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超加速する完全無音世界  作者: 主道 学


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車両基地

 カランコロンっとする空き缶の音で、目が覚めた。


 薄暗い目の前の床に、黒い物体が転がって行く。


 ここは、一体?


 辺りは真っ暗闇だ。それに、寒くて仕方がない。ここが電車の中なのはわかるが、車内の照明が完全に消えているし、暖房もついていなかった。


 今は、誰もいないようだ。


 凍えるような寒さの中で、ゆっくりと立ち上がり、開閉ドアまで歩く。


 開閉ドアにギリギリまで目を近づけて、やっとここはどこなのかわかった。


 車両基地だ。  


 今いる電車のすぐ隣に、もう一本の電車がある。どこまでも、無人で人気が全くない。空き缶だけが、電車の車両と車両を繋ぐ開通扉付近で転がるのを止めている。


 開閉ドアが、プシューと鳴って勝手にひらいた。


「外も真っ暗かよ……」


 電車から降りる。


 俺が降りると同時に、電車の開閉ドアがまた勝手にとじた。


「……ふー、まいったね。……まあ、帰るべ。出口はどこだ~」


 それから、車両基地を出るために彷徨うことにした。


…………


 延々とトボトボと歩いた。


 真っ暗闇だが、有難いことに夜空に満月が浮き出ている。


 でも、自分の上半身と電車の上部だけ見えるという感じだ。 


…………


 旧博物館動物園駅から、乗っていた電車から降りて、それから、かれこれ1時間くらいも電車と電車の間を歩いている。


 もう、1時間と20分が経っている。去年のクリスマス・イブに買った腕時計を見るのも疲れてきた。 


 へとへとになって、腹も空いてき過ぎたところで、ヤケになってきた。


「腹減ったぞー!!」


 カンッと、歩いていたら、地面にあった空き缶を自然に蹴っていた。


 蹴り飛ばした空き缶が、傍の電車の開閉ドアに当たる。


 すると、プシューっと開閉ドアが開いて、その車両だけ照明がついた。


 俺は、迷わず乗っていた。


 座席へとすわる。


 ひょっとしたら、このまま水戸駅まで走ってくれるのだろう。という、根拠のない。やけくその発想が頭に浮かんだからだ。


 電車は、俺の気持ちを汲んでくれたのか、あるいは、実は俺はすでに倒れていて、その倒れている俺の頭が勝手に思い描いた幻想なのか?


 とにかく、動きだしたのだ。


 電車と電車の間を走り、車両基地を抜け、この電車は心地よく走ってくれた。


 電車が走ってくれたんだ。もう、思い残すこともない。だが……一体? どの駅へ行くんだろうか?

 

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