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10話 壁を破って

 「雷蜘蛛(スパークウィーバー)は見かけ以上に俊敏だ。レイグよりは遅いがな」

 レオルドはそんなことを言っているが、移動速度はもちろん、攻撃速度もかなり速い。


 バチッ!


 頭上で位置を変えながら、こちらに青白い雷糸が放たれた。

 「っ!」


 横に飛んで避けられた。そう思ったのだが――腕に掠っていた。

 ただそれだけなのに、腕が痺れてしまう。雷が走ったのだろう。


 「当たればもっと酷いぞ。さあどうする?」

 どうする、か。


 避け続けるだけではいずれ当たる。それに、これは打倒レイグに向けてヒントを得るための戦いだ。

 だったら――

 「壁……!」


 体制を低くして、地面に触れる。魔力を流して壁を作る!


 …………


 壁のイメージは出来ていたはずだ。なのに、壁は現れなかった。

 「くそっ!」


 壁が生成出来なかった。かなりまずい……。逃げなければ。

 そう思ったのだが、手遅れだった。


 「ぐあっ!」

 脚に衝撃と激痛が走る。

 雷糸を足にモロに食らってしまったのだ。

 膝が崩れ、その場に倒れ込んでしまう。

 足が言うことを聞かない。いや、痺れて動かない。


 それでも雷蜘蛛(スパークウィーバー)がゆっくりと距離を詰めてくる。

 マジのマジで終わる。感電死なんて勘弁だ。


 「発想は合っている。

  だが――魔法は”形”を想像するだけではない。完成した”動き”まで思い描け」


 完成した動き。地面から壁を押し上げ、攻撃を防ぐ……。

 そういうことか。今まで過程を省いて完成した形をイメージしていた。しかし、土から壁を作るだけでも、そこには”動き”があるのだ。


 地面が押し上げられる。

 土が盛り上がる。

 

 その流れを頭の中でなぞる。

 震える手で地面に触れ、魔力を流し込んだ。


 「……来い」


 ゴゴゴゴゴッ!


 足元の地面が震え、土がせり上がる。

 盛り上がった土は形を変え、俺の前に分厚い壁となって立ち上がった。


 目の前にあるのは、紛れもなく土の壁。俺の魔法で作った壁だ。

 魔法を使ったその新しい感覚は、まるで身体の一部のように馴染むのを感じた。


 「良くやった」

 急にレオルドに褒められた。

 なんで……?


 「こっちに来てみろ」

 言われた通りレオルドの方へ向かった。

 

 「これは……」

 「お前のイメージした動きだな」


 壁だと思っていた土の塊。自分の反対側は棘のようなものが幾つも形成され、雷蜘蛛(スパークウィーバー)を貫いていた。





 当初の予定とはずれてしまったが、防御と攻撃を成功したということで、一度学院に戻り振り返りをする事になった。なぜかそこにはセリスもいて授業を共に行った。


 「まずは良くやったな、ソーリ」

 「すごいねソーリ、こんな短時間で雷蜘蛛(スパークウィーバー)を倒しちゃうなんて!

  強種(ストロング)相当の魔物(モンスター)なのに」

 「その、”すとろんぐ”って何?」


 ここに来て新たな知らない言葉が出てきた。

 正直今は魔法を使った、新鮮な感覚のまま振り返りをしたいのだが、どうもセリスの言い方が引っ掛かったのだ。


 「お父さん、ソーリに階級(ランク)制度のことを教えてないの?」

 「ああ」

 「じゃあ、私が教えるね」

 セリスは大きくため息をついた。


 「この世界には階級(ランク)制度ってものがあるの。

  簡単に言うと、強さを分類した指標みたいなものね」

 「指標か」

 「うん。人も魔物も、強さによって6つの階級(ランク)に分けられているの」


 この階級(ランク)制度は後々重要になりそうなので、しっかり聞いておくことにした。


 「人は一番下から順番に、下級(ロウ)中級(ミドル)上級(ハイ)超級(エクストラ)極級(アルティメット)覇級(タイラント)

  上位になればなるほど、人数は限られ来るの。そして、最上位の覇級(タイラント)は一人で軍を相手に出来るほどの力を持つと言われてるわ」


 ……それは本当に人間なのか?

