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「圏外? でもないな? うーんと?」
「あの? 私、知っているんですよ。音がでなくなる現象。これって、マスキング現象とかでしょう」
もう一人のサラ女がいった。
「マスキング現象?」
「そう。簡単にいうと、マスキング現象って、ある音が別の音に隠されて聞こえにくくなるんです。特に聴覚の説明でよく使われているんですね。大きい音や目立つ音が、小さい音をかき消すように起こるんですよ」
「……ええと」
「あ、すいませーん。私、佐藤 恵子です。こっちが、秋山 律子。そして、この方は、如月 聖子さん。如月さんは、かの有名な大企業の社長令嬢なんですよ」
「あ、ありがとう……俺は鴻野 孝介だ……ええと、じゃあ、どんな大きな音が今聞こえているんだろう? 何も聞こえないけど?」
佐藤 恵子は、耳に手を当てながら、一緒にいる二人の名前も紹介してくれた。
「あの、恵子ちゃんの話って、当たってると思うんです。人が聞こえる音の範囲って、約20~20,000Hz(20kHz)だといわれているんです。だから、人間では聞こえない大きな音が鳴っているとか、考えられるんじゃないかな。ええと、鴻野さん。多分、この現象って、音が聞こえないことと、携帯の電波が不安定になることを考えてみると、指向性エネルギー兵器の音響兵器とかマイクロ波兵器とかの非致死性兵器の可能性ってあると思うんです。今の世の中って、物騒だから……」
如月さんが、盛大にそんな物騒なことを、あたかも昨夜の夕食で鍋を吹きこぼしちゃったのみたいに平坦な顔で言葉を並べた。




