまうとわけわからんがいよいよ見たくなってしまう。

 !

 なんだ、何がしたい?

 いいや、そもそも何なんだ、第一、見せてくれたっていいじゃないか。俺にも!

 それが助け合いってもんだろうが。!!

 ちきしょう、もうすぐこの野郎と、俺との運命がくだっちまうよ。

 処刑人の野郎め、胡散臭いったらないぜ、ったく馬鹿らしいぜ。

 この野郎と、俺と、どちらかひとりを処刑して、どちらかひとりを解放する、だなんて、信じられる筈あるか!!

 どうせ、ひとりを処刑したあと、すぐに残ったほうを消しちまうに決まってるよ。

 ああ…そうなってきたら…非常にヤバい!

 不思議とこうも長いこと吊るされてばかりいたら、自分の命に対しては、もう執着がなくなっちまった。

 そりゃあ、最初は悔やんださ。

 何度も何度も、自分の哀れな運命に対して、怒りや悲しみの渦に飲まれちまったのは事実だったよ。

 でももはや、俺とこの野郎は、助からねえ、それはもう確実なんだ。

 ああ、録な人生じゃなかったぜ!

 しかし、こうなりゃ最後の望みくらい……

 男は吹っ切れていた、しかし、自分の命を諦めてまで、たったひとつの願いにだけは執着していた……

 即ち、自分と、隣の男との、首の一ヶ所に伸びている、ビーフジャーキーと、皮膚の境界線が、一体どうなり広がっているのか。

 その、つまらない疑問の答えを知っておくことが、男の、たったひとつの、置き土産となるのだから。

 !

 処刑人が帰ってきた!


「決定した。処刑するほうは…お前のほうだ」


!!


 ビーフジャーキーと、皮膚との境界線のあたりを、無惨にも迷いのないたった一閃で、鋭いナタのようなものが切り裂いた!


 ドサッ!


 地面を激しく鈍い音で叩いたのは、置き土産を果たすことができなかった、男のほうだった。


「ご苦労だった」


 隣の男は、釣り針から解放された。


「これでひとり、犯罪者を片付ける手間が省けた。褒めてつかわそう、ウンドゥ・モルダー」


「……」


 ウンドゥ・モルダーは何も喋らない。


「ところで…これがお前の報酬だ」


 !


 処刑人の鋭いナタのようなものが振りかぶろうとした瞬間、ウンドゥ・モルダーの、右腕の内蔵銃が、処刑人の頭蓋骨を、粉砕していた!


 荒野を…ウンドゥ・モルダーの、逞しい両脚が蹴り、ウンドゥ・モルダーは、遠くまで駆け抜けて消えてしまった…


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