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SPACE PEACS  作者: 夢之ゆめぜっと
ブラッドリー&ジェニファー
21/42

020 存在論と恋愛 改稿前

 時空を超えたふたりの男女の愛の物語…

 西条にしじょうかざ子と東河ひがし東平とうへい


(※しかしいっぽうでこれは、とあるSPACEにおける、時空を共にしたとある男女の、あまりに日常系、愛憎劇に過ぎなかった!)


 ブラッドリー・パーク―&ジェニファー・スーロンレ。

 この数奇な男女のエクストリーム+バイオレンス=ラブコメは、しかしこの上なく…とある東洋に咲く、崇高な一冊の古典恋愛譚によって、高次の展開へと引き上げられていた。


 整理すると、ひとりのもて男はすなわち独身貴族。

 もうひとりの女は単なるサセ子であったが、しかし、ジェットコースターラブの結末の日常。

 もともと破れかぶれの人格のほころびたる両者の共同生活に、平穏な日々など待っている筈もなく…


 そんなある日、ふたりの住まいに一冊の分厚い書物が届いた。


 すなわち、西条にしじょうかざ子と東河ひがし東平とうへいの崇高なる愛の物語である。


 パーク―が泥酔したよるに、アゲアゲになったテンションで衝動的なネットショッピングをしてしまった挙句の遠い国からの贈り物…


 一瞥するだけでもう…読む気を失せていたのだが…


 一方の女は…

 文系少女では全くなかったのは当然の事。

 しかし一度インスピレーションの世界に突入してしまうと、どうにも止まらない、果ての果てまで突っ走らなければ気が済まない劇場型に!

 完全に心の隙間はバチッと音立ててスイッチをいれてしまった。

 

 初めは絵的に…未知なる文面を眺め楽しんでいたにすぎないが…

 所詮言語なんて暗号に過ぎない。

 ずっと眺めていればその法則に母語を当てはめる作業など彼女にとってはお手の物になり始めていた。


 それは、感性的人間型。

 ひょっとして単なる彼女の妄想に、異国の文面の奏でるリズムを、スパイスとして使用していただけかもしれない。

 

 もしかすると、もとの訳文とはまるっきり違った物語を彼女は読み取っていただけかもしれない。


 しかし、彼女の読み上げる物語は、実に滋味深く、それは、ふたりのもはや荒んだ日常を、一挙に一掃するほどの力強さを湛えていた…


 それは夜の楽しいひとときとしてふたりの長い夜に根付いていった。


 彼女は読み上げる…すなわち彼女の物語は空疎な部屋に響き渡る。

 ロマンチストとしての資質を十分に抱く彼も、彼女の物語に魂を掴まれた。



 ――山上蜂起、いつまでもリンガン知己で麗しき一世の古城等に、結膜、いもイモ市域ごんばる君付けいいければっ等――


この原文に対し


 ~~おお麗しき…そなたのたおやかなる全身は…わがこの凄まじき策略を、とうに、見破ってしまわれた。これはひとえに、そなたの魔性の魅力に奪われたわが理性の、ブレーキシステムを破壊してしまったが故なのだろう……~~


このように、彼女は例え無意味な殴り書きに対しても、ロマンティックな愛の交感として書き換える本能と才能が漲った。


 以下、原文、彼女の妄想、実際の訳文…

 これら混淆とした世界の、奇跡的なコラボレーションの表出である。


 西条にしじょうかざ子は真空に生まれた。

 一説によれば、真空に生命が存在しうる時間は、ほんの一瞬であるために、彼女は産まれてまもなく死んだ。


 一方東河ひがし東平とうへいは反対に、ブラックホールのコアに生まれた。

 一説によれば、ブラックホールは時間すら吸い込む最恐の、超重力天体で、時間にせよ世界や存在にせよその法則という法則を切り刻んでしまうことで、時空を歪ませて、有り得ない事象を有らしめるエキセントリックな力を有している。

 それは例えば、一瞬に永遠を閉じ込める事ができるし、ある生命を、永遠に朽ち果てさせず不老不死の超存在へと変貌させた。


 つまり、ふたりの邂逅は、すなわちこの世には存在出来ないという幽霊ゴーストを顕在せしめる効果を放つ!


