第一話「出会い」
この日も僕は歩いていた。
夏も茹だる様な暑さの中、水田に伸びる一筋の軌跡を辿って目的地に向かっていた。
「……あつい」
再氷河期とはいえ、場所によっては防寒装備のいる場所、いらない場所が存在する。
ここはその狭間。
中途半端な場所だった。
徐にコートを開くのそこにはバン(なんとか)キースばりの手帳がずらりと並んでいた。
その1冊、”冬”と書かれた手帳を取りページを1枚、
「ビリ!」
破りとり、口に入れる。
「くぅ……頭いたっ」
温度的に冷たいものを取った訳では無いのに彼の体内の温度は-4℃はほど下がっていた。
なぜか、アイスクリーム頭痛も出ている。
すると、背後からクラクションの音色が流れてきた。
「あんちゃん、どこいくんだい?」
僕は隠さず答える。
「山向こうの祠に」
そう伝えると親父は”乗ってけ”的な事を行ってそこまで連れて行ってくれることになった。
その車は屋根がなく向かってくる風が心地いい。
「その格好……Normythだろ?」
「そうだけど」
親父は申し訳なさそうな顔をしてこういった。
「すまねぇ、おれその地域の猟友会のものなんだが」
僕は何があったかは理解できていたので敢えて遮る。
「”語獣”になられた……そうなれば、一般の道具では手出しができませんからね」
水田畑を抜けて、木々茂る山へ。
やはり、日光が遮られるだけで暑さは和らぐようだ。
そして、道が細くなっている手前で車を止める。
「わりぃ、ここからは送れねぇ。大丈夫か?」
親父は心配をしてくれる。
「大丈夫です。」
僕の言葉を聞いた彼はここを去っていった。
少し、歩いた先に人一人通れるくらいの洞穴が、
内を覗く……、
外と比べて涼しそうだ。
すると……、
背後から声をかけられた。
「……ニンゲン、何ノ用ダ?」
振り返るとそこには1匹の何かがこっちを睨んでいる。
「アナタが語獣ですか?」
実は、依頼は始まっている。
「ゴジュウ…トハ、何ダ?」
「言葉を話す獣です」
「ケモノ……ワレワレハ、獣ト言ウノカ?」
「はい、所でアナタは”どうしたい”んですか?」
獣は答える。
「ドウ?トハ、ナンダ?」
僕は答える。
「このまま、生きたいのか……死にたいのか……アナタの希望といいますか?」
獣は考える。
「我ハ、モットカンガエル?ヨウニナリタイ……ダメカ?」
では、僕は授ける。
「分かりました。では、これを……」
僕は林檎の樹が書かれた手帳を取りだし、文字を抜き取る。
それを獣に投げた。
すると、獣が光り、姿形が変化する。
4本足だったのが、直立になり、
フサフサの毛並みが髪になり、
ケモノ顔が人の様な面構えに、
そして、申し訳なく尻尾と耳が残った。
獣(狼)は獣人になった!
「あっ。我」
「……」
あの可愛すぎて吐きそう……僕の内心はそんな感じだった。
「きみ、名前は?」
狼ちゃんは、空の星を指さす。
「我、あれ」
「じゃあ、君は今日から”ルナティカ”だね。よろしく、ルナティ」
狼ちゃん、改め、ルナティカは元気よく返事をする。
「人間、人間。お主は?」
「僕?僕は……」
自分が来ているダークネイビーのコートを指差す。
「よる。夜 袮恩」
「ねおん……ネオンか!」
そうそう……はしゃぐルナティカを見て微笑ましく思った。
そして、今後のことを聞いてみる。
「ルナティ?君、家族は?ひとり?」
ルナティカは頭をひねる。そして、考えて思いついた言葉を話し始める。
「カゾク……仲間は皆、いない……我ひとり」
僕は尋ねる。
「寂しくない?辛くない」
ルナティカは答える。
「さびしい?……ひとりはつめたい。つめたいのはいや」
”つめたい”その言葉が聞けて僕は確信した。
「着いてくる?つめたいの、あったかくするから」
「ほんと?」
僕はこくんと頷くと、手を差し出す。
そして、彼女の手を取って来た道を戻って行った。
続く




