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SPACE PEACS  作者: 夢之ゆめぜっと
リーランド
24/42

023 明晰夢 改稿前

 …ここは宇宙の飲み屋街……


 派手に華麗にドレスアップしたイカしたレイディ達が四方をうろついている…


 宇宙に浮かんだコロニーは、このSPACEの代表的な繁華街のひとつだった。


 オーロジカルムンド。


 きらびやかなビル都市には、相容れぬようなスパイシーな香りが刺激的だった。


 恒星ディモンド……


 宇宙随一の香辛料の宝庫…

 スペース中の商人達はこぞってその巨大な香辛料の塊を夢見る…

 指を加えて…


 未だに、破滅的エネルギーを有する恒星ディモンドには、その周囲を漂っているだけが限界であった。

 ディモンドのデッドラインぎりぎりを、まるで小惑星や隕石みたいにぐるぐるを周回しているのは…その太陽風を回収するための…つまり宇宙においてとびきりの一級品として高値で取引される、その香辛料を奪い取るためのロケットが…商人によって送り出されて、常に飛び交っている……


 コロニーの住人たちは、天を見上げれば…羽虫のようなロケットの点滅が耐えることはなかった。


 それは、恒星としては最もくらい部類であるディモンドに変わって、街に濯がれた光の渦であった… 


 さて、客引きをしているメス猫たちや、薄汚い飼い犬たちの群衆を縫って…こなれた足取りで彼は進んでいく…


 歳若いにもかかわらず、以前の店主の失踪を期に、流れ着いたようにオーナーを任されることとなったその店の店員、ディーンド・ジョニ。

 彼の最大の売りはなんといっても俊敏さである。


 彼がオーナー兼店長になってからというもの、客層も大分若返って、以前のようなマナーの悪い店にたかり続けた厭味な客たちは激減した。

 雰囲気が変わって、店は裏を返したように繁盛した。

 そのために客に対する商品の在庫数が追いつかずに、たびたび買い出しに行かねばならなくなる…

 

 せっせと走る…

 肩には炭酸水用の大きなジョイントタンクを担いで、それでも通常の生命体の速度を優にこえた速度で…


 !


 復路だった。

 店は目と鼻の先…にある筈だが…濃い霧が立ち込めて前方を見通せない。


 即座に眼孔を強烈な芳香が突き刺さって支配した!

 続いて鼻腔を…激烈な刺激臭が殴りつけ!彼は望みもしないほうへと仰け反って倒れふした!


 血。

 否!

 確かに血は彼の鼻から滴り落ちる…

 その上…

 ドギツイ赤の…

 粘着する刺激物が鼻の門を行きつ戻りつして…


 !


 後頭部をショックが3度も通過した!


・・・・・・


 …パ…


 ぼんやりとした映像がはじまる…

 うっ…

 後頭部が…


whyyyyyyy


「失礼します…」


「…あ…あなた…は」


「ええ、ここは病院ですよ、あなたもご存知ですね…」


「……」


「あなたの店の向かいの大きなビルに…」


「ああ…ディムントンビル」


「ええ、その地階にある…緊急病院ですよ」


「…僕はどうしたんでしょうか?」


「ええ…あなたというより…しかし、あなたも軽症ではありませんでした」


!!


「…うっ」


「脳波に以上はなかった、しかしショック症状がいくつか出ています…どうやら記憶障害まではないようで、安心しましたよ。今のように度々激痛を起こす筈です。これからもう長らくは入院してもらいますからね」


「……うっ…」


「おやすみなさい」


Byu!


 …医者は彼の首に注射を打ち、彼の意識は麻酔薬のただ中へと溺れていった……


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リーランド……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リーランド……・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・リー…



…忘れている名前を僕は思い出す…

それはすぐに逃げ去って…なんだったのかはもうわからない…だけど……

…僕が今名乗り続けている…そして密かな愛着を持ちながらともに歩み続けているこの僕と名前が…

…偽名だった事に気付いたのは…とおい…とおいあの日以来だったことを…今の今更思い出すなんて……

…思い出さなきゃ良かったのに……

…ここは…痛みもない…きっと、明晰夢の世界なんだ…

…このまま…どのくらい長い間…眼醒めずに…こうしていられるんだろう……

…肉体の感覚はまるでない…多分もう少しは…こうして粘っていられるかも…

…急に不安が…いけない…こんなんじゃ…覚醒してしまうじゃないか……

…嫌だ…あんな…悪夢みたいな記憶を思い出したまま…これから先の生涯を…送っていかなければならないなんて……逃げよう…このまま逃げよう……


 peeeeeeeeeeeeeeeeeeeee…


「先生!患者が!」


「!いかん…このままでは…」


 ドシュアッ!


 医者は緊急措置として、彼の左胸に、鋭いナイフのようなものを突き立てた!


「うひっ」

 

 peeeeeeeee!pi…pi…pi…pi…


「脳波は!」


「ダメです、裏返りそうです…あ!」

 

「……。手遅れだ…仕方ない、収容施設へと患者を移そう…」


……!


「お帰り!」  


「…??」


「待ってたよ」


「…僕…寝てたのかな…??」


「ううん、寝てたんじゃなくて…」


「なくて…?」


「まあいい…そのうち慣れるさ…」


「……」


「もう少し、そこで休んでな…」


 懐かしい…彼をみているだけで…無条件みたいな懐かしさが…降ってくるみたいに……

 

 彼の指差すほうには…柔らかそうなクッションソファがあった…

 …あそこへいけば…ゆっくり休める…もう少し…眠っていられるかも…しれない……


 ギューーー…

 

 腰掛けると…彼は沈んでいく……

 …なんだ??…ここは…沼みたいに…ああ……抵抗したって無駄なのか……


「お帰り!」  


「……」


「待ってたよ」


 …また……いけない…ここは…地獄……

 …だったら…なんとかして…攻略しなければ……


「…ただいま、君!僕の名を言ってくれ!」


「……。随分と早く戻って来れたじゃないか…感心したぜ、リーランド……」


 …ああ……そうだった……


「リーランド…」


「そう…リーランド」

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