 ある面でこの話は、時空を超えた、真空とブラックホールの恋。


 パラレルにSPACE平面上の、西条にしじょうかざ子と東河ひがし東平とうへいの恋。

  

 パラレルを射抜いて、このふたつに共通することは、ふたり(2現象)は、一切離れる事ができない。

 そして、離れることをしなければ、ふたり(2現象)は、至上の愛を成し遂げ続けていく…という関係である。


 まずは大局的に。

 ブラックホールが累乗的に存在たる存在…死も正もシュレーディンガーの猫をも飲み込み続けていた、果てのないひとり大食い選手権みたいな、『永劫回帰』から物語は始まる。

 そこへ突き刺さった矢こそが、いわば『非在』である、真空。

 

 そう。

 観念的に表現するならば、ふたり(2現象)の恋は、かの『永劫回帰』と、かの『非在』との性交という、存在史上最高頂の、名場面の達成であった。


 宇宙映画祭最優秀作品賞、主演男優賞、主演女優賞という快挙!!


 具体的には離れては死んでしまう、世にも奇跡かつ怪現象。

 結合双生児の男女。そして恋。

 という、矛盾からのスタート。

 これは神話に匹敵するスケールの物語であった。


 『永劫回帰』と、『非在』の恋。


 これを浮かび上がらせるために駆使されるふたつの形而下的命題。


 真空と超重力…

 結合双生児の男女の恋…


 ここでパーク―がスーロンレの甘美なる歌声に口を挟む…


「まず思うんだ。これはナルキッソスの自殺に似た話じゃないか?だってそうだろう?にんげんには男女関係なく、かたや男性ホルモンが…かたや女性ホルモンが渦巻いてて、そのパワーバランスの敷地内に、われらジェンダーが確立されてるだろう?これはそういった話だと思うんだ。例えば…ある美少年がいた、美少年というのは裏を返せば美少女である。単刀直入にいえば、ペニスの生えた美女だ。これは形而下で同じ現象があるよね…つまりシーメール、そして結合双生児の男女の恋たる…西条にしじょうかざ子と東河ひがし東平とうへいの恋なんてのは、その形而下をさらに形而下に置き換えたもので、もっとも下世話な問題だろう…そう思わないかい、スーロンレ」 


「……」


 自分の妄想世界につい夢中で没頭していた&ジェニファー・スーロンレが、今度はブラッドリー・パーク―の話に聞き入る番だ。


「ペニスの生えた美女、シーメール、想いを寄せ合う結合双生児etc…言葉はなんだっていい、ただ、それが表すのはたった一つの真理だと思うよ。あるひとつの生命がいて、自分の中に二つの異性を築いてしまったら?自分の中に潜んだ二つの異性に気づいてしまったら?」


 一呼吸。


「それは永遠の煩悶でもあるし永遠の成就ともいえよう。ただ、一方に傾いてしまっては成立しないんだ。だからこそソレは揺れ続ける…これって実は、僕らに似ていないかい?」


 一呼吸。


「僕らは共に未完成で常に補い合っている。僕らは永遠に結婚適齢期が来ないダメ人間どおしであり、世界にもまれなバカップルだよ…僕らはきっと永遠に…結婚という完成には落とし込めれないだろうし、しかしそれが、永遠の恋愛なんだって思う…」


「ねえ…それは私たちって間違えてないってことの証明なの??」


「ああ、そうさ…」


 パーク―、この上ない引き締まった表情で…


「なぜって宇宙は永遠に膨張と収縮に揺り動いてやまないじゃないか…」


「へえ…そうなんだ?」


「あれっ!今のがキメ台詞だったんだけど」


「そんなことより、私には恋愛物語の方がピンと来るみたい…」


「…そうかいそうかい…そうすべきだろうね…」


 パーク―はすこしく言葉を失った。


「…実をいうと、僕が関心があることって恋愛よりも存在論さ。でも君が求めることって恋愛オンリー…ごめん、もいっとき言葉を詰まらせちまいそう…」


 バツの悪そうな表情をみせるブラッドリー・パーク―…

 しかしかたやジェニファー・スーロンレなんてなにもお構いなし!困った表情をみせた彼氏、ブラッドリー・パーク―に単純に『カワイイ』って萌え萌えだっただけで…

 満足を堪えきれず、つい表情に零してしまう…

 パーク―はそんなチャーミングなスーロンレがやはり愛おしくなる…


「ゴメン!降参だ。今僕に、恋愛物語を語れる能力はないらしい…」


 笑顔をみせて…


「次はまた、君が話をしてくれるかい??」


 スーロンレは笑顔で頷いた…

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