9
「そういえば銀次さんは、どんな能力と聖武器を持っているのですか」
「あぁ、お嬢にはまだ見せてなかったなぁ」
銀次は力を込めて、聖武器を召喚する姿勢に移る。それからものの数秒もしないうちに、彼の聖武器が現れた。
「こいつは如意棒くん。めっちゃ伸びるすごいやつや」
「コンチワ! ヨロシコ!」
堅苦しい話し方をする僕たちの聖武器と打って変わって、如意棒くんは綿のように軽い口調で話した。
見た目は装飾もない弱そうなただの棒であるが、これがなかなか侮れない。
「因みにどれぐらい伸びるのですか」
「聞いて驚くなや」
白雪の疑問に銀次はにやりと笑う。
「なんと、十三キロメートルや」
なん……だと……!? そんなに伸びるとは予想外である。
「ということは、伸縮自在の能力適正をもっているのですね」
「そういうこっちゃ。どこまでも長くなるのがわいの自慢や。そういうお嬢はさっき出してた聖武器の大砲、えらい大きさやったしでかさが売りやろ」
「それはちょっと、ここでは言いたくないです……」
ちらっちらと白雪がこちらを伺い見るが、さっぱり話についていけなくなった。
「でかさが売りって何の話をしているのさ」
ずばり聞いてみることにする。わからないことがあれば素直に聞く。僕は何事にも素直な変態なのだ。
「なんや全然知らんのか。あれや、聖武器の能力適正の話してるねん」
聖武器の能力適正。確かエクスカリバーさんも言っていた。僕には何かしらの適性があり、それによって聖武器に選ばれたのだと。
「伊藤翼は射撃のコントロール、銀次は伸縮自在で、白雪ちゃんはでかさが売り?」
「せやせや。適性はな、つまりわいらのイチモツ……」
「アームストロング! こいつを黙らせて!」
「ぞうさもない!」
何かを言いかけた銀次の前髪を、砲弾がかすめた。
「黙るので命だけは勘弁してください!」
白雪はどうやらこの話をして欲しくないようだ。したら殺るよと目が物語っていた。
誰しも触れられたくないことはある。僕が短くてかぶっていることに触れられたくないのと、同じなのだろう。
空気が読める系変態の僕は瞬時に察し、銀次に助け舟を出すことにした。
「そ、そういえばSNSに載せた僕の息子の写真、他にも聖武器の所有者が食いついているかもしれないね」
「せ、せやな。早速見てみようや」
話をそらした僕の意をくみ取った銀次が、目で感謝を伝えてくる。これは貸しだからなと、返事を込めて目配せを返した。
「なにを見つめ合っているのですか」
それが火に油を注ぐ行為になったのか、白雪の凍てつく視線を向けられた銀次は、冬場の息子が如く縮こまった。
「まあまあ、二人とも仲良くね」
「聖夜さんが言うのであれば、善処します」
僕は苦笑しながら二人にスマートフォンを見せた。そして慣れた手つきで自分のアカウントにログインしようと試みる。
「あれ、なぜか入れないのだけれど」
しかし、ログインすること叶わなかった。
なぜだろう。パスワードは複雑怪奇にしているから乗っ取りはないだろうし、その他の心当たりはてんでない。
「あー。あれやな、聖夜のアカウント凍結されてるなぁ」
銀次が自身のスマートフォンで僕のアカウントページを開いて、差し出し見せてくれた。
そこには『不適切なコンテンツのため凍結』と書かれてあった。
盲点である。まさか無修正息子のセクシー写真一つで凍結されるとは、驚きを禁じ得ない。
「そ、そんな……まだ保存していないのに……」
笑う銀次の隣で、白雪がひどくがっかりしている理由は、日が暮れてもわからなかった。