 そんな疑問が頭をよぎる。

 

 「次に魔物の階級(ランク)ね。弱種(レッサー)危種(デンジャー)強種(ストロング)凶種(カラミティ)災種(ディザスター)厄種(ドゥーム)

  弱種(レッサー)はその名の通り、比較的弱い魔物。村の自警団でも対処できる程度ね。

  危種(デンジャー)になると、普通の人だと勝てない。訓練された兵士が必要になるわ。

  強種(ストロング)は人間で言えば上級(ハイ)に匹敵する危険度。普通は小隊規模で討伐する魔物よ」


 当たり前のように言っているが、小隊規模だって?そんな激強魔物(モンスター)もいるんだな。


 「さらに上の凶種(カラミティ)ともなれば、一体で街を壊滅させることもある。

  災種(ディザスター)は国家規模の被害を、最上位の厄種(ドゥーム)は――国そのものを滅ぼしかねない。まさに厄災のような存在ね」


 ……スケールがおかしくなった。小隊規模だってかなり強いと思っていたのに、国を滅ぼす?そんな化け物本当に存在するのか?


 俺が黙っていると、セリスはふっと笑った。


 「ここまで聞いて気付いた?」

 「魔物は強いってこと」

 「それもそうだけど、違うよ。

  さっきソーリが倒した雷蜘蛛(スパークウィーバー)強種(ストロング)よ」


 その言葉に一瞬固まった。

 「……つまり?」

 「つまり普通なら、学院の生徒が一人で倒せる相手じゃないってこと」


 ……いや待て。

 俺は無意識にレオルド教官の方を見る。


 なんで初心者(ビギナー)の俺をそんな魔物と戦わせたんだ。偶々勝てたけど本来は無理なはずだろ?

 ……そんなことより、雷蜘蛛(スパークウィーバー)より強いレイグ先輩の階級(ランク)は幾つなんだ?


 「質問があります」

 「はい! ソーリ君! 私が答えましょう!」


 なんでセリスはこんなノリノリなんだ。まあいい。


 「レオルド教官とレイグ先輩の階級(ランク)って……?」

 「レイグは、多分上級(ハイ)の中位かな? お父さんは――」

 レオルドはセリスの言葉を遮り、言った。

 「私は極級(アルティメット)だ」


 一瞬、言葉の意味を理解できなかった。

 極級(アルティメット)

 確か人間の階級(ランク)の上から二番目。


 つまり――


 「え?」

 思わず間の抜けた声が漏れる。


 レオルドは腕を組んだまま、こちらを見ていた。

 表情は相変わらず変わらない。

 まるで、今言ったことが特別でも何でもないかのように。


 「ふふ、驚いた?」

 横でセリスが楽しそうに笑っている。


 「そりゃ驚くよ……」


 いや驚くどころじゃない。極級(アルティメット)なんて、そんな簡単になれるわけではないはずだ。

 そんな強い人が目の前にいる。


 「話は終わりだ。続きをやるぞ」

 「……はい!」

 「魔法を使えるようになった今、あとは身体で覚えろ」


 ――こうして2日目の授業は再開された。





 そして、ここからは時間が経つのはとても早かった。

 残りの5日間はほとんど実戦形式の訓練に費やされた。

 兎に角魔法を使って、技のレパートリーを増やすと共に、適性属性を判明させるということが目標だった。


 結論から言うと、属性魔法(エレメント)の五属性はすべて使えるようになった。レオルド教官とセリスによると、この短期間ですべて使えるようになるのは異常事態なんだそう。

 魔力切れも起きなかったので、連続で魔法を使う練習も行い、気が付けば2種類の属性魔法(エレメント)の併用も可能になっていた。


 しかし出来なかったこともあった。それは、適性属性の判明だ。

 今の俺は、五属性すべてを均等に使えていて、何かに突出していない。そういうことだった。

 稀にこう言った、”適性属性を持たない者”はいるらしく、その多くが属性魔法(エレメント)以外の魔法を使うそうだ。なので、俺のような適性属性が無いまま、五属性を扱えることは未曾有の才能――らしい。


 ……らしい、というのは。

 正直なところ、俺自身あまり実感がないからだ。


 魔法は使えるようになった。言われた通り発動できる。

 だが、それがどれほどすごいことなのか、いまいち分からない。


 ただ、今の俺は一週間前より確実に強くなった。

 その成果も翌日には、はっきりする。


 相手はもちろん――学院トップの男。

 レイグ・アークライト先輩だ。


 右手の人差し指にはめた指輪を見つめながら、決意が固まっていく。

 セリスから貰った、アルヴェリア家に伝わる幸運の指輪。


 なんだか負ける気がしない。というか、負けるわけにはいかない。レオルド教官とセリスがここまでサポートしてくれたのだ。期待に応えたい。


 今までのことを振り返りながら、明日へ向けて深い眠りについた。

